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2年目迎えたオバマ政権 公約果たせず揺らぐ威信

朝鮮半島核問題解決でも正念場

 米国のオバマ政権発足から1月20日で丸1年が過ぎた。発足当初の期待とは裏腹に、同政権は内外で厳しい評価を突きつけられている。朝鮮半島問題に対する取り組みを中心にオバマ政権の1年目を振り返り、今後を展望してみる。

色あせた「変革」

昨年8月の金正日総書記とクリントン元大統領の会見は朝米関係を対決から対話の局面へと移行させえるきっかけとなった [朝鮮中央通信=朝鮮通信]

 発足から1年を経て、オバマ政権の威信は大きく揺らいでいる。内政、外交面で課題が山積する中、就任当初70%近くあった支持率は50%前後で低迷している。

 米国メディアの報道によると、ギャラップ社など主要13社が発表した1月20日現在の支持率は平均49.9%で、不支持率は44.2%だった。CBSテレビによる最新の調査では支持率50%。この数字は、就任1年目としてはレーガン元大統領の49%に次いでワースト2位だという。

 メディアや専門家らはおおむね、支持率低迷は世界金融危機の克服、雇用創出などの経済対策や医療保険改革など内政面の対応が要因だと分析している。

 外交・安保分野はどうか。

 ブッシュ政権の単独行動主義を批判し国際協調を掲げたオバマ政権はイラクやアフガニスタンでの「対テロ戦争」、朝鮮半島やイランの核問題など前政権が積み残した課題に直面した。対話重視の姿勢を打ち出した「オバマ外交」に期待が集まったが、具体的成果は乏しい。

 「核なき世界」追求の先頭に立つと宣言したが、核抑止を軸とする世界戦略は変わらない。中東和平問題に関しても、域内に広がった期待は急速にしぼみ、むしろ軍事的対応が前面に出てきつつあることに懸念が強まっている。

 「テロとの戦い」の主戦場と位置づけたアフガニスタンの情勢は泥沼化の様相を深めている。オバマ政権はアフガン、イラクで「ブッシュの戦争」を引継ぎ、さらに戦線をイエメンにも拡大しようとしている。

 経済学者のポール・クルーグマン氏がニューヨーク・タイムズ1月20日付の論説で「彼はわれわれが待ち望んでいた人物ではなかった」と指摘するなど、オバマ政権1年目に対しては評価より失望が目立っているのが現実だ。

対決から対話へ

 一極主義に行き詰まったブッシュ路線からの脱却を図ったオバマ政権だったが、朝鮮問題について言うと、全面的に刷新されたとは言いがたい。

 オバマ大統領は就任前、この問題に積極的に取り組む姿勢を示していた。ブッシュ政権の対朝鮮外交を批判したうえで、「敵対国家と前提条件なしの対話に応じる」「朝鮮の最高指導者とも会う用意がある」という立場を表明した。

 クリントン国務長官も政権発足直後、朝鮮半島核問題に対して「差し迫った問題として対処していきたい」と述べるなど、解決に意欲を示していた。

 当面は、第2期ブッシュ政権後半の対話路線を大枠では引き継ぐだろうという見方が優勢だった。

 しかし、4月に米国が朝鮮の人工衛星打ち上げを問題視し、国連安保理制裁が発動されたことで6者会談の枠組みは崩れた。朝鮮は2回目の核実験を断行。米国などがこれにさらなる制裁で応じたことで、緊張状態はエスカレートした。

 オバマ政権は問題の解決に向けて有効な対策を示さないまま先送りを図るという過ちを犯し、結果的に朝鮮側の強硬対応を招いた。

 世界金融危機への対応やイラク、アフガン情勢など喫緊の課題に足をとられたという見方もできる。しかし、朝鮮の人工衛星打ち上げ問題に関する対応は、敵対国との対話も視野に入れた協調外交という方向性からは程遠いものだった。

 オバマ政権は上半期までの時点で、第2期ブッシュ政権後半の対話の枠組みを維持することにすら失敗した。朝鮮側からは、「自国の意にそぐわない国を力で圧殺しようとした前政権と少しも変わるところがない」と切り捨てられた。

 朝米関係はその後、8月の「クリントン訪朝」を機に対決から対話の局面へとシフト。12月にはボズワース特別代表が大統領特使として、金正日総書記にあてたオバマ大統領の親書を持参し平壌を訪問した。

非核化への取り組み

 2年目に入ったオバマ政権には具体的成果を求める内外の厳しい視線が注がれている。

 11月には上下両院の中間選挙がある。野党共和党との対立も激化すると予想され、政権にとっての正念場を迎える。

 就任後初の一般教書演説(1月27日)では、全体の3分の2以上を経済対策に関する内容が占めた。外交・安保分野の政策提示は隅に追いやられた形だ。

 対朝鮮政策に関しては、「北朝鮮は核兵器保有を追求しているため、さらなる孤立と積極的でより強力な制裁に直面している」などと、従来と変わらぬ見解を繰り返している。また、大統領の就任1周年に際してホワイトハウスの公式サイトに掲載された寄稿文には、「北朝鮮が核に関する国際的義務を順守してこそ米朝関係を改善できる」と指摘されている。

 米国にとって、外交・安保上の懸案である朝鮮半島核問題の解決をこれ以上先延ばしする余裕はない。

 現在、朝鮮は朝鮮戦争停戦協定を平和協定に転換させる問題を朝鮮半島非核化などの懸案解決に向けた最重要課題として提起している。

 昨年12月のボズワース訪朝時、朝米双方は平和協定締結問題をはじめとする懸案を真しかつ虚心坦懐に議論している。

 朝鮮側の平和協定締結に向けた会談開催の提案は、朝鮮半島問題の懸案解決には当事者である朝米間の信頼醸成が不可欠であり、そのためには敵対関係の根源である戦争状態を終息させる平和協定がまず締結されるべきだという認識に基づくものだ。

 これに対し米国は、6者会談の再開と非核化の進展がなされた後に平和協定締結問題の議論が可能だという立場だ。

 しかし、根本の問題に頬かむりをしたまま朝鮮の会談復帰がなされたとしても、それは形式的なものにすぎず、過去の失敗の二の舞になる公算が大きい。

 4月には世界核安全保障サミットが、5月にはNPT再検討会議が開かれるなど、核問題に対する世界的関心は今年さらに高まることが予想される。当然、世界最大の核兵器保有国である米国の真しな取り組みを求める声も高まるだろう。

 オバマ大統領は昨年4月、プラハでの演説で「核なき世界」を目指す決意を表明した。9月の国連安保理の首脳級特別会合でも「核兵器のない世界のための条件を築くことを決意」すると明記した決議を採択した。前文では、「自国核兵器の完全廃絶を達成するという全核保有国の明確な約束」に合意している。

 朝鮮半島の非核化はこのうような取り組みのモデルケースになりうる可能性を秘めている。

 オバマ政権は「核なき世界」など自身のビジョンを実現するためにも、朝米間の敵対関係の清算と信頼醸成に取り組んで、核問題の解決に弾みをつけるべきだろう。(李相英記者)

[朝鮮新報 2010.2.17]