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そこが知りたいQ&A−「会談再開」問題、こう着状態の原因は?

オバマ政権の対応に「引き延ばし戦術」の兆候

 今年に入り、朝米の公式会談は一度も行われていない。朝鮮は1月に停戦協定を平和協定に替えるための会談を始めることを関係国に提案、中国も朝鮮側の主張と米国が求める6者会談再開を念頭に妥結点を模索する動きを見せた。しかし具体的な進展はない。

 Q 昨年までは朝米対話の進展が伝えられていた。

 A 金正日総書記とクリントン元大統領の会談(8月)、オバマ大統領特使としてのボズワース特別代表の訪朝(12月)などにより、朝米首脳が間接的に相互の立場を確認した。

 昨年前半までは、人工衛星発射と国連安保理制裁によって朝米の対立が激化したが、元大統領の訪朝以降は対話路線を基調に情勢が推移した。

 今年に入り、朝鮮が平和会談の開催を提案したのは「チェンジ」を掲げたオバマ政権に「戦争の終結」という朝米対立の根本問題、朝鮮半島非核化の核心問題の解決を迫ったと見ることができる。朝鮮側も「チェンジ」の決断を下したということだ。

 Q 「平和会談開催」を主張する朝鮮と「6者会談再開」を求める米国の立場に隔たりがあるとの指摘もある。

 A 朝鮮側は6者会談に反対していない。平和会談による戦争終結も朝米の敵対関係清算によって非核化をスムーズに進めていくという観点から見れば、目的は同じであり、「平和会談開催」と「6者会談再開」をリンクさせることは可能だ。そのための外交努力もあった。2月には北京で、6者会談の団長を務めた朝中の外交官による協議が行われた。

 オバマ政権の対応は「対話の形式」に固執しているというよりも、相手側に無理難題を突きつけ、対話の再開を引き延ばそうとしているように見える。クリントン国務長官は、「6者会談再開」を求めながらも「米国は朝鮮に対して、ただ単純に交渉テーブルに戻るだけでは十分ではないとのメッセージを継続的に送っている」と公言している。先に動けば見返りを与えるというブッシュ政権時代の「先核放棄論」を彷彿させる。

 Q 昨年までは米国も朝鮮と平和保障問題を議論する可能性を語っていた。だいぶトーンダウンしたようだ。

 A オバマ政権の高官は、会談再開が遅れている責任を朝鮮側になすりつけている。クリントン国務長官も最高指導者の「健康問題」や貨幣交換措置など経済政策の失敗による朝鮮側の「内政不安」が原因で「6者会談再開が困難に陥っている」というレトリックを使っている。各国メディアが流してきた情報を前提に政策の方向性が正当化されている状況だ。

 昨年来、朝鮮のいわゆる「急変事態」に関する根拠なき憶測報道が飛び交っている。たとえば「米政府関係者は、北朝鮮の『急変事態』発生時、核兵器を統制するため北朝鮮に進駐した中国軍と米軍の衝突もしくは中国軍と南朝鮮軍が衝突するケースを最悪のシナリオとして考えている」(米保守系シンクタンク、ヘリテージ財団の報告書)といった具合だ。米軍内からも「北朝鮮の不安定事態を想定していなければならない」(シャープ・駐南朝鮮米軍司令官)との声があがっている。

 朝鮮のイメージを失墜させるブラックプロパガンダが対話路線にブレーキをかけている。これまでも繰り返されてきたパターンだ。「先が長くない相手と急いで交渉する必要はない」という世論をつくる。実際、オバマ政権では国務省の高官らが対朝鮮政策で「戦略的忍耐(strategic patience)」という用語を使っている。

 Q オバマ政権は対朝鮮政策を変更しないということか。

 A オバマ政権が「戦略的忍耐」を強調するようになった理由については、いくつかの見方がある。

 ひとつは自らの内部事情を考慮した遅延戦術だ。

 朝鮮側が提案した平和協定締結交渉と非核化交渉が進展すると朝鮮半島と北東アジアにダイナミックな変化が起こる。しかし一方では現状のまま朝鮮と対話を始めると「弱腰」との批判を受けるのを恐れているかもしれない。

 オバマ政権としては今年11月の中間選挙まで外交問題で新たな難題を抱えたくない。朝鮮の「不安定な国内情勢」に焦点をあてて「しばらく様子を見る」と問題を先送りすれば、会談が開かれない責任も回避できる。

 一方、オバマ政権になっても米国の朝鮮敵視は変わらないという見方もある。「歴史を振り返れば、米国は朝鮮との関係で自主権尊重に基づく問題解決ではなく、国家制度の圧殺だけを追及してきた」(3月14日、朝鮮中央通信社備忘録)との認識だ。

 過去の政権が朝鮮に対する軍事的威嚇、経済制裁の依拠とした「崩壊論」をオバマ政権が完全に否定したという証拠は示されていない。

 実際、朝鮮が平和会談を提案したのに対して、米国は南朝鮮との合同軍事演習で応えた。先日発表した「核体制の見直し(NPR)」でも朝鮮を「核先制攻撃対象」に指定している。

 Q 朝鮮はどのような対応策を講じるだろうか。

 A NPRの内容については「会談再開の雰囲気に水を差した」と非難、「米国の核脅威が続くかぎり、今後も抑止力としてさまざまな種類の核兵器を必要なだけ増強する」との立場を表明した。

 現在、朝鮮半島の非核化は中断されたままだ。

 オバマ政権が対話のジェスチャーをしながら相手の「崩壊」を待つ戦略をとれば、朝鮮の核抑止力が一段と強化されるだけだ。

 自分勝手に想定した思惑が外れると、大きな外交的代償を払うことになる。90年代のクリントン政権や、朝鮮の核保有を後押ししたブッシュ政権がまさにそうだった。

 オバマ政権も「引き延ばし戦術」が自分たちに有利になると錯覚してしまうと、前政権の失策を繰り返すことになる。(金志永記者)

[朝鮮新報 2010.4.14]