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「高校無償化」 日本の詩人らが文科省に要請

在日朝鮮詩人も同行 「言葉の暴力許さない」

 朝鮮学校を「高校無償化」の対象から除外することに反対し10日、河津聖恵さん、石川逸子さん、望月苑巳さん、葵生川玲さんら日本の詩人たちが文科省を訪れ要請活動を行った。

再度アクションを

文科省へ要請に行き、心情を吐露する詩人たち

 河津さんをはじめとする日本の詩人・歌人ら(24人)は、4月10日にリーフレット「朝鮮学校無償化除外反対−言葉を紡ぐものは訴えます」を出版し、同20日に文科省へ提出・要請した。

 「しかし、事態は一向に改善されず、むしろ時の経過とともに風化してしまいかねない危惧さえ生まれた。私たちはもう一歩踏み込んだアクションとして、抗議のための作品集の制作を思い立った」(河津さん)

 6月末、100人以上の詩人・歌人たちに呼びかけ、一カ月足らずの間に79人の協力の下、312ページにわたるアンソロジー(作品集)を緊急出版。この日文科省へ同行した在日朝鮮詩人の許玉汝さん、呉香淑さん、孫志遠さんなども作品を寄せた。

 文科省では、河村雅之・初等中等教育局高等教育改革PT財務課高等修学支援室専門官が応対した。

 河津さんは作品集を手渡し、「政治家の発言や一部マスコミによるバッシング、ネット上のひぼう中傷など、朝鮮学校に対する理不尽な言葉の暴力、野放しの差別意識はとどまることを知らない。私たちは、朝鮮学校無償化除外の問題を、言葉による暴力の問題と受け止め、言葉の暴力と差別意識を乗り越えた真の共同性を求めてそれぞれの『うた』を詠いあげた。文科相はじめ閣僚たちに、ここに込められた切実な思いを知ってもらいたい」と語った。

 また、望月苑巳さんは、「新聞などで報道されること以外、一般の人たちはよくわからない。子どもの教育に関する問題で付帯事項があってはならない。事の根底に差別が感じられる。民主主義と平等の観点に立って問題を解決してほしい」と述べた。

作品集を手渡す河津聖恵さん

 石川逸子さんは、「今年は韓国併合100年の年。過去の日本の朝鮮支配において、言葉を奪い、日本語を強要したのは最もひどい蛮行だった。過去の植民地支配の中で日本へ連れてこられた人の、2世、3世、4世が、自国の言葉で学ぶのは当たり前。除外はとんでもない。それは日本にとって恥ずかしいことだ」と指摘した。

 また、葵生川玲さんは、「子ども手当てや高校無償化は、将来を担う子どものための優れた政策だと思ったが、除外の動きに差別と制裁の臭いを感じて胸を痛めている。今月いっぱいで除外が撤回されることを望んでいる」と話した。

在日朝鮮詩人らも

 一方、同席した許玉汝さんは、「河津さんの呼び掛けに感銘を受けて、初めて日本語で詩を書いた。これまで『奪われた民族性を取り戻したい』一心で、朝鮮語でのみ活動をしてきたが、『無償化』除外問題を機に私たちの声を多くの日本人に伝えたいとの強い思いが私を突き動かした。日本の詩人との触れ合いは、私自身が長い間抱いてきたわだかまりを溶かしてくれた。彼女たちとは、共に生きる仲間として手を取り合っていける。朝鮮学校の子どもたちにも希望を与えてほしい」と語った。

 孫志遠さんは、「学校閉鎖令」時に書かれた、詩人・許南麒の作品を読み上げ、「彼が60年前に書いた詩のテーマを、今、私や子どもたちが繰り返し書いている。日本の植民地支配は本当に終わったのか。私は作品集に、6月27日に東京・芝公園で開かれた『高校無償化適用を求める市民行動』集会に参加したときのことを書いた。作品集は、79人の声ではない、数千、数万の朝・日民衆の声であると受け止めてほしい」と話した。

 また、呉香淑さんは、「私が小学1年生のときに『学校閉鎖令』が出され、1年半ほど日本の学校へ通った経験がある。在日朝鮮人への差別と弾圧が孫の代まで続くのは許せない。今回、日本の詩人・歌人たちと、民族・歴史・世代を超えて真心でつながりあえたと実感している。8月末までに結論が出るというが、歴史に恥じない判断を下してもらいたい」と語った。

 参加者らは、「妨害があっても負けないでほしい」と口々に述べた。(文・金潤順、写真・文光善)

[朝鮮新報 2010.8.27]