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延坪島砲撃事件 活発化する外交戦 対話の枠組み模索

 延坪島砲撃事件を口実にした米国と南朝鮮の合同軍事演習が終わり、朝鮮半島をめぐる外交の動きが複雑さを増している。砲撃戦直後に6者による緊急協議を提案した中国からは、戴秉国国務委員が平壌を訪問し、金正日総書記と会見した。一方、ワシントンで米、日、南の外相会談を開き「中国の役割」を強調したオバマ政権は、ジェームズ・スタインバーグ国務省副長官率いる代表団を北京に派遣した。

戦争の「火種」

 米国は「天安」号沈没事件時と同様に、今回の延坪島砲撃事件でも自国の利益を追求した。事件後の軍事演習では朝鮮を威嚇すると同時に、中国に軍事的な圧力を加え、南朝鮮と日本との軍事同盟を強化し、覇権強化のための環境づくりを進めた。

 しかし米国自身も、朝鮮半島の危機に便乗したままではいられない状況にある。今もなお、戦争の火種は残っている。

 今回の事件の発端は南朝鮮軍の北側領海への砲撃だ。停戦体制が有名無実化し、緊張が高まる中、南の軍部が再び無謀な行動に走らないという保証はない。実際に南の軍当局者は「北の追加的な挑発には自衛権で対応する」と発言している。南の戦時作戦権を持つ米国は、マイケル・マレン統合参謀本部議長を急きょソウルに派遣し、「支援」や「共同行動」について強調した。米国がこの時点で「同盟国」との「結束」をあらためて強調する目的が戦争の再燃でなければ、当然緊張激化を防ぐための外交的な努力も並行されるべきだ。

朝鮮の国防力

 オバマ政権の高官らは「中国が北朝鮮に対して、挑発的行動には代価がともなうというメッセージを伝えなければならない」(スタインバーグ副長官)との発言を繰り返している。中国と米国の間では「新冷戦」と呼ばれる対立と葛藤が続いている。米国は日本、南朝鮮と冷戦時代の勢力図を再現し、中国に対する「力の優位」を誇示するために「北朝鮮の軍事挑発」という虚構と朝鮮半島の緊張状態を利用した。

 今回の砲撃戦を通じて証明された朝鮮の国防に対する確固たる意志と、それを裏付ける人民軍の戦闘力は、米国の既存路線に打撃を与えたようだ。米国は、戦争の火種を残したまま「新冷戦」の構図を定着させてしまった場合のリスクを、真剣に考慮せざるをえなくなった。

 局面の転換でカギとなるのが中国の動きだ。米国は、朝鮮の国防力を無視した無分別な対決強硬策は、必ず代価がともなうということを知るべきだ。問題解決のための対話の必要性を認め、その合理的な形式と手順を検討しなければならない。こうしてみると中国には、オバマ政権が主張することとは違った意味での「役割」がある。

停戦協定の当事国

 金正日総書記は、平壌を訪問した戴秉国国務委員と会見した。朝鮮は、中国が「役割」を果すための条件を整えるのに協力したと見ることができる。

 戴秉国国務委員の平壌訪問時に朝中間で交わされた対話の内容は外部に公開されていないが、朝鮮は今年1月に停戦協定を平和協定に替えることを正式に提案した。外交チャンネルを通じて、米国との交戦関係に終止符を打ち、信頼が醸成されるなら、非核化プロセスも順調に進められるという意向も伝えている。

 来年1月には胡錦濤主席の訪米が予定されている。「新冷戦」の推移とともに、停戦協定締結当事国である中国と米国が、朝鮮半島の現実が提起する「戦争と平和」の問題にどのような姿勢で臨むのか、国際社会は注目している。(金志永)

[朝鮮新報 2010.12.17]