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そこが知りたいQ&A−「2012年・統一里程標」 アピールに込められた意味は?

国際情勢の転換期、6.15共同宣言全面履行めざす

 平壌で行われた統一運動関連の会議で注目すべきアピールが採択された。会議参加者たちは北と南、海外に向けて「2012年を自主統一と平和繁栄の一大里程標にしよう!」と呼びかけた。アピールの文面からは、金日成主席生誕100年を記念する2012年に「強盛大国の大門をひらく」という朝鮮の政策構想に、北南関係発展と民族問題の解決が含まれていることがうかがわれる。

 Q どのような人たちがアピールを採択したのか。

 A 平壌で行われたのは6.15共同宣言実践北側委員会の総会(1月26日)だ。「6.15民族共同委員会」は統一運動の連帯機構で北と南、海外の各地域に委員会を置いている。各階層の政党、団体が参加しているが、北側委員会の名誉共同委員長には最高人民会議常任委員会、朝鮮労働党中央委員会の幹部や内閣副総理などが名をつらねている。会議の運営やアピールの文面には、朝鮮の政策的意向が反映されていると見るべきだろう。

 Q 北南関係は好転していない。なぜこの時期に会議が行われたのか。

 A 毎年、平壌では一年間の統一運動方針を定める会議が開催されている。関係者によると今年の会議は「共同社説の課題を実践」するためのものだという。元旦に発表される3紙共同社説は、その年の国家の施政方針をしるしたものだが、今年はとくに北南関係と統一問題が重視された。「北南共同宣言の旗印のもと全民族が団結し祖国統一を一日も早く実現しよう!」というスローガンもかかげられた。

 しかし北南関係改善の突破口は、いまだ開かれぬままだ。会議で採択されたアピールは、統一運動の活性化と世論の喚起によって局面転換を図ろうと訴えている。たとえば、6.15共同宣言発表10周年に際して、北と南、海外すべての政党、団体、各階層代表が参加する「民族共同イベント」を「盛大に開催」することを提案している。

 Q アピールが、今年の問題だけでなく「2012年」の展望についても言及しているのはなぜか。

 A 朝鮮の内外政策は金日成主席生誕100年を迎える2012年に照準を合わせた中長期的な国家戦略に沿って展開されてきた。アピールに「21世紀は祖国統一の世紀、わが民族が強盛復興する栄光の世紀であり、意義深い歴史の年−2012年は、その分水嶺である」との一節がある。ばく然とした希望的観測ではなく、それなりの政策的根拠にもとづく予測として読むべきだろう。

 朝鮮の首脳部は2012年に「強盛大国の大門をひらく」と内外に宣言した。経済復興とそのための平和的秩序の構築が至上命題となっている。昨年来、対米関係改善と朝鮮半島非核化プロセスの再開に向けた大胆な外交アプローチも進めている。

 今年に入り、朝鮮は平和協定会談の開催を停戦協定当事国に提案した。朝鮮半島で60年間続いてきた戦争状態にピリオドを打つという国際環境の変化は、北南関係に直接的な影響を与えるだろう。アピールの作成者は、おそらく現在、想定されている国際秩序再編の動きをふまえて北南関係と朝鮮半島の未来図を描いている。そのうえで、今後の変化を民族共同の利益に結びつけることは可能だと判断している。

 Q 北南関係の現状を鑑みた場合、前述の展望はあまりにも楽観的すぎないか。

 A 平和協定締結などで朝鮮半島の政治軍事的対立が解消されれば、すでに発表されている北南首脳合意の履行を促す環境が作られていくだろう。なぜなら6.15共同宣言(2000)、10.4宣言(2007)の理念と朝鮮半島の安定という国際社会の要求は合致する部分があるからだ。反対に、李明博政権が掲げた「非核・開放・3000」や「制度統一論」などは、対立構図を崩す平和外交の動きとは相容れない。社会制度が異なる北と南が相手を認めず、制度対決を追求すれば、最終的には戦争に至ってしまう。

 平壌で採択されたアピールから読み取れるのは、朝鮮が6.15共同宣言の全面履行を目指しているという事実だ。アピールによれば、2012年は「統一の分水嶺」になるという。ここで言う「統一」とは一般用語ではなく、共同宣言を実践する北南関係を念頭に置いているのであろう。

 アピールが30年前、金日成主席が提唱した「連邦制統一方案」の正当性を強調している点が注目される。北の立場では、自らの「方案」を前面に出さざるをえないが、6.15共同宣言には北側の「低い段階の連邦制案」と南側の「連合制案」の共通性を認め、その方向で統一を志向すると明記されている。

 北と南そして海外で、各階層を網羅した「6.15実践運動」を幅広く展開し、そのような「統一」を実現する。北南共同宣言の内容に照らせば、アピールの趣旨は明確だ。朝鮮は北南関係改善のための当局間対話の再開だけでなく、その後の協力と交流、民族大団結のプロセスまでも見据えている。

 Q 統一運動は今後、どのように展開していくのか。

 A 2012年を「統一里程標」にしようとするアピールは、この分野の政策目標を必ず達成するという強い意志のあらわれだ。「強盛大国建設」と「朝鮮半島非核化」そして「祖国統一」は金日成主席の遺訓だ。朝鮮の首脳部は、これらを別個の課題としてではなく相互に関連付けているようだ。長年の懸案問題を一括解決するための積極的な統一外交政策の実行が予想される。

 平壌の会議で議論された統一運動も、それらの政策と並行して展開されていくだろう。当面、アピールで提案された「民族共同イベント」の成功が大きな課題だ。イベントが盛大に開催されるためには、北南関係の改善が前提となる。

 「里程標」のタイムリミットから逆算して考えると、2010年には「自主統一の新たな局面」(3紙共同社説)が開かれなければならない。(金志永記者)

[朝鮮新報 2010.2.12]