〈2010インターハイ〉 ボクシング 東京、大阪、神戸の7選手が出場 |
全国高等学校総合体育大会(インターハイ)のボクシング競技が7月28日から8月3日にかけ、沖縄県豊見城市の豊見城高等学校体育館で行われた。162校、303人の選手が参加した同競技に、東京朝高の兪m、李炯東、朴志亨、大阪朝高の高永峰、神戸朝高の王賢吾、権卓良、李信の7選手(全員3年)が出場。李炯東選手がベスト8に入った。 李炯東選手がベスト8 支えてくれた監督、仲間に感謝 ウェルター級に出場した李炯東選手は初戦から快調に勝ち進んだ。1回戦で宮本和樹選手(南京都高校)、2回戦で宮崎奨選手(松山聖陵高校)をそれぞれ12−1、4−0の判定で下し、ベスト8に躍り出た。これまでの練習で、右ストレートとディフェンスに力を入れてきた李選手は、1回戦、2回戦ともにそれらを見事実践した。 メダルをかけた準々決勝の相手は、荒蒔浩太選手(大子清流高校)。これまでの試合内容や実力、気概から、李選手有利に思われた。しかし、結果は距離を守った荒蒔選手に軍配があがった。 序盤、カウンターを狙う李選手は相手の出方をうかがい慎重に試合を運んだ。対する荒蒔選手も自らは打って出ず、両者0ポイントで2ラウンドへ。先に勝負に出たのは李選手だった。じわじわと距離をつめ、荒蒔選手を追い詰めるとカウンターで得意の右ストレートをクリーンヒットさせた。しかし後半、リーチの長い荒蒔選手に攻撃のリズムを狂わされ、なかなか手が出なくなった。ポイントは伸びず、そのまま1−3の判定で敗れた。 李選手は試合後、「これまで練習してきた成果を発揮できず、悔いの多い試合となった。自分の力不足」と肩を落とした。一方で、「それでも、ベスト8までこれたのは支えてくれた監督、仲間たちがいてくれたおかげ。3年間のボクシング生活は、何よりその大切さと感謝の気持ちを学んだ」と話した。 金尚洙監督は、「インターハイという大舞台で、恩師(李成樹元監督)の息子を2勝に導いただけでも本当によかった。出場した朝高選手たちは、ちびっ子ボクシングなどが普及し、低年齢期からのボクシングをはじめる生徒が増えるなか、高校から始めても十分全国に通じるボクシングができるということを証明してくれた。自分にとっても自信につながった」と話した。 4選手がベスト16 強豪相手に惜敗 大会では東京、神戸の朝高4選手がベスト16入りを果たした。 2度目のインターハイ出場となった東京朝高の兪m選手(フライ級)は、1回戦で長沼龍之介選手(日章学園高校)、2回戦で春の選抜大会に準優勝した奈良楓也選手(飛龍高校)に4−3、6−3で判定勝ちした。つづく3回戦では、佐藤正道選手(四日市四郷高)と対戦。相手のすばやい攻撃に思い通りの距離とリズムがつかめず、1−3の判定で敗れた。 同級、神戸朝高の王賢吾選手は、2回戦で北沢一将選手(飯田工業高校)に7−0の判定で快勝すると、3回戦でも勢いに乗ったまま、今年度の選抜チャンピオンである松本亮選手(横浜高)と互角の戦いぶりを見せた。しかし、レフリーから度重なる反則注意を受け、3R1分2秒で、まさかの失格負けとなった。「結果は納得いかないが、内容には満足している。練習の成果をこの試合ですべて発揮できた」と胸を張った。 神戸朝高の権卓良選手(ライト級)は、1回戦で大久保翔平(水戸葵陵高校)に10−0の大差で完勝すると、つづく2回戦、昨年のインターハイと今年度選抜大会を制した強豪・藤田健二選手(倉敷高校、二冠達成時は、バンタム級)と対戦した。固いガードから左ストレートを狙うという作戦をしっかり実践した権選手だったが、結果は1−6の判定で敗れた。 この間、メンタル面の強化に努めてきたという権選手は、「全試合を通して、勝ち抜くぞという気持ちはぶれなかった」と大きな成長ぶりを見せた。 東京朝高の朴志亨選手(ミドル級)は、1回戦、仲島慎太選手(松山工業高校)を破ると、2回戦、高身長の下坂勇人(西宮香風高)と対戦した。カウンターを狙う朴選手は、中盤から手数を出すが正確にヒットせず、1−5の判定で涙を呑んだ。朴選手は、「結果は出せなかったけど、先生、仲間たちをはじめ多くの人にお世話になった。感謝の気持ちを決して忘れない」と涙を浮かべた。 感動と成長 初戦敗退した大阪朝高の高永峰選手(ミドル級)と神戸朝高の李信選手(ライトウェルター級)も健闘した。 高永峰選手は、立花潤生選手(福岡県、東鷹高校)に2−6で判定で敗れたが、最後まで攻撃の手を休めることなく打ち続けた。高選手は、「緊張してしまった。もっと冷静に試合を運ぶべきだった」と悔しさをにじませた。応援に来た高選手の母・李淑汝さん(大阪府在住、46歳)は、「本当によくがんばった。ボクシング経験を通じして精神的にすごく成長したように思う。支えてくれた先生方への感謝を忘れないで」と話した。 李信選手は、山川直輝選手(岡山県、関西高)と対戦、1−7で判定負けした。李選手は、「これまで応援してきてくれた人たちに結果で応えられず申し訳ない」と振り返った。李選手の試合を観戦していた祖母の郭泰子さんは、孫をねぎらいながら「優しくておとなしかった信が、インターハイに出場したこと自体が私の誇り」と目に涙を浮かべながら語った。 大会を振り返り、神戸朝高の金潤徳監督、選手たちの戦いぶりについて、「すべての力を発揮していたと思う。3年間の集大成となる試合だった。よくがんがんばった」と語った。大阪朝高宋世博監督は「今後は1、2年生の実力強化とともに、ボクシング部員の増加も一つのおおきな課題」と話した。 会場を訪れた在日本朝鮮人ボクシング協会の李学宰会長は、「技術的にはどの選手も問題はなかった。また、祖国での強化訓練前と、それ以降とでは選手たちの動きがみちがえるように変わったと思う。今後、メダルを狙うための課題としては、フィジカル面をより強化していくべきだ」と語った。 一方、選手たちを応援に来た神戸朝高ボクシング部後援会の周沿革顧問は、ひたむきに戦う選手たちの姿をみて感無量。「朝高生たちの闘志と根性、がんばる姿に大きな力と感動をもらった。在日の少ない沖縄の人たちに、彼らの守ってきたボクシングと存在意義を十分に見せ付けることができたのではないかと思う。無償化問題がささやかれているが、朝高生の姿が、なによりも民族教育の正当性を示してくれた」と目を輝かせた。(周未來記者 ) [朝鮮新報 2010.8.4] |