そこが知りたいQ&A−金正日総書記の中国訪問、成果と意義は |
「善隣友好」、外交・経済分野で具体化 朝鮮側報道 「結果に満足」 金正日総書記の中国訪問(5月3〜7日)は国際社会の注目を集めた。朝鮮半島情勢が流動化の様相を見せる中、朝中首脳による「戦略的互恵関係」の推進が与えるインパクトはかつてないほど大きい。 −なぜ、この時期に訪問が実現したのか。 朝鮮と中国は外交関係樹立60年にあたる2009年を「朝中友好の年」と位置付け、抗日闘争や朝鮮戦争の時代から続く「伝統的な親善関係」を再確認した。昨年の外交実績に基づき、胡錦濤主席は金正日総書記を招請した。2010年の首脳外交は、過去の歴史を踏まえながら「新時代の協力関係」を具体化していくためのものとして準備された。北京会談では、これまでになく中長期的なビジョンの検討に重点が置かれたようだ。
−昨年、中国は国連安保理の対朝鮮制裁に反対しなかった。一時期、両国の関係が冷却化したとの観測もあった。
金正日総書記の訪中結果が回答を示している。中国側は総書記を招いて歓待し、両国の未来について語った。 朝中関係の推移を20年くらいのスパンで見れば、今が協力・交流の拡大期にあるのは間違いない。冷戦末期から90年代にかけて、朝中間にも紆余曲折の時期があった。2000年に首脳外交が本格的に再開するが、それは朝鮮が敵対国の圧力に屈せず、経済的な苦境を乗り越え、積極的な全方位外交をスタートさせた時期だ。隣国との外交にも、その時の国際情勢や、それぞれの国力が反映される。 今回の首脳会談は2006年以来、4年ぶりの開催だ。その間、朝鮮は米国の軍事的威嚇と制裁圧力に対する自衛的措置として核実験を行った。昨年、2回目の実験があった。朝鮮の核保有に対する中国の立場がどのようなものであれ、山河がつらなる隣邦としては、朝鮮の地政学的地位の変化を念頭に置かざるをえない。 その間、情勢は激動したが、今回の会談で中国側は4年前と同様の立場を示した。「伝統的な親善関係」に「新たな息吹と活力を注ぐ」(胡錦濤主席)というものだ。昨年は安保理制裁に賛同する場面もあったが、現在は善隣友好の原則を強調している。対米関係や国際政治力学を考慮すれば、中国が存在感を増す朝鮮との関係を重視するのは理にかなっている。 −南朝鮮の哨戒艦沈没と今回の訪中を結びつける報道があった。 日本のメデイアは、哨戒艦が朝鮮の攻撃によって沈没したとの前提に立ち、自分勝手な解釈を展開したが、朝鮮側は明確に関与を否定している。中国側も、金正日総書記の訪問期間中に外交部の公式会見で、いわゆる「北関連説」は「メデイアによる推測」との見解を示した。 哨戒艦沈没を争点にして、6者会談など多国間外交にブレーキをかけようとする動きがあるが、関係国間では、さらに大きなテーマが浮上している。現在、朝鮮半島の安全保障問題で最大の焦点は「戦争の終結」だ。朝鮮は今年1月、停戦協定を平和協定に替えるための会談の開催を当事国に提案した。今年は朝鮮戦争の勃発から60年になる。停戦協定には朝鮮と中国、そして米国が署名した。 今回、1月の提案後、初めて朝中の首脳が会談した事実に注目すべきだ。朝鮮側は平和協定が締結されれば、朝米対立が解消され、非核化が促進されると主張してきた。半島の非核化は中国側の関心事でもある。 −今回の訪中目的が、中国からの経済支援獲得にあるとの指摘もあった。 朝中両国は「新時代の協力関係」を目指している。「朝鮮に中国側が一方的に支援する」という偏った先入観にとらわれると、今後のダイナミックな変化を展望することができない。最近、朝中の経済貿易では互恵共栄の理念が強調されている。両国の共同利益を追求するということだ。 朝鮮は2012年に「強盛大国の大門をひらく」という目標をかかげ、経済建設と人民生活向上に力を注いでいる。対外経済では外国の投資を積極的に受け入れる方針を打ち出している。国際投資グループの活動保証や国家開発銀行の設立、朝、中、ロの国境地帯に位置する羅先特別市の指定など関連措置も講じた。 今回、金正日総書記は朝鮮半島と隣接する中国の東北地方、遼寧省の経済開発区などを視察した。中国側は、朝中国境地帯のインフラ建設など、新たな方式の経済協力プロジェクトを推進する意向を朝鮮側に伝えたという。 −今回の訪中に対する朝鮮側の評価は。 朝鮮中央通信の報道によると金正日総書記は「訪問結果に対して満足を示した」という。 今回の会談で胡錦濤主席は「安定の維持」と「経済発展と人民生活改善」のため朝鮮が講じた措置を「高く評価」した。平和会談開催や外国投資誘致など、朝鮮側の政策方針に関して深い議論が行われたようだ。今後、朝中の善隣友好関係が外交、経済分野で実践され、東北アジアの国際情勢に大きな影響を与えていくと予想される。(金志永記者) [朝鮮新報 2010.5.14] |