朝鮮のサッカー専門記者たちが感じる「熱風」 |
「1966年よりも熱い」 【平壌発=李泰鎬記者】44年ぶりのW杯出場は、朝鮮国内のサッカー専門記者たちの地位を大きく変えた。記者たちは、「選手たちとともに、われわれの地位も上がった」と話す。最近、スポーツ記者といえば、誰もが歓迎してくれるという。多くの人たちから質問され、選手たちへの声援を頼まれたりもする。 「グループ構成が良い」 「国際試合に出るからには、最強といわれるチームと対戦するほうが良い」 W杯本大会のグループ構成について、朝鮮の選手と監督陣は口をそろえて言う。「体育新聞」を発刊する体育出版社のサッカー専門記者たちは、これとまったく同じ意見を人々からも聞いているという。 「グループ構成が良い」「ブラジルとの対戦を歓迎する」「ポルトガルとの試合には深い因縁を感じる。次こそは必ず勝つ」「世界が注目するなかで朝鮮の力を見せてもらいたい」 体育出版社は1949年2月28日に創立された。朝鮮建国後、初の大衆スポーツ雑誌である「人民体育」を発行。1960年1月1日には「体育新聞」を創刊した。週刊で発行されていた「体育新聞」は、社会的なサッカー熱を背景に、08年7月1日から週2回の発行に移行した。 新聞では、国内外スポーツの結果と体育団の活動、国内の各工場、企業所などでのスポーツ、そして国際機構の動きなども伝えている。スポーツ愛好家たちの投稿、読者の声なども掲載している。 体育出版社ではまた、「球技」「朝鮮テコンドー」「朝鮮スポーツ」「大衆スポーツ」「冬季スポーツ」などの雑誌とスポーツ関連の各種図書も発刊している。 新聞編集局のキム・ジュンソン報道部長(38)は、国内サッカー事情に精通する記者だ。キム部長は、ブラジル、ポルトガルのような「強豪」との対戦を「歓迎」することが、社会的な風潮になっていると話す。 キム部長にはサッカー愛好家はもちろん、全国の工場、企業所、農場から代表チームを応援する投稿が数多く送られてくる。そのなかには、戦術的な意見やアドバイスのようなものもあるという。 「1966年当時を知る人たちによると、市民の期待は当時よりも今のほうが高いという。1966年と2010年は、国力が上昇した時期という点で共通している。60年代の千里馬大高揚を経済建設だけではなく、サッカー分野でも再現してみようという人々の興奮を実感しながら取材している」 代表選手とも親しいキム・グムフィ記者(45)は、「『見ると聞くとは大違い』という諺もあるように、恐れることはない。選手たちもみんな自信をもっている。大きなことを言うだけではなく、勝利への準備と戦術的な研究を着実に続けている」と話す。 「精神力」の社会的背景 記者たちは、朝鮮代表チームの有利な点として「精神力」をあげる。 国際試合の取材経験が豊富なキム・グムフィ記者は、朝鮮と対戦した相手チームや監督にインタビューすると、「精神力において朝鮮にはかなわない」というコメントをよく耳にするという。「名誉やお金のために走る選手と、国と人民のために走る選手とでは、明らかに差がある」とキム記者は指摘する。 キム・ジュンソン部長は、「スポーツでは、思想戦、闘志戦、速度戦、技術戦をしなければならない。朝鮮の選手は、この原則の深い意味を幼いころから習い、実際に体得している」と説明する。 精神力は、どのような練習をしても簡単に得ることのできるものではないと記者たちは話す。選手やチームの精神状態は、社会環境や時代的な背景が大きく作用するという。「1966年チーム」と「2010年チーム」は、すばらしい選手が偶然に集まって強いのではなく、選手たちの精神力と団結力が高いレベルで結合するような有利な条件が備わっていたからだということだ。 記者たちは、「千里馬大高揚の再現」を望む社会的風潮を敏感に感じている。そのような考えは、記事を通じ、代表選手たちにも伝えられている。 [朝鮮新報 2010.2.17] |