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〈月間平壌レポート -10年5月-〉 注目集めた総書記訪中

地に足つけた経済発展目指す

 【平壌発=李相英記者】金正日総書記の中国非公式訪問(3〜7日)というビッグニュースで幕を開けた5月。4月から続いた「名節、祝日ラッシュ」も1日のメーデーで一段落した。中旬からは全国の農場で順次田植え作業が始まり、農作物増産に向けた「戦闘」が本番に突入した。

人々を鼓舞

南興青年化学連合企業所の石炭ガス化肥料生産プラントの中心部

 朝鮮で最高指導者の活動は常に人びとの大きな関心を集める。4年ぶりの外国訪問となればなおさらだ。

 国内メディアは総書記の中国訪問日程終了後の7日から連日このニュースを破格の扱いで報じた。労働新聞は約1週間にわたって紙面を通常の6面編成から増やし、各地での活動を写真を中心に紹介。同様にテレビも一日2〜3回にわたって中国訪問に関するニュース番組を流した。訪問終了から1週間後には早くも今回の活動をまとめた記録映画の放映が始まった。

 平壌市民はテレビ画面や新聞紙上を通じて最高指導者の精力的な活動に接しながら、朝中友好・親善関係がさらなる発展をとげるさまを目の当たりにしていた。

 また、中国訪問に関連してテレビや新聞で紹介された映像や写真には、総書記の活動場面以外にも北京、大連、天津、瀋陽といった大都市の街並みや、工場、企業の設備、生産品などが数多く含まれていた。

 「友好・親善の立場から中国の発展ぶりを紹介するほかに、世界のすう勢を見せることで国内の人びとに刺激を与える意味もあるのではないか」。最近取材で訪れたある企業所の幹部は個人の見解だと断りつつも、このような見方を示した。

 「自らの地に足をつけ、目は世界に向けよ」

 金正日総書記の言葉だ。4月に開館した金日成総合大学電子図書館の1階ホールをはじめ、全国のさまざまな場所に掲げられている。最近ではこれが経済のみならず国家建設全般における方法論を示すスローガンとして定着している。今回のメディアの報道姿勢もこのスローガンの意味と関連づけることができるのでは、と考えてみた。

 工場、企業所などでは「総書記の中国訪問の成果を生産実績で輝かそう」という掛け声の下、一丸となって増産に励んでいるという。

 訪中後も総書記の活動は途切れることなく続いている。17日からは両江道、咸鏡北道、咸鏡南道に対する現地指導のニュースが連日、新聞やテレビで報じられている。

肥料問題解決に光明

 5月は田植えの季節だ。全国各地の農場の先陣を切って10日、平安南道平原郡のウォンファ協同農場で田植えが始まった。今年は気候の関係で田植え開始日にも地域ごとにかなりのばらつきがある。たとえば、黄海北道では例年に比べて2週間ほど遅れるという。

 今年元旦の3紙共同社説は人民生活向上に向けた取り組みで決定的転換を起こすことを目標に定めた。農業は軽工業とともに目標達成のための2本柱にすえられた。

 毎年田植え期には全国挙げての「総動員態勢」がとられるが、今年はとくに農場支援の重要性が強調されている。

 「農作物増産のカギはエネルギーと肥料」と、農業省の幹部は言い切る。

 電気やガソリンなどのエネルギーと肥料の正常供給は、天候や自然災害を別にすれば、長い間農業関係者の頭をもっとも悩ませてきた課題だ。近年、多収穫品種や営農技術の導入において多くの成果が得られている。あとは前で挙げた2つの問題だけ解決すれば、農作物の増産で画期的な前進が見込めるというのが生産現場と行政の一致した意見だ。

 そのうちの一つ、肥料供給の問題に解決の光明が差している。

 南興青年化学連合企業所(平安南道安州郡)の石炭ガス化肥料生産プラントの操業がそれだ。4月29日に操業式が行われ、肥料の生産を始めている。

 プラントの仕組みを簡単に言うと、無煙炭を高温処理して得たガスから水素を取り出し、これと窒素を反応させ生成したアンモニアで窒素肥料を作るという工程になっている。石油に依存していた原料問題を国内に豊富な無煙炭を利用することで解決。生産量を増やしコスト削減も実現するという。

 これがフル稼働すれば、同企業所単独で化学肥料の国内需要の約半分をまかなえる。2012年までに、同企業所と現在建設中の興南肥料連合企業所のガス化プラントで国内需要を基本的にすべて満たすというのが関係部門の計画だ。

 中旬、南興青年化学連合企業所を訪れた。

 支配人のオフィスには肥料の問題で面会を求める各道の農業関係者らが列をなしていた。チョ・ギョンチョル支配人によると、全国各地の農場に南興産の肥料がどんどん送られているという。操業即フル稼働とはいかないが、「今年中に生産を正常化し、数年内に肥料問題を必ず解決してみせる」と意気込みを語った。

[朝鮮新報 2010.5.26]