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〈民族教育を守る「差別を許さない」−D〉 広がる連帯運動の輪

除外撤回までたたかいは続く

ネットワークの急速拡大

「『高校無償化』からの朝鮮学校排除に反対する緊急行動」参加者たち

 「当初は300人集まれば成功だと思っていた。予想以上に多くの市民、団体が賛同してくれ、正直、驚いている」−「『高校無償化』からの朝鮮学校排除に反対する緊急行動」(3月27日、東京・渋谷)を呼びかけた主催団体のひとつ、「オッケトンムの会」千地建太さんは、こう振り返る。

 当日、代々木公園イベント広場野外ステージは800人を超す参加者で埋め尽くされ、渋谷駅前などの繁華街を「『高校無償化』をすべての高校に!」と訴えながらデモ行進した人数は1千人にまでふくれあがった。緊急集会の趣旨に賛同し、主催団体として名乗りをあげた団体は70に及んだ。

 緊急行動を呼びかけたのは「立川朝鮮学校(西東京朝鮮第1初中級学校)支援ネットワーク・ウリの会」。現在10の団体で構成されている。

 1998年のいわゆる「テポドン」騒動で、女子生徒のチマ・チョゴリが引き裂かれるなど朝鮮学校生徒に対する暴行・暴言事件が多発した。これをなんとかしようと西東京第1初中級学校の生徒保護者と府中市民を中心に「チマ・チョゴリ友の会」が結成された。国立、日野、八王子、小平など各市でも、朝鮮学校をとりまく諸問題を同胞と日本市民らを含めた地域全体で取り組もうとそれぞれ会が発足した。

 そして07年2月、各会の活動のうえで認識と情報と経験を共有するためにも横のつながりがあるべきだとして、学校のアボジ会、オモニ会を含めた団体で「ウリの会」を結成させた。

 「ウリの会」のメンバーは2カ月に1回程度学校に集まり会議などを開いてきた。民族教育の当事者である生徒や保護者、学校関係者たちとの交流が後日、東京屈指の繁華街で一大デモンストレーションを展開する土台を築いた。

自信深めるメンバー

 「緊急行動」から約半月が経った4月16日、東京・中野区にある建物の5階会議室で緊急行動の実行委員会メンバーらが集まった。当日の感想や反省点を話し合い、今後に向けての協議をするための会合だった。

 会議は自己紹介から始まった。初顔合わせのメンバーがいたためだ。ネットワークが短期間で急速に拡大していったことを実感させる象徴的な会合だった。

 会議では「朝鮮学校に対する政府の対応はどう考えてもおかしい。誰かが声をあげなければ、とずっと考えていた」と打ち明けるメンバーもいた。

 また、「ネットの力ってすごいな」「きちんと準備すれば5千人の集会もできるのではないか」と自信を深めるメンバーもいた。

 積極的で前向きな論議の根底には、自分たちの民族教育に関する主張が正当かつ普遍的であるという認識があった。

 朝鮮学校を幾度も参観している教員の長谷川和男さんは、「朝鮮学校は本当にすばらしいと思う。授業中に輝いている生徒のひとみや礼儀正しさに接するたび、エネルギーをもらっている」としながら、「朝鮮学校に偏見を持っている人たちに、実際に訪れて生徒たちの姿を見てもらいたい」と自分の学校のように話していた。また、「アメリカンスクールは良くて朝鮮学校はダメというのは誰もがおかしいと思うはず」としながら、声を大にして世論を変えていくべきだと主張した。

 朝鮮学校を「無償化」の対象にするまではしっかりと日本政府の対応を監視し、圧力を加え続けていかなければならないとの意見が大勢を占めた。

 国立市議会議員の上村和子さんは、「これだけまとまったものを白紙にもどすのはしのびない。市民運動はつながっているだけで力になる。さらに輪を広げて無償化を実現させたい」と述べた。

 結局、緊急行動の過程で張りめぐらされた連絡網を温存していくことにし、5月中に会議を開いて事務局を構成する問題を決めていくことにした。

奮起誓うオモニ会会長

 会議に先立ち、実行委員会の代表らは文部科学省を訪れ、緊急行動の集会で採択された決議を担当者に手渡した。その後、衆議院議員会館内で集会を開いた。

 集会には、趣旨に賛同する新たな団体も参加。運動の広がりをあらためて確認することができた。

 文部科学省訪問と院内集会には、今年度から西東京朝鮮第1初中級学校オモニ会会長役についた金鐘任さんも参加した。

 「これだけ多くの日本の方々が『無償化』問題を自らの問題としてとらえ、協力してくれていることをあらため知った。とても大きな力になる。1、2世が築いてくれた民族教育を守り発展させていくのは私たちの世代だ。今を生きる日本の方々とともに協力しあいながら奮起していきたい」

 3月以降、「無償化」除外に反対する大規模集会が東京だけでなく日本各地で催された。手を携え立ち上がった在日同胞と日本市民たちは今、さらに大きなうねりをつくりだいしていくことを誓い合っている。(姜イルク記者、おわり)

[朝鮮新報 2010.4.21]