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「高校無償化」 京都の文化人らが首相と文部科学相あてに要望書

「無償化除外」 法の下の平等原則から許されぬ

 高校授業料無償化の対象から朝鮮学校を除外しようとしていることについて、2日、京都ゆかりの文化人である歴史学者の上田正昭・京都大学名誉教授、哲学者の鶴見俊輔さん、臨済宗相国寺派管長の有馬頼底(らいてい)さん、国際日本文化研究センター名誉教授の山折哲雄さんら13人が連名して「国際的視点からも、法の下の平等原則からいっても許されるべきではない」とする要望書をまとめ、鳩山由紀夫首相と川端達夫文部科学相あてに送付した。

 要望書は朝鮮学校のカリキュラムは学習指導要領に準拠し、行政や市民の見学も実施されて公開性に問題はないと指摘。拉致問題と関連づけるような意見は「外交・政治問題と教育問題を短絡させたものだ」と厳しく批判している。要望書全文は次のとおり。

 このたび、あらたに政権をになわれた貴殿が民主党のマニフェストにそって、高校生が安心して学べるために高校教育の無償化のための措置を講じようとされていることを心より歓迎いたします。現下の厳しい日本の経済と社会のありようの中で、家庭の事情などのために高校進学を諦めたり、中途退学をよぎなくされたりする事態が各地おこっています。

 したがって、教育の機会均等を保障するためにこのような措置をとられることは、時宜にかなったものと高く評価しております。

 ところが新聞、テレビなどの報道によれば、朝鮮学校を対象から除外、という案が浮上し、総理大臣もそのような発言をなさいました。しかし、朝鮮学校は法制上も「各種学校」であり、カリキュラムは文部科学省の学習指導要領に準拠しながら使用言語のみが朝鮮語であるにすぎません。また行政や一般の日本人の見学も随時おこなわれ、その「公開性」はなんら問題とはなっていません。国交がないことと当該の学校の現実のありようは関係があるとはいえません。これはいわゆる台湾系の中華学校についても同様です。

 また拉致問題があるので朝鮮学校を対象とはしないように、という中井担当大臣のご意見は、外交問題、政治問題と教育問題を短絡させたご発言であり、世界中ですべての子どもが教育を受ける権利がある、という国際人権規約の趣旨にも違反するものであります。

 2月24日の報道によっても国連人種差別撤廃委員会では朝鮮学校を対象からはずすことは民族差別に当たるのではないかと指摘する意見が出ています。

 したがって現在報道されているような方向で無償化の措置から朝鮮学校、中華学校などが除外されることは、国際的視点からも、法の下の平等原則からいってもゆるされるべきではないと考えます。ついては、表記の通り、朝鮮学校高校生などを除外することなく、マニフェスト通りの公約を実現されたく、強く要望するものです。

 有馬頼底・臨済宗相国寺派管長)、井口和起・京都府立大学名誉教授、上田正昭・京都大学名誉教授、鶴見俊輔・哲学者、仲尾宏・京都造形芸術大学客員教授、中塚明・奈良女子大学名誉教授、日高六郎・元京都精華大学教授、水谷幸正・仏教教育学園理事長、水野直樹・京都大学教授、宮城泰年・聖護院門跡門主)、本山美彦・京都大学名誉教授)、森清範・清水寺貫主、山折哲雄・国際日本文化研究センター名誉教授(五十音順)

[朝鮮新報 2010.3.3]