米国の軍事挑発、制裁には「核抑止力で対抗」 「国連安保理議長声明」以後の対立構図 |
朝鮮、「平等な6者会談による解決」を主張 南の哨戒艦沈没事件と関連して国連安全保障理事会が発表した議長声明(9日)は、関係国が「直接対話と交渉を再開」し朝鮮半島の懸案問題を「平和的に解決」することを奨励した。現在、朝鮮は議長声明の趣旨に沿った行動計画を進めているが、米国と南朝鮮は安保理で示された国際世論と相反する対決路線を突き進んでいる。 「天安」外交、勝者と敗者 米国と南朝鮮は、いわゆる「北の魚雷攻撃」への「対抗措置」として計画した連合軍事演習を7月25日から4日間、朝鮮東海で行った。国連安保理の議長声明は「天安」号事件と関連がないとする朝鮮側の主張に「留意」するとした。哨戒艦沈没を「北の仕業」だとする「調査結果」を国連で認めさせようとした米国と南朝鮮の思惑は叶わなかったわけだ。原子力空母「ジョージ・ワシントン」や ロサンゼルス級原子力潜水艦、最新鋭戦闘機・F−22ラプターなどが参加し「史上最大規模」と称される東海での軍事演習に対外的な大義名分はない。国連安保理の意向に真っ向から逆らう動きだ。 朝鮮の国連代表は、今回の議長声明について「われわれの外交的勝利だ」と述べた。米国、南朝鮮は声明に自らの主張が反映されたと強弁しているが、朝鮮半島の緊張を高める対決路線に国際社会の賛同はない。安保理の対話勧告を無視した軍事演習の実施は、振り上げた拳をおろせなくなった「外交的敗者の恫喝」だという見方が広がっている。 オバマ政権は議長声明発表後、クリントン国務長官とゲーツ国防長官をソウルに派遣、南朝鮮との「揺るぎない同盟関係」をアピールし、朝鮮に対する「追加制裁案」を発表した。東海での演習に続き、朝鮮半島周辺で南朝鮮との合同軍事演習を連続的に行う計画も打ち出した。 米国の路線は朝鮮半島に一触即発の危機を作り出すものだ。朝鮮側は米国の政策的暴走を事前に阻止するための先手を打った。東海での演習が始まる前日、国防委員会スポークスマン声明を発表し、合同軍事演習に「核抑止力で対抗する」との立場を示した。 同日、外務省スポークスマンも会見し「核抑止力を多角的に強化し、強力な物理的措置を講じる」と述べた。 沈没事件の真相究明 オバマ政権は「対話による問題解決」を奨励した国連安保理議長声明を「無視する」とは言えず、代わりに「北朝鮮が非核化措置を行うのが先決」とのレトリックで世論をごまかし、強硬路線を正当化しようとしている。しかし実際は、米国による制裁強化と軍事的挑発行為が朝鮮を核抑止力強化へと向かわせる構図がうまれている。 朝鮮は、核保有国としての「自衛の論理」を前面に打ち出し、米国の好戦的な態度に歯止めをかける一方、積極的な平和外交を準備している。 「天安」外交の勝者は、国連安保理議長声明を尊重する立場をとっている。声明発表直後、朝鮮は「平等な6者会談を通じて、平和協定締結と非核化のため努力をする」(外務省スポークスマン)と表明した。 各国の利害関係が交差する多者会談のテーマを率先して明らかにし、今後の情勢発展の主導権を握ったわけだ。 朝鮮戦争勃発60年にあたる今年の1月、朝鮮は停戦協定を平和協定に替えるための会談の開催を関係国に提議した。そして60年前、米国が操る「国連軍司令部」なるものを設置し朝鮮戦争に介入した国連安保理が、今日は哨戒艦沈没事件をきっかけに朝鮮半島の懸案問題を解決するための「対話の必要性」を強調した。 これと関連して注目される動きがある。現在、板門店では朝米軍部大佐級実務接触が行われている。朝鮮半島の緊張を緩和するための先決課題は米国と南朝鮮がいまだ軍事挑発の口実にしている「天安」号事件の疑惑を解明することだ。板門店での実務接触で朝鮮側は事件の真相究明のために国防委員会検閲団の現地調査を主張し、そのための条件を米軍が整えることを求めている。 そして検閲団の現地調査が実現すれば、朝米軍部将官級会談を開催して「事件の公正な解決」はもちろん、「北南関係の改善と朝鮮半島の平和と安定に役立つさまざまな問題を討議できる」としている。(金志永記者) [朝鮮新報 2010.7.27] |