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「高校無償化」 除外はおかしい 日本の識者の声 断じて許せぬ橋下発言

 来月から実施予定の「高校無償化」について、朝鮮学校を対象外とすべきだという意見が政府内から出ている。中井拉致担当相から要請を受けた川端文部科学相が政務3役で検討し、今月中旬までに省令で決めるという。「拉致問題が未解決だから」というのがその理由だが、朝鮮学校と拉致問題は何ら関係がない。こうした政治や外交上の思惑で「高校無償化」からの朝鮮学校外しを許さない「大阪緊急集会」が4日夜、大阪市東成区の区民ホールで開かれ、私も出席した。

 会場は700人を超える参加者で超満員、立ち見が出るほど。

 この日、参加者の怒りをかきたてたのは、大阪府の橋下知事の発言だった。

 その前日、橋下知事は「北朝鮮という国は不法国家。関係する学校とか施設とかはお付き合いをしない」と述べ、朝鮮学校を対象外とすべきだとの考えを示していた。

 さらに新聞報道によると、「暴力団が関係している企業は、大阪府は入札排除しているし、関係企業に補助金をうつことはない」と指摘し、「民族差別だとかいろいろ言われることがあるが、大阪府は暴力団関係の所にはいっさいお金は入れないと徹底しているのに、北朝鮮は別だという方が民族差別だ」と述べたという。

 橋下知事はかつて、私学助成の削減を打ち出し、面談した女子高生たちに「努力しないから悪い。自己責任だ。嫌ならこの国を変えるか、出ていくしかない」と言って泣かせた過去がある。

 緊急集会では、学校関係者や保護者、朝鮮学校を支援する市民らが次々に抗議の声を上げた。

 「拉致問題と朝鮮学校とどんな関係があるというのか。拉致問題未解決を理由に高校無償化の適用除外するのは、いわれなき差別だ」

 「差別を扇動するような橋下知事の発言によって、わが子が朝鮮学校から無事帰ってくるのか心配しているオモニやアボジがいることを知ってほしい」

 「『子どもたちの笑顔が輝く大阪に』が知事のキャッチフレーズだったはず。朝鮮学校の子どもたちも将来、この社会をともに築いていく人間なのに……」

 朝鮮学校だけが「高校無償化」制度の対象から除外されることのないよう日本政府に対する要望書が採択されたあと、私は隣に座っていた大阪朝鮮高級学校の生徒に声をかけた。橋下発言についてどう思うのか聞いてみたかったからだ。

 この春、3年生になるという女子生徒は、「大阪の一番偉い人が軽々しい言動をすることが悲しく、悔しいです。一人の人間として、私たちや学校に向き合ってほしい」と語り、目を伏せた。

 その姿を見て、私は1990年春に起きたある事件を思い出した。大阪朝高女子バレー部が高体連主催の公式大会への出場をいったんは認められながら、取り消されてしまった「高体連締め出し事件」である。朝鮮学校は民族教育をしているという理由から、「学校教育法」第一条で定める高校ではないと、高体連への加盟を認められていなかったのだ。

 「日本で生まれ育った同じ高校生やのに、なんで大会に出られないのですか。私たちは悔しい思いをしました。後輩たちに道を開いてやってください」−。当時の女子バレー部の主将、趙日順さんが大阪高体連の幹部に泣きながら訴えた姿が今も忘れられない。

 あれから20年。国交がないことや拉致、核問題に関連させ、朝鮮学校を「高校無償化」から排除することで、「第二の趙さん」をまた生み出すつもりなのか。

 それは、何かことがあれば在日朝鮮人を悪者扱いにしてしまう日本社会の差別構造が今も変わっていないことの証でもある。

 断じて許してはいけない。(矢野宏・大阪で発行の「新聞うずみ火」代表)

[朝鮮新報 2010.3.10]