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そこが知りたいQ&A−平和協定締結提案の趣旨は?

朝米の信頼醸成に基づく非核化促進

 朝鮮外務省は、朝鮮戦争勃発60年にあたる今年、停戦協定を平和協定に替えるための会談を早急に開催することを停戦協定当事国に提議した。1月11日に発表された外務省声明は「平和協定が締結されれば朝米敵対関係を解消し朝鮮半島非核化を速いスピードで促進させることができる」と主張している。

 Q 6者会談は1年以上開かれていない。朝米会談も昨年末に始まったばかりだ。なぜこの時期に提案したのか。

 A 本来ならば、平和協定はすでに締結されていなければならなかった。1953年の停戦協定によれば3カ月以内に政治会議を開催し外国軍隊の撤退や朝鮮問題の平和的解決などを協議することになっている。しかし米国は自らの戦略的目的から停戦体制を維持する方針を立て「米韓相互防衛条約」を結び、南朝鮮における米軍駐屯を固定化した。朝鮮は過去数十年にわたって平和協定締結のための外交努力を続けてきた。

 戦争勃発60年を機に平和協定問題があらためて提案された要因はいくつか考えられる。朝鮮のメディアは「重大な英断の産物」(労働新聞)だと指摘している。朝米関係や非核化問題に関する金正日総書記の戦略的決断があったと読み解ける。平和協定会談に関する外務省声明も「委任」によって会談の早期開催を提議している。最高指導者の強い意思を反映した声明だということだ。

 2012年に「強盛大国の大門を開く」と宣言した朝鮮では、経済復興に向けた積極的な内外政策が展開されている。その特徴は目標と期限を明確に示すリーダーシップとトップダウンによる変革のスピードだ。昨年後半から始まった朝米対話の流れも金正日総書記が外交の前面に登場することでつくられた。リーダーが示した経済復興ビジョンを実現するためには、平和的環境の構築が必須条件だ。非核化は朝鮮の国益と一致する。米国との戦争状態に終止符を打つことが焦眉の課題として提起され、トップが指示を出した。

 Q 停戦協定当事国である米国は、どのような反応を示しているのか。

 A 朝鮮側はトップが決断した。言い換えれば、一方的なラブコールではなく、実現可能性があるとの判断を前提に平和協定締結の提案がなされたと見ることができる。おそらく昨年、対決から対話路線へと転換する過程で米国側の反応を見極めていたのだろう。

 朝鮮は、米国との対話で関係改善のプロセスに関する従来の主張を繰り返したという。朝米の敵対関係の根源である戦争状態を終息させることが信頼醸成につながり、それが問題解決の第一歩になるという論理だ。

 米国側も否定的ではなかったようだ。昨年12月、オバマ大統領の特使としてボズワース特別代表が訪朝した際も平和協定問題が議論された。朝米双方が公式に確認している。

 現在、米国は「(朝鮮が)6者会談に復帰してこそ孤立を避けることができるという事実を認識すべき」(ホワイトハウス国家安全保障会議スポークスマン)との立場を堅持し、平和協定会談への参加可否についての直接的言及は避けている。米国は朝鮮との2者会談について「6者会談の枠組み」の中で行われるものであり、その目的も「6者会談再開」にあると説明してきた。これまでの経緯からすれば「所期の目的」が達成されていない時点で平和協定会談について公言するのは容易ではない。

 しかし、6者会談の重要性に対する強調は、必ずしも平和協定締結の必要性に対する否定を意味するものではない。

 Q 平和協定会談より6者会談の再開が先決との議論があるが。

 A 朝鮮は平和協定締結の提案が6者会談の経験にもとづくものだと説明している。核問題の直接的な当事者である朝米が「交戦国」として対峙したまま、6者会談を再開しても何ら成果を上げることができない。平和協定締結により朝米間の不信が解消され協調関係が築かれれば、6者会談の議論もスムーズに進み非核化プロセスにも弾みがつく。外務省声明で展開された論理だ。核議論の前に「戦争と平和」という本質問題の解決を先行させるというのは論理的にも妥当な提案だ。

 しかも現実問題として現在、6者会談は国連安保理「制裁」という不信の壁に阻まれて中断状態にある。米国や他の参加国は朝鮮に対する「制裁」継続で一致しているというが、朝鮮側は「制裁」解除なくして会談復帰はありえないとしている。各国が「6者会談の再開」を唱えるだけでは、現状打開は無理だ。相互不信を解消するために何らかの突破口が必要だ。

 Q 米国は、どのような方法を選択するだろうか。

 A 今回、朝鮮は柔軟性のある提案を行った。米国側に外交的な裁量権を与えた。たとえば、朝鮮は米国に対して平和協定会談の形式にはこだわらないとの立場を伝えている。また現時点では平和協定締結というゴールではなく、当事国が協定締結の交渉場に出てきて対座するだけでも「信頼の出発点」(外務省スポークスマン)になると言明している。不信解消の妥結点を示しながら、アプローチを続けているわけだ。

 米国が朝鮮側の提案を真しに検討するのならば、平和協定会談と朝米の信頼醸成、6者会談と非核化プロセスの再開をリンクさせることは可能だ。(金志永記者)

[朝鮮新報 2010.1.27]