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立命館大学コリア研究センター国際シンポジウム 日・米・南の学者、政策関連者の提言

「朝鮮半島の平和は東アジア協調の要」

 「朝鮮半島の平和体制構築は東アジアにおける国際協調の要である」「それは日本の平和と安全保障の観点からも重要だ」−立命館大学コリア研究センターが主催する国際シンポジウム「新国際協調主義時代における東アジアと朝鮮半島」が10日、立命館大学朱雀キャンパス(京都市北区)で行われた。日本、米国、南朝鮮の学者、ジャーナリスト、政策関連者らが集い、朝鮮半島情勢の展望と朝・日関係の改善に関する議論を交わした。報告者たちは、南の哨戒艦「天安」号の沈没事件がもたらした地域対立の構図を検討し、軍事的緊張の緩和と平和的な懸案解決プロセスの開始を緊急の政策的課題として提言した。

「政治のリーダーシップ」

朝米関係の展望が議論された総合討論

 シンポジウムには、朝鮮問題の研究者や学生だけでなく一般市民の姿も多く見られた。

 哨戒艦沈没事件以降、日本のメデイアは緊迫した朝鮮半島情勢について伝え、軍事的衝突の可能性までも指摘した。

 一方、日本政府は「北の脅威」を口実に沖縄の普天間基地移設問題で米国の要求を受け入れた。北南朝鮮、米国の軍事的対立が日本人にとって他人事ではないことを再認識させる状況が続いた。

 シンポジウムでは朝・日関係を中心とした北東アジアの国際環境に関する学術論文が発表されたが、多くの報告者が直近の関心事である哨戒艦沈没事件について言及した。

 シンポジウムは3部構成で行われた。

 「日朝関係の現状と課題」をテーマにした第1部では、立命館大学の徐勝教授が司会を務め、遠藤哲也(元日朝国交正常化交渉日本政府代表)、浅井基文(広島平和研究所所長)、野中広務(元内閣官房長官)の3氏が報告を行った。

 朝・日関係に関する報告では、これまで行われた国交正常化交渉の問題点が指摘されると同時に、朝鮮との関係が悪化した要因を日本側が除去し現状を打開するための必要条件として「政治のリーダーシップ」が挙げられた。過去、政府与党の中枢で朝鮮問題に深く携わった野中氏の発言は、その意味においてシンポジウム参加者の注目を集めた。

 野中氏は1990年、朝鮮労働党と自由民主党、日本社会党による3党共同宣言の発表に関わった自らの体験について語った。

 当時、自民党・社会党の訪朝団には外務省関係者も同行したが、現地で提起された問題については政治家が責任を持って判断を下したという。

 野中氏は、2002年の朝・日平壌宣言発表後、日本側が犯した約束違反についても触れ、「拉致問題が日朝関係の改善を望まない勢力によって政治的に利用された」と指摘した。

「天安」以降の情勢

 第2部では「東アジアと日朝関係」をテーマに青木理(ジャーナリスト)、南基正(ソウル大学校日本研究所教授)、綛田芳憲(北九州市立大学外国語学部准教授)、金志永(朝鮮新報平壌支局長)の4氏が報告を行った。

 また第3部「世界の中の日朝関係」では、ブライアン・コバート(ジャーナリスト)、李鋼哲(北陸大学未来創造学部教授)、徐載晶(ジョンス・ホプキンス大学副教授)の3氏が報告した。

 ある報告者は、朝鮮半島に一触即発の危機をもたらした哨戒艦沈没事件を現在の6者会談参加国(北南朝鮮、米、中、ロ、日)によって構成された「東アジア休戦システム」(南基正教授)の不安定性を示す事例として分析した。

 今年1月、朝鮮は停戦協定を平和協定に替えるための会談を関係国に提議した。朝米の交戦関係に終止符が打たれ、2国間に信頼が醸成されれば、地域の国際関係にも変化の相互作用が起こる。シンポジウムでは「朝鮮半島の非核化と北東アジアの安保協力体制が連動しながら実現する新たな6者構図」が生まれる可能性も指摘された。

 シンポジウムの前日、東京の日本外国特派員協会で会見を開き、哨戒艦沈没事件に関する南の「調査結果」の矛盾点を指摘した徐載晶副教授はこの日、米国のアジア戦略に焦点を合わせて報告を行った。

 徐副教授は「(今回の事件で浮き彫りになった)北東アジアの安保危機を自国の軍事同盟強化に利用した米国の戦略」について述べ、「(同盟強化は)短期的には米国の国家戦略に沿うものであるが、長期的には韓国と米国の安全保障上の利益に果たして合致するものなのか、冷静に検討すべき」との見方を提示した。

 今回、米国が日本、南朝鮮との同盟関係を強化し、朝鮮西海での対潜水艦訓練を計画するなど半島の軍事的緊張を高めたことに対して中国は強く反発した。停戦協定締結国でもある中国は現在、平和協定会談に関する朝鮮側の主張に理解を示し「朝米2者会談→6者予備会談→6者会談再開」という対話実現のための「3段階提案」を示している。

現状打開の取り組み

 シンポジウムの最後は張達重(ソウル大学校政治学科教授)、李大勲(聖公会大学校NGO大学院教授)の両氏が加わり総合討論が行われた。

 討論では、前日に国連安全保障理事会で採択された哨戒艦沈没事件に関する議長声明が取り上げられ、「直接対話と交渉を再開し(朝鮮半島の懸案問題を)平和的解決することを奨励する」という声明の内容に関する議論が交わされた。

 今回、国連の舞台で示された問題解決の方向性は、シンポジウムに参加した民間人の提言と相通じるものがある。

 「ポスト『天安』」の観点から朝米関係の展望を述べた発言者たちは、それぞれの立場から、対朝鮮関係で行き詰り東アジアの国際政治で存在感を示せないでいる日本が現状打開に取り組むべき必要性を強調した。(永)

[朝鮮新報 2010.7.21]