top_rogo.gif (16396 bytes)

そこが知りたいQ&A−「通貨交換」から1カ月半、現状は?

国定と市場の価格差を解消 「物を買い求めやすくなった」

 昨年11月30日から12月6日にかけて朝鮮でいっせいに行われた「通貨交換措置」から約1カ月半が経った。措置が実施された背景と現状についてQ&Aでまとめた。

 Q 「通貨交換措置」の背景に何があったのか。

 A もともと社会主義朝鮮の経済活動は、国家の計画的な供給システムに基づいている。

 しかし、90年代後半の経済的試練の時期、企業所の生産活動に必要な物資を計画通りに保障できず、物不足が深刻化した。

 「苦難の行軍」の勝利を宣言した翌々年の2002年7月1日、国家はコメ1キロの価格44ウォンを基準に「全般的価格調整措置」を取った。当時の外国為替レートは1ユーロ=160ウォンだった。コメ1キロ=44ウォンも当時の国際市場価格を反映したものだ。しかし、当時は国家の供給だけで人民の需要を十分に満たすことはできなかった。

 2003年3月、国家供給システムの補助的空間として、それまでの農民市場を総合的な消費財市場に拡大する措置を実施した。

 しかしその後、労働者が受け取る生活費や国営商店での国定価格定と市場価格の間に大きな開きができてしまった。コメを例にあげると、国定価格1キロ=44ウォンが、市場ではその数十倍の値で取り引きされた。

 事務員が受け取る生活費は月に2千〜3千ウォン程度だ。

 今回の措置では、旧通貨と新通貨を100対1の比率で交換し、交換できる上限を設けた。交換できなかった旧通貨は無効とした。これはインフレ状態を解消し、国家による通貨流通を安定させるための「リセット」だと言える。

 おそらく今回の措置は、今後は市場にたよることなく国家供給により人民の需要を満たすことができるようになったということを前提にしたものだろう。

 昨年12月、朝鮮中央銀行関係者は本紙の取材に対し、「通貨交換措置」の目的は通貨の流通を円滑に行うことによって、強盛大国建設を推進し、市民生活の安定と向上をはかることにあると説明した。

 Q 当時、外国のほとんどのメディアは、住民らが「通貨交換措置」に反発していると報じたが。

 A 「通貨交換措置」を最初に報じたのは南の反北団体が運営するインターネットサイトだった。情報源は中国に行き来する「商売人」だ。交換の上限を越す大量の旧通貨が紙くずと化したなどの「不満の声」を世界各紙が引用報道した。そして、「朝鮮社会全体が極度の混乱に陥っている」との世論が形成されていった。

 これに関して後日、南朝鮮の連合ニュースは、「商売人は通貨交換の代表的な被害者で、一般住民と違った事情を話した」との関係者コメントを紹介。事実上、誤報を認めた。

 国内のほとんどの住民はこの措置を歓迎した。当時、朝鮮中央銀行にも労働者、農民、事務員など多数の勤労者から今回の措置に対する歓迎と支持の声が伝わってきたという。

 Q 措置歓迎の理由は。

 A 社会主義分配原則は、働いた分だけその報酬を受けることを原則としている。誠実に働く勤労者、とくに肉体労働をする炭鉱夫や農民などを優遇している。

 しかし、経済混乱の中でこの原則が崩れた。市場価格で取り引きする商売人や外貨を所持している者はいつでも好きなものを購入できたが、誠実に働く一般勤労者はそうでなかった。

 大多数の住民の中では、今回の措置がこのような格差を解消し、社会主義分配原則を正確に実施するための一環だと理解されている。

 Q 住民らの生活に変化はあったのか。

 A 昨年12月の給与は、通貨交換措置以前の水準で支給されている。100分の1に切り下げられることはなかった。一方、国営商店で売られる商品の値段は以前の国定価格と同じか、一部商品は下がった。

 本紙平壌特派員によると、元旦から営業を開始した市内百貨店は、連日多くの客でにぎわっているという。西平壌百貨店の支配人は、「毎年初めの開店日は混むが、今年は商品の入荷数が例年よりも多く、昨年末に貨幣交換措置があったことで来客数が大幅に増えた。価格が調整されて商品を買い求めやすくなったようだ」と混雑の理由を分析した。

 「豊かとは言えないけれど、必要なものは買えるし、以前は購入できなかったものも買えるようになった」という客もいれば、「これからはもう市場に行く必要がなくなった」と話す客もいた。

 これまで運営されてきた総合市場は「農民市場」として「縮小」された。売られる品は鶏とその卵、野菜などの畜産・農作物に限られているという。もともと農民市場は、農村家庭で余ったものを売買する空間だった。本来の姿に戻ったと言える。

 ちなみに、市場での物価は国営店より割高だという。

 Q 物不足が解消できずまたインフレが起きるのではないかとの憂慮もある。

 A 市内百貨店関係者は、現在のところ、工場・企業所から商品が絶え間なく供給されているので品切れはないと話していた。

 今年の3紙共同社説は、すべてを人民生活向上に集中するよう強調し、国の経済建設の成果が人民に実質的に行き渡るよう呼びかけた。正月の百貨店の盛況を一過性の現象にしないためにも、今後も国家全体が人民生活向上に努めていくだろう。

 実際に昨年、「食の問題を解決し、軽工業の発展を日用品生産の実績につなげていくため」(関係者)軽工業省内の一つのセクションだった食糧日用工業部門を省に昇格させた。行政レベルで需要と供給のバランスを正し人民生活を安定させるための措置が講じられているわけだ。

 Q 国内で外貨が使えなくなるというが。

 A 国内で使えるのは新通貨だけになる。

 海外同胞や外国人が利用する商店、食堂でも、貨幣交換所で朝鮮の通貨に替えてから支払うことになる。

 以前は、外貨ショップ以外にも人民が利用する一般の商店、食堂などでユーロやドル、円、人民元といった外貨を直接使うことができた。2002年7月以前には兌換券も流通していた。

 国内でさまざまな通貨が流通していた複雑な通貨制度が、「通貨交換措置」によってきちんと整備されたことになる。

[朝鮮新報 2010.1.20]