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韓相烈牧師、軍事境界線地区を訪問

分断と対立の現実を目撃

 【開城発=姜イルク記者】「6.15共同宣言を甦らせるため」、6月12日から北側を訪問している韓相烈牧師(韓国進歩連帯常任顧問)が13日から15日にかけて朝鮮半島西側の軍事境界線一帯と開城市を参観した。板門店は、牧師が6月22日の記者会見で、8月15日にここから南側に帰還すると宣言した場所でもある。牧師は今後も朝鮮各地を巡りながら6.15共同宣言の履行と平和、統一を呼びかけていく予定だ。

初めての板門店

板門店を初めて訪問した韓相烈牧師

 牧師は12日午前、板門店を訪れた。

 牧師はこれまで4回開城地区に足を運んだことがあるが、板門店を訪れるのは初めてだという。南側からもここを訪れる機会はあったが、「米国の許可を得ないといけない。そうはしたくなかった」という理由から今回の初訪問となった。

 牧師は、南側を一望できる板門閣という建物の内部から、じっと南側の風景を見つめた。また、8月15日に越えていく予定の境界線にも見入った。

 ここで牧師は、自身の心情を込め、「板門が鉄門のように頑丈であっても6.15というカギで必ずこじ開けることを誓う」と、即興詩をつくり読み上げた。

 1人の講師が牧師を案内し、ヘルメット姿の6人の兵士が護衛にあたった。

 講師は牧師に、「統一のためがんばってほしい。6.15共同宣言と10.4宣言の履行のため心を合わせていきたい」と話した。

 一方、板門店には祖国を訪問中の東京朝鮮中高級学校の生徒や中国、ヨーロッパからの観光客が訪れていた。観光客は多いが、この一帯はとても静かで緊張に包まれていた。板門店地区の入口から板門閣に向かうまでの数キロメートルの道には、敵の侵攻を防ぐための障害物が何カ所にもあった。北の兵士らは、「天安」号沈没事件による朝鮮半島情勢の緊張に応じて、今年の春から通常の軍帽からヘルメットに代えたという。
同日午後に訪れた「コンクリート障壁参観哨所」もとても静かだった。板門店から数キロメートル離れた場所にあるこの哨所からは、南が1970年代末に軍事境界線に沿って240キロメートルの区間に建設した、分断と対立の象徴であるコンクリート障壁が見える。「この障壁によって鳥以外の動物も分断されている。これが心痛い分断の現実だ」と、牧師を案内した軍人は話していた。

 この軍人によると、同所は拡声器を利用した「対北心理戦」によって数年前まではとても騒々しかったという。2004年6月の北南軍事会談合意によって同年6月15日から軍事境界線一帯での「対北心理戦」がなくなり、すべての宣伝手段が撤去された。以来、静けさが保たれてきたが、李明博政権は前線一帯での「対北心理戦」を再開させようとしている。

 軍人によると、同所からは拡声器を見ることはできないが、至るところに設置されたという。

 軍人は、「心理戦が戦争遂行の基本作戦形式の一つだという点で、反北心理戦手段の設置はわれわれに対する直接的な宣戦布告となる」とする朝鮮人民軍総参謀部重大布告(6月12日)を想起させながら、「対北放送がいったん始まったらそれと同時に、すでに布告したとおりわれわれは敵の心理戦手段をあとかたもなくなるよう射撃することになっている」と述べた。

行く先々で歓迎された

 牧師は、南の分断勢力と好戦勢力に対する怒りの心情をこめた即興詩をここでも読み上げた。

 牧師は14日、高麗時代の遺跡である王建王陵、成均館、霊通寺などを、15日には朴淵瀑布を見て回った。

 牧師は訪れる先々で歓迎と激励を受けている。牧師は「分断の現実が嘆かわしい。対立を助長する南側の一個人としてすまない気持ちでいっぱいだ」としながら、「小さなことしかしていない私をおおいに歓迎、激励してくれることに感謝している。北の人々の平和統一志向を肌で感じている」と述べた。

 一方、開城市内では「開城工業地区管理委員会」と書かれた青いバスが行き交っていた。これは、開城工業地区で働く北の労働者の住宅地区と工業地区を結ぶバスだ。南の開城観光事業が中断された中でも、開城工業地区は稼動していることを実感させるが、ここも大きな危険をはらんでいると関係者は話していた。

 関係者によると、南当局の人員は2、3カ月前にすでに追放され、南の企業家だけが同地区を往来している。朝鮮名勝地総合開発指導局は、「北南共同宣言の精神と民族の志向に背いて対決の道に引き続き向かう場合、開城工業地区も全面再検討される」(4月8日、スポークスマン声明)と宣言している。いつ「断固たる対応措置」が取られるのか分からない不安定な状態が続いているのだ。

 韓相烈牧師は、「現在南北間の事業は開城工業地区しか残されていない。何があっても維持させなければならない」と切々と話した。

板門店を初めて訪問した韓相烈牧師(上)
行く先々で歓迎された(下)

[朝鮮新報 2010.7.20]