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「高校無償化」を考える緊急兵庫県民集会 朝鮮学校への差別を許さない!

「高校無償化」を考える緊急兵庫県民集会(神戸)

 日朝友好兵庫県民の会などが呼びかけ23の団体が共催した「朝鮮学校への差別を許さない! 『高校無償化』を考える緊急兵庫県民集会」が3月29日、神戸市勤労会館で行われ、同胞、日本市民ら約500人が参加した。

 集会司会者の高橋秀典さん(「対話で平和を!日朝関係を考える神戸ネットワーク」代表)は冒頭、阪神大震災を経験した兵庫県民が、「大変なときだからこそ、日本人と外国人で助け合おう」「外国人が住みやすいまちをつくれば、そこは日本人にとっても住みやすいまちになる」と地域社会を作ってきたと述べた。そして、3月6日に兵庫朝鮮学園などが呼びかけて行われた兵庫県同胞緊急集会で、「日本社会の問題なのだから日本人がもっと前に出よう」と、日朝友好兵庫県民の会が呼びかけて共催団体を募り、今回の集会を開催するようになったと経緯を述べた。

 集会では一橋大学名誉教授の田中宏さんが「高校無償化の朝鮮高校生除外は許さない」と題し講演した。田中さんは1965年文部次官通達、朝鮮学校の各種学校認可などの歴史、外国人学校への認知が進む過程を振り返り、朝鮮学校を「高校無償化」の対象から除外することのさまざまな問題点について指摘。「無償化が認められたら画期的なことだと言える。指定寄付金制度適用問題などでも改善されることが多い。問題解決に向けて世論を高めていこう」と語った。

 神戸朝鮮高級学校の林優花さん(高2)、姫路教職員組合書記長の重近和弘さん、神戸市議会議員の小林るみ子さん(朝鮮学校を支える女たちの会)、神戸学生青年センター所長の飛田雄一さんが朝鮮学校を「高校無償化」の対象から除外することに反対するそれぞれの熱い思いをアピールした。

集会アピールに拍手で賛同の意を表す参加者たち

 林さんは、今回の問題で差別を感じた悔しさ、学校に脅迫状が届けられた衝撃について心境を語った。そして、朝鮮学校で充実した生活を送る喜びについて語りながら、「もう妹たち、後輩たちにはこんな辛い思いをさせたくない。日本が早く差別のない、誰もが暮らしやすい社会へと変わることを願う」と語った。 。

 集会では、日本政府に対する要請文が採択された。登壇した「朝鮮学校を支える女たちの会」会長の山村ちずえさんが、集会アピール「朝鮮学校を高校無償化の対象に!」を読み上げた。

 アピールは「私たちは、すべての人々の人権を認め合い、また、多様な文化を認め合い、お互いを支えあうことこそが、『多文化共生』の人類社会を構築することにつながる」とし、「教育の機会均等を保障するため、当局が4月から差別なく朝鮮学校に高校無償化を適用すること」を強く訴えた。

 閉会あいさつを行った「日朝友好兵庫県民の会」幹事長の杉田哲さんが、「高校無償化問題への行動を起こしていこう」と呼びかけると万雷の拍手が沸き起こった。

 西宮地域からから集会に参加した安致源さん(75)は、「われわれ在日同胞を支持してくれる知事がいて、こんなにたくさんの日本市民がいるということに感銘を受けた」と語った。その一方、「『4.24』から長い時が経ったが、われわれの闘争は終わっていない。時代は変わったが、老若男女の同胞が行動しなければならないということは、『4.24』当時と同じだ」と気を引き締めた。(李東浩記者)

神戸朝鮮高級学校の林さんのアピール

 この間、問題になっている高校無償化。なぜ私が通っている朝鮮高校には適用されないのでしょうか。

 私は加古川市に住む在日朝鮮人四世です。

 生まれてまだ十七年しか経っていません。

 ですから、私が生きてきた十七年間と言えば、昔みたいに特にこれといった差別があったわけでもありません。ましてや、私が通った西播朝鮮初中級学校や、神戸朝鮮高級学校では、私達を支援してくれる人、応援してくれる日本の方々を沢山見てきたので、差別という差別を受けることはありませんでした。

 むしろ「頑張ってね」と声をかけてくれる人が多かったので、私の中ではもう差別はなくなったものだと思っていました。

 ところが、今回の「高校無償化」の問題で朝鮮学校のみ除外されるかも知れないと聞き、支援してくれる人もいれば、その反面、まだまだ朝鮮という国を嫌い、在日朝鮮人を差別する人たちがいるのだと実感しました。初めてそれを聞いた時は、やはり腹が立ちました。でもそれより、今までさほど感じた事のない差別をまの当たりにして、とても悲しかったです。

