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春・夏・秋・冬

 長年に渡り本コラムを担当してきた「彦」が永遠にペンを置いた。心から哀悼の意を捧げるとともに、読者、ご友人の方々に生前のご厚誼を深謝する

▼世界情勢、在日朝鮮人の歴史や権利問題などに関する的確で筋の通った「ぶれ」のない記事は、多くの読者に愛読された。取材先でも幾度となく人気ぶりを実感させられた。筆者にとっては信頼できる上司、心強い先輩記者、尊敬すべき恩師であった。あらためて存在の大きさに気づかされ、社員一同、悲しみに打ちひしがれている

▼とはいえ、まだ実感が湧かないのも現実だ。今にも編集局内の後ろの席から呼び出し声が聞こえてきたり、携帯電話から指示が飛んできたりしそうだ。本コラムを執筆したいと申し出た筆者に、「100年早い」と怒鳴った血気あふれる姿が、昨日の出来事のように思い出される

▼そんな生意気な部下にも、貴重な資料や本を与え要人を紹介するなど、常に目をかけてくれた。取材の仕方、記事の書き方、企画の立て方、人との付き合い方にいたるまで、まさに手取り足取り教えてくれた。本紙記者の多くがこうして記者としての歩みを始めた

▼二人きりで交わした最後の会話は、筆者が平壌駐在を控えた時期だった。「戻って来たらこれまで以上に本格的にしごいてやる。記者として必要なものすべてを託す」と激励してくれた。悲しいかな、次に会った時は病床、それが最後となった。もう指示を仰ぐことはできない。だが、遺志を継ぐことはできる。祖国と民族、同胞社会に捧げた情熱は、後輩記者たちの心の中で鼓動を続ける。(泰)

[朝鮮新報 2010.3.23]