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日本の市民団体 平壌外大に教材寄贈 「未来の希望与えたい」

相互理解と交流促進に向けて

 【平壌発=李相英記者】日本の市民団体「北朝鮮人道支援の会」による第2次日本語図書・教材支援訪朝団(12人、団長=吉田康彦同会代表、大阪経済法科大学客員教授)が4月29日から5月6日まで平壌を訪れた。一行は3日、平壌外国語大学を訪れ、同大日本語科に書籍、DVDなど合わせて171点を寄贈した。滞在期間、一行は市内の各所を参観した。

幅広いジャンルから

平壌外国語大学の日本語科学生らを励ます訪朝団メンバー

 「支援の会」は当初、朝鮮に対する緊急食糧援助を行っていたが、現在は長期的開発支援に対象を移している。3年前の2007年4月、文学書、政治経済解説書を中心に150冊の日本語図書・教材を平壌外大日本語科に寄贈した。これが大学側の好評を博し、このたび2回目の支援活動となった。

 支援の目的は、朝鮮の学生に日本語学習と日本の実情を理解するのに役立つ資料を提供し、日朝相互理解の促進に資することにあると吉田氏は指摘する。

 図書の選定と収集は米田伸次・日本ユネスコ協会連盟理事(帝塚山学院大学国際理解研究所顧問)を中心に、帝塚山学院大学国際理解研究所に所属する教員、関係者らが進めた。ジャンルは夏目漱石、森鴎外をはじめとする近代文学の定番や村上春樹などの現代文学、日本語学習の教科書やテキスト、時事用語辞典、アニメやドキュメンタリーのDVDまでと幅広い。

 事前に朝鮮側と協議を重ね、大学側の要望に沿う方向で教材を集めた。また、なるべく多くの分量を持っていくため、サイズの大きい単行本ではなく文庫本中心の選定になった。

学生たちを激励

日本語科学生たちとの交流のひととき

 3日、平壌外大を訪れた一行は日本から直接運んだ図書・教材を寄贈した。日本語科の授業も参観した。

 団長の吉田氏は学生たちを前に、現在、日朝関係は最悪の状態にあるが、「今のような関係がいつまでも続くはずがないし、続けることはできない」と強調した。また、日朝国交正常化と朝鮮半島、東北アジアの平和実現の重要性を指摘しながら、「自らの選択が正しかったと言える日が来ることを信じて、地道に日本語学習に励んで」と新たな時代を切り開く若者にエールを送った。

 初訪朝の川越菜穂子・帝塚山学院大学教授も、「日本では偏った報道のために、朝鮮の本当の姿を知らない人がたくさんいる。自分自身もそうだった。一日も早く関係が正常化して、みなさんを留学生として日本に迎えられることを願っている」と話した。

長期的視野に立って

 悪化の一途をたどる朝・日関係を反映してか、近年、平壌外大でも日本語専攻学生の減少が著しい。日本語科は朝・日関係改善の兆しが見え始めた90年代に志望者数が増加し、99年には英語、中国語、ロシア語に次ぐ4番目の学部に昇格した。しかし、2000年代に入って関係が険悪化すると志望者は次第に減少。07年度から諸民族語学部の一学科に格下げになり、現在にいたっている。

 このような状況の中で行う草の根交流は一見地味だが、その意義は小さくない。支援活動で中心的役割を果たした米田氏は、これが単なる教材の寄贈ではなく、両国の交流と相互理解を深める活動の一環だと強調する。

 帝塚山学院大学国際理解研究所の所長だった05年に平壌外大を訪れた際、日本語教材が不足していることを聞いて支援を思い立った。今回の訪朝団には中川謙教授(同国際理解研究所所長)、川越教授、古田富建准教授といった同研究所の関係者3人も加わった。

 「日本語を学ぶ学生たちに将来に対する希望を与えてあげることが何よりも大事。彼らが一生懸命勉強してくれることが日朝交流発展の大きな力となるはず。」(米田氏)

 一方、「日朝関係の現状に対する人びとの嘆きの深さを感じた」と話すのは写真家の初沢亜利さん。今回初めて訪朝した。平壌外大では03年のイラク戦争前後のバグダッドを撮った写真集を片手に学生たちに語りかけた。

 初沢さんは朝鮮の姿を伝える写真集を出すことを計画している。タイトルは「隣人」。「自分たちとそう変わらない人びとが住んでいるということを伝えたい」という。撮影のために今後も続けて訪朝する予定だ。

 2回目の支援を終えた吉田氏は、「人的、文化的交流が阻まれている現状を見るにつけ、日本政府の制裁の理不尽さを実感する。

 しかし、このような非正常な状態は歴史の一コマにすぎない。国交正常化に向けた長期的な展望を持って、今後もさまざまな活動に取り組んでいくことが重要」と話した。

[朝鮮新報 2010.5.12]