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「天安」号沈没事件 依然として証拠が不十分

参与連帯が指摘する 8つの疑問点

 南朝鮮の市民運動団体、参与連帯の平和軍縮センターは5月25日、「天安」号沈没事件の「調査結果」(5月20日)において8つの疑問点が解明されていないとするレポートを発表した。レポートは、調査内容には北の魚雷攻撃による沈没だと断定するには証拠が依然として不十分であり、多くの疑問点が解消されていないと強調した。要旨は次のとおり。

疑問点@ 水柱に対する説明は説得力がない。

 (魚雷の爆発時に起こる)高さ100メートル、幅20−30メートルの水柱によって艦首と艦尾、砲塔などすべての箇所でアルミニウム酸化物が検出されたとしながらも、船上の兵士の顔に水滴が飛びはねてきただけだという説明は説得力が欠ける。

 5月20日の報告で、突如として水柱の高さ、幅、色などを詳細に証言する兵士の存在が確認されたというのも釈然としない。

 生存者らは水柱はなかったと証言していた。4月26日の中間調査発表で民軍合同調査団は、水柱はなかったと報告し、水柱が観察されなかった原因を説明するのに躍起になっていた。

疑問点A 生存者や死亡者の負傷の程度が魚雷爆発に適合するのかの説明が足りない。

 最も決定的な証拠のひとつである生存者の負傷の程度や死亡者の状態など、重魚雷の爆発による人体の損傷を立証できていないし、解明もしなかった。

 とくに、死傷者に傷痕が見られなかったというが、魚雷攻撃だった場合は死体が著しく損傷されているはずだ。このように重要な問題に対して最終調査結果で説明がなかったのは理解できない。

 魚が群れて死んだ現象もなかったのは理解できない、という指摘に対しても解明はなかった。国防部は潮流が速くてそのような現象は確認できなかったとしている。しかし、朝鮮日報5月21日付によると、軍消息筋は「北の潜水艦は当時、潮流が遅く攻撃しやすい時間帯を選んで攻撃したようだ」と述べている。その矛盾点は明らかだ。潮流が速かったとしても、救助活動の際にも魚群を発見できなかったのは理解できない。

疑問点B 艦船の切断面に爆発の痕跡と見られるような深刻な損傷があるのか説明がない。

 魚雷爆発による切断であれば、船体は力が加わった方向にへこみ、切断面は形態も分からないくらいに損傷され、電線はすべて落ちてなくなっているはずだ。

 船底の鉄板の厚さは小指程度なので全体に損傷があって正常だ。また、爆発による破片が船底に穴をあけ、破片が船内にあふれ、窓も割れているはずだ。しかし「天安」号の窓はそのまま残っているし、船底もきれいだ。

疑問点C 事件当時の映像は本当にないのか。

 ハンギョレ新聞などのメディアは、船体が真っ二つになる瞬間をとらえたTOD(熱状監視装備=撮影担当の軍人によって自動的に回りながら記録を保存する監視カメラのこと)映像が存在するとの疑惑を提起した。メディアによると、この映像を見たという目撃者が存在し、彼らは「急に船体が割れ、5分も経たないうちに艦尾が沈み、艦首は20分で沈み始めた」と証言している。

 軍は3月30日、40分の映像を1分20秒に編集して公開した。なぜすべて公開しないのかという批判が起こると、4月1日にこれを公開しながら、これ以上の映像は存在しないとした。ところが、民軍合同調査団によって発見された映像が追加公開され、軍のウソが明らかになった。これによって軍の信頼は落ちた。この問題を明確にすべきだ。

疑問点D ガスタービン室に対する調査がなされていなのに、調査結果発表を急ぐ理由があったのか。

 沈没原因が明らかにすると期待されたガスタービン室に対する調査が全くなされていない状況で発表した調査結果を「充分」とする調査団の説明は納得できない。

 最初からガスタービン室の引き上げを公開しなかった軍の態度も疑わしい。

 ガスタービン室が引き上げ中だということが5月18日に明らかにされると、国防部はこの日になってこの事実を明らかにした。

 軍の発表によると、ガスタービン室は5月19日に引き上げられ、翌日に海軍第2艦隊司令部に到着。これは、調査結果にガスタービン室に対する調査が反映されていないことを意味する。

 にもかかわらず調査団は、「ガスタービン室中央から左側3メートルの位置から総爆発量200−300キログラム規模の爆発があったと判断される」という調査結果を発表した。

 このように納得しがたい調査結果は、特定の政治目的のために無理に発表を急いだのではないか疑問だ。

疑問点E 火薬でなくアルミニウム酸化物が爆発の痕跡なのか。

 軍は艦尾を除いて艦首、海底などから高濃縮爆薬成分であるHMXを462ナノグラム、RDXを69ナノグラム、TNTを11ナノグラム検出したと発表した。しかし、調査団が魚雷爆発の主な状況証拠としてあげたのはこれらの極少量の爆薬ではなく、酸化アルミニウムだった。

 アルファ潜水技術公社のリ・ジョンイン代表は、「アルミニウムは、海中で性質の異なる金属と合わさると、酸化が早い」「船体の大部分はアルミニウムだ。船体の白いのはアルミニウムがさびたもの、酸化したものだ」としながら、これが爆発によるものだとするなら爆薬、鉄などが酸化したものと発見されたものがないかぎり、爆発の痕跡だと説明するのはむずかしいと述べた。また、「250キロ級の重魚雷が爆発を起こしたなら火薬成分がこのように(少しだけ)残っているはずがない」と指摘している。

疑問点F ヨノ(さけ)級潜水艦の実体は何なのか。

 5年前からヨノ級潜水艇の存在を知っていたと明かした国防部長官は、4月2日、国会の報告で「北の潜水艦は映画で見るような米国の最新潜水艦のように長い潜行能力を有していない」と報告した。

 130トン級の潜水艦の潜行能力は300トン級のサンオ(さめ)級潜水艦の20時間潜行能力よりずっと下回ると見られるのに米・南の合同戦力が唯一この潜水艦だけ追跡できなかったとするのは納得しがたい。

疑問点G 魚雷発射を感知できなかったのか。

 潜水艇の潜行を探知がむずかしいのは事実であり、軍もそのように言っている。しかし、魚雷発射を探知できないということまで説明されるものではない。

 一般的に潜水艦は魚雷を発射するとき、位置が露出されるので追跡は容易だ。

 魚雷が「天安」号はもちろん米・南の合同戦力の追跡装置がまったく分からなかったというのは理解できない。もしも当時兵士が失策したとしても、記録を再生する方法でいくらでもその記録を探せるはずだ。これに関しても解明がない。

 レポートは、この他にも@魚雷スクリュー発見の経緯A魚雷の腐食の程度B北の魚雷部品の表記方式など様々な疑問点があるとしながら、これらについては真相究明の過程を見ながら問題提起するとしている。

 なお、参与連帯の平和軍縮センターはこのレポートと同時に、軍の情報統制や民軍合同調査団のあり方など、調査過程においても6つの問題点があるとするレポートを発表している。

[朝鮮新報 2010.6.1]