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「高校無償化」 自由法曹団が声明

「対象から外す根拠はない」

 自由法曹団(菊池紘団長)は5日、「朝鮮学校を『高校無償化』の対象とすることを求める声明」を発表した。全文は以下の通り。

 現在、政府内で、朝鮮学校を「高校無償化」の対象外としようとする動きが本格化している。

 報道によれば、文部科学省の計画では「高校無償化」の対象に朝鮮学校も含まれており、法案も特に朝鮮学校を除外するような文言は含まれていなかった。

 ところが本年2月20日になって、中井洽拉致問題担当大臣が川端達夫文部科学大臣に対して朝鮮学校を対象からはずすように要請したことが明らかとなった。2月23日、川端文部科学大臣は記者会見で、昨年末中井拉致問題担当大臣から朝鮮学校は除外するよう要請を受けたこと、拉致問題を解決するということの状況の中で朝鮮学校を対象にするのかと言われたことを明らかにした。そして、「高校無償化」の対象となるかどうかの判断の中に、外交上の配慮やあるいは教育の中身に関してのことが判断の材料になるものではないとコメントした。

 それにもかかわらず、2月25日、鳩山由紀夫総理大臣は、記者の質問に対して、「朝鮮学校がどういうことを教えているのか、必ずしも指導内容が見えない中で、中井氏の考え方は一つある。そういう(除外の)方向になりそうだと聞いている」と述べた。そもそも、朝鮮学校に対し、日本の私立学校あるいは他の外国人学校と比べて差別的な取り扱いをすることは、子どもの権利条約、人種差別撤廃条約及び国際人権規約などの国際法規等に反するものであり、朝鮮学校に通う子どもたちに対する人権侵害である。

 更に、「高校無償化制度」は、家庭の状況にかかわらず、全ての高校生等が安心して勉学に打ち込める社会を築くこと、そのために家庭の教育費負担を軽減し、子どもの教育の機会均等を確保するところにある。事務処理上の便宜上、学校設置者が代理人として就学支援金を受領する間接給付方式をとるものの、就学支援金の直接の利益享受主体は、授業料が軽減される子どもとその家庭である。このような制度趣旨からすれば、朝鮮学校を、各種学校である他の外国人学校ともことさら区別して、「高校無償化」制度の対象から除外する取り扱いには、多くの法的問題点があると言わざるを得ない。

 また、すでに多くの国公立大学、私立大学が朝鮮学校を卒業した生徒に大学受験資格を認めていることからしても、教育内容を理由に朝鮮学校を他の高校と区別し、対象から外す根拠はない。

 しかも、朝鮮学校を対象外とする動きの根底には、拉致問題が思うように進まないことから北朝鮮に圧力をかけようという思惑があることは明らかである。このような政治的な問題を、子どもの教育に持ち込むことは、許されてはならないことである。

 私たち自由法曹団は、朝鮮学校を「高校無償化」の対象に含めることを強く求める。

[朝鮮新報 2010.3.8]