 それをもっとも強く感じたのは、学校に脅迫状が送られてきたことです。ここまで私たちの存在は否定されるのかと思いました。朝鮮学校のみならず、私までも否定されている気がしました。

 いつまで差別を受けなくてはいけないのでしょうか。いつになったら朝鮮学校、そして在日朝鮮人を認めてくれるのでしょうか。

 私は、朝鮮学校に通っていることをとても誇りに思っています。そして生活が苦しいながらも、両親が朝鮮学校に送ってくれていることに、とても感謝しています。

 朝鮮学校で自分の国の言葉や歌、朝鮮舞踊を習うことで自分の国を知り、朝鮮人として生きていくため、今も毎日学校に通っています。そこで大切な友達と出会い、毎日笑って過ごしています。そして勉学に励み、部活で汗を流し、とても充実した日々を送っています。自分の国について学び、毎日笑って過ごしている点で、日本の学校と朝鮮の学校とで、どこに差があるんでしょう。

 日本人は日本人だから、日本の学校で日本について学びます。朝鮮人は朝鮮人だから、朝鮮学校で朝鮮について学びます。朝鮮人が朝鮮について学ぶのは、日本人が日本について学ぶのと一緒です。なのに、なぜ朝鮮学校には「無償化」が適用されないのでしょうか。

 自分が何人で、どこで生まれようと、自分の生まれたことに感謝し、自分につながる人々や文化を誇ること、これのどこが間違っていると言うのでしょうか。お互いをよく知り、尊重しあえば、必ずお互いの良い点が見えてくるはずです。これは日本人にも、朝鮮人にも言えることだと思います。少なくとも私は、日本や日本人を嫌いだと思ったことがありません。なぜなら、私たちを支援し、応援してくれる日本の方々いらっしゃるからです。

 私は、毎日ブレザーとスカートの第二制服を着て、学校に通っています。チマチョゴリを着て通いたいのですが、どうしてもそうする勇気が出ないのです。ましてや、学校に脅迫状が送られた後です。本当に不安と恐怖で胸がいっぱいです。

 もし、この「高校無償化」問題を解決できなかったら、もっともっと朝鮮学校の立場が悪くなると思います。もう妹たち、後輩たちにはこんな辛い思いをさせたくありません。堂々とチマチョゴリを着て、通学してほしいです。

 いつも私たちに協力してくださる方々、本当に心から感謝しています。もう少し力をお貸しください。

 私は、「高校無償化」が朝鮮学校にも適用されることを願います。そして、日本が早く差別のない、誰もが暮らしやすい社会へと変わることを願っています。

集会アピール「朝鮮学校を高校無償化の対象に!」

 去る2月21日、鳩山内閣がすすめている高校無償化について、中井拉致問題担当相が、川端文部科学相に対し「朝鮮学校を除外」と要請し、その後、鳩山首相も検討する由の発言があったことが報じられました。このことは、まさに、民主主義の原点である「教育の機会均等」に反するものです。

 ユネスコ憲章及び国際人権規約の「人種を越えた教育の機会均等」の理念に基づき、すべての国々、すべての文化、すべての人々の違いを越えて、平等な教育を保障することこそが、世界の人権保障の基本であります。

 日本国憲法第20条は、日本国民の「等しく教育を受ける権利」を規定し、さらに、教育基本法第3条は、「人種、信条、差別、社会的身分、経済的地位または門地によって、教育上差別されない」と明記しています。

 しかも、鳩山内閣総理大臣は、1月29日の施政方針演説で「世界中の子供達が、飢餓や感染症、紛争や地雷によって命を奪われることのない社会をつくっていこうではありませんか。誰もが、差別や偏見とは無縁に、人種が守られる基礎的な教育を受けられるそんな暮らしを、国際社会の責任として、すべての子供たちに保障していかなければなりません」と、述べています。

 国連の人種差別撤廃委員会は、「朝鮮学校の高校無償化除外は人種差別」として日本政府に勧告しました。

 私たちは、すべての人々の人権を認め合い、また、多様な文化を認め合い、お互いを支えあうことこそが、「多文化共生」の人類社会を構築することにつながると確信します。

 兵庫県井戸知事は「朝鮮学校とほかの外国人学校に差を設ける必然性はない」と見解を表明し、朝鮮学校に対しても他の外国人学校と同じく県独自の補助金を支給するとしました。

 私たち「高校無償化」を考える緊急兵庫県民集会参加者一同は、「諮問機関」の設置で「除外」を既成事実化するのではなく、「教育の機会均等」を保障するため、当局が4月から差別なく朝鮮学校に高校無償化を適用することを強く訴えます。(2010年3月29日 「高校無償化」を考える緊急兵庫県民集会参加者一同)

[朝鮮新報 2010.3.31]