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ここが私たちの故郷です−南時雨−

朝鮮語がこんなにも
恋しいものだとは
朝鮮文字がこんなにも
心弾むものだとは
それまでは本当に
知りませんでした

朝鮮語で道を歩いて
朝鮮語で友達を呼んで
朝鮮語で本を読むことが
こんなにも
素敵なことだとは
それまでは本当に
知りませんでした

古びた
朝鮮学校の看板が立つ
狭い校門をくぐるたび
両足の靴底から
元気がむずむずしてくるその感覚も
日に日に
新しく、大きくなっていくのが
私にはわかります

だから
悲しい
故郷への恋しみはありません
空を見上げて 
ため息の中に
祖国を探したりは
しないのです

こういう事をぜーんぶ
教えてくれて
育んでくれて
ささやいてくれるこの場所
ここが そう、
私たちの故郷なのです
ここが そう、
私たちの故郷のように
恋しくて
親しみに満ちた
誇らしい場所なのです

1949年

(南時雨童詩集「※春の便り」1953年)

 ※この詩集は、東京都朝鮮人学校オモニ会連合会(当時)が発行。「在日朝鮮文学(作品・評論)集目録1」として収録、貴重な歴史的資料として在日本朝鮮人文学芸術家同盟で大切に保管されている。

 ナム・シウ(1926〜2007)

 詩人・教授・博士。慶尚北道安東郡生まれ。1940年渡日。解放当時より民族教育に従事し、朝鮮大学校文学部長、学長(79年〜01年)など歴任。(選訳・金栞花)

[朝鮮新報 2010.7.26]