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「高校無償化」 実現へ 東京中高の保護者が結束

保護者たちの声 「オモニたちが行動を」

 「他人任せではいけない。これは、私たち自身の問題だ」

 9日、「『高校無償化』を実現するための東京中高学父母たちの決起集会」が東京朝鮮文化会館で行われ、東京朝鮮中高級学校の保護者ら500余人が集った。

 保護者たちは、今年度に新たに発足する「オモニ会」を母体に「高校無償化」適用を求める行動を起こしていくことを確かめ合った。

民族教育への思い

9日、東京朝鮮文化会館で行われた集会の様子

 4月1日、朝鮮学校を除外したまま「高校無償化」法案が施行された。施行から2カ月が過ぎようとしている今もなお、朝鮮学校を「無償化」に含む動きは見られない。

 同校では、今年の秋頃、「オモニ会」を結成する予定だ。当面、4月29日に結成された「オモニ会発足準備委員会」を中心に、「無償化」適用を求める活動を繰り広げていく。民族教育を守ろうというオモニたちの強い思いが一つに結束した結果である。

 学校で授業参観が行われたこの日、保護者たちは集会に参加した。集会では、「オモニ会」結成の経緯が説明された。

 会中、「オモニ会」発足準備委員会のメンバーの一人である韓英淑さんが、「私たちがもう一歩大きく踏み出せば、より多くの支持と声援を集められる。わが子たちの未来のために団結しよう」と呼びかけると、参加者たちは大きな拍手で応えた。

 数年前、大学受験資格問題が浮上した時にも、積極的な行動が展開された。今回の問題では、その時にも増して保護者たちの意識、関心が高い。

 慎吉雄校長は、「集会に集まった保護者たちの人数、その熱気から、必ず『無償化』を実現させようという意気込みがひしひしと伝わってきた」と話した。

 李在仙さん(49)は「日本政府は『在日』が日本の植民地支配による産物であるということを、きちんと認識しなければいけない。まして、多文化共生がうたわれている今、政治的な口実を設けて、未来ある子どもたちの教育権を脅かすようなことは言語道断だ」と語る。教育問題を「拉致」問題と強引に結びつけ、差別を正当化しようとする日本当局の横暴な態度に、憤る声は多い。

 慎宇一さん(50)は、「これからも子どもたちは日本で生活していくだろう。そのうえで、朝鮮人として母国語を習い、民族の心をしっかりと育んでいくのは当然のこと。そのためには民族教育が不可欠であり、親として子どもの未来を守っていくのは当然だ」と語る。

 この日、授業参観のために日朝友好促進東京議員連絡会の議員ら11人が学校を訪れていた。集会に参加し発言した議員代表は、朝鮮学校を「無償化」から外そうという政府の姿勢が不当だということをあらためて感じたと述べた。

 「日本の人たちにどんどん学校を見てもらいたい。実態がわからないというのなら、足を運んでほしい」(張敬愛さん、41)。

 同校では、より多くの人たちに朝鮮学校の実情を知らせようと、6月4〜5日に日本市民らを対象とする公開授業を、13日には文化祭を催す予定だ。

処遇改善の契機に

集会には500余人の保護者たちが参加した

 集会に参加した金恵淑さん(43)は、「オモニたちが動かないでどうするのか。他人事ではない。私たちの問題なのだから、私たちが立ち上がらなければ」と、切に語る。それはこの日、学校に集まった多くの保護者たちが共有する思いだ。

 政府が不当な民族差別を繰り返しても、オモニたちはめげない。過去のJR定期券差別是正や大学受験資格問題でも、力を合わせ権利を勝ち取ってきた。その経験を忘れていない。

 「私たち自身が立ち上がり、心ある人たちと力を合わせて運動を広めていけば、絶対に『無償化』が適用されると確信している」(林寿美さん、46)。

 集会では、在日本朝鮮人人権協会の金東鶴事務局長が「無償化」問題の現状について報告した。報告では、「今、保護者たちが繰り広げている運動で権利を勝ち取れば、今後の朝鮮学校の処遇を改善する突破口になるはずだ」との指摘があった。 

 今回、「無償化」が適用された場合、文科省は朝鮮学校を高等学校の課程に類することを認め、初めて国庫から支援金を出すことになる。

 金事務局長は、「無償化」の実現が地方自治体からの補助拡大、寄付金税制問題をはじめ、奨学金や就学援助費、災害共済給付制度など、広範囲な制度における朝鮮学校の処遇改善につながる可能性を指摘した。

 東京中高の保護者たちは、「無償化」適用を求める運動の勝利が、日本政府によるさまざまな差別施策を根本的に変える大きな契機を作るとの認識を共有した。この日の集会で示された熱意は今後、具体的な実践行動へと進んでいくだろう。

 東京だけでなく、各地朝高の保護者たちは現在、「オモニ会」を中心に、署名活動などを展開している。文科省の「高校就学支援ホットライン」にメールや電話で訴える保護者たちもいる。また、今月末、各地朝高の「オモニ会」代表らが国連の欧州本部(ジュネーブ)を訪れ、「無償化」問題をめぐる日本政府の差別是正と、民族教育権保障のため尽力してくれるよう求める予定だ。(姜裕香記者)

[朝鮮新報 2010.5.19]