〈ベスト4への道 大阪朝高ラグビー部物語-5-〉 さらなる高みへ |
選手たちは考える
大阪朝高ラグビー部の新チームが始動した。 「全国3位」になったことで、追う立場から追われる立場になったチームが掲げる合言葉は「超攻撃型」。守りに入る気配はない。これは、1月5日の準決勝を終えた直後に監督と2年生をはじめとする新チームの選手たちが自ら決めたことだ。攻撃型ラグビーを貫くことは、勝ち負けを問わず、常に彼らの頭の中にあったと言える。 金寛泰新主将は、「浮き足立つことなくチームは順調に進んでいる。むしろ上り調子だ」と話す。 2年生を中心に、自主的に朝練も再開した。ラグビー部の朝練は「強制」ではない。選手たちが自分たちで考えて始めたことだ。週3回、すべての選手が参加して朝練が行われている。残りの3回は、やり足らない選手たちが集まって汗を流している。 呉英吉監督は、「2年生はもともと朝が苦手だったが、自分たちで考え始めたこと。ラグビーに真剣に打ち込んでいる」と指摘する。 選手たちには常に「考える」ことが求められる。練習中もワンプレーごとに考える。輪になって改善点を話し合う姿は、ここではよく見られる光景だ。練習以外の時間は、今後のチームのあり方について考える。監督、コーチはすぐに「答え」を教えたりしない。悪戦苦闘しながら自分たちで導き出した「答え」こそが価値あるものだと考えているからだ。 もし答えが見つからなかったら−「その時は原点を忘れずに行動するだけ」(呉英吉監督) 金勇輝副主将は、いま考えていることについて、「精神的な支柱だった先輩たちはもういない。先輩についていった先に花園があった。これからは自分たちがチームの行き先を決める番だ」と語る。 金寛泰新主将は、「2年生のレベルアップが最優先。21人いる同級生が、15人しか立てないグラウンドに同時に立つことはありえない。それでも心を一つにしないと勝つことはできない。すべきことは、チームを、そしてラグビーを愛することだと思う」と言った。 チームを一つにする方法について、いかに新しい歴史を創造するかについて、そして「頂点」への道のりについて、選手たちは常に考えている。
「やりきれ、出しきれ」
吐く息よりも体から発せられる蒸気のほうが白く見える。遠慮して練習する者は誰もいない。「『超攻撃型』は口だけか」と檄が飛ぶ。骨のぶつかる音が聞こえてきそうだ。 今は3年生、大学に通うOBとそのチームメイトを交えて新チームの練習が行われている。 「まだまだ序の口。もっと激しくなりますよ。どの場面でも本気で全力を出しきる。これが強さの秘密です」と、呉英吉監督が耳打ちしてくれた。 大阪朝高ラグビー部において、勝利はすでに至上命題であり、頂点に立つことが目標だ。 呉英吉監督が新チームの構想について語った。 「現在、選手たちの間には出場経験の差からゲームフィットネスにも差がある。しかし、モチベーションは同じなので、これはコミュニケーションで埋められる。3年生が残した財産と言っていい。昨年より大きなアドバンテージを得た。さらに理解力を高めることで、スピード、危機管理能力を伸ばしていく。いい素材がそろっているだけに経験を積ませることで、さらなる高みに挑戦していきたい」 呉泰誠元主将は、「自分たちと同じラグビーをやっていたら、いつまでたってもベスト4止まり。2年生は後輩がついてきてくれると信じて前に進めばいい。もしついてこないなら、それはまだ力不足だということ。やりきれ、出しきれ」とエールを送る。 4月28日から5月5日にかけて、福岡でサニックス2010ワールドラグビーユース交流大会が行われる。「第89回全国高等学校ラグビーフットボール大会」でベスト4に進出した大阪朝高ラグビー部は、この大会の挑戦権を得ている。大会にはイングランド、フランス、南朝鮮、ウルグアイ、オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカ、フィジーの海外8チームと日本国内の選抜、推薦チームが参加する。日本国内から出場したチームのこれまでの最高成績は2位。圧倒的な強さを誇っていた年のいずれの日本国内のチームもまだ優勝していない。 しかし、大阪朝高の目標は優勝だ。 先日、新人大会である第61回近畿高等学校ラグビーフットボール大会大阪府予選で、大阪朝高は近大附属を57−5で下し優勝(2年ぶり5回目)した。新チームはいまだ負け知らず。新たな挑戦が始まる。(おわり) この連載は李松鶴、鄭尚丘記者が担当しました。 [朝鮮新報 2010.2.17] |