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春・夏・秋・冬

 「若い人間が良い環境で仕事ができるようバックアップするのが上の人間の仕事だ」。本コラムを担当していた「彦」は、口癖のようにいつも言っていた。10年以上にわたって色々な事を教わってきたが、それに応えられるほどの仕事ができているのかと自問している

▼ものの見方や記事の書き方など、記者として備えるべき資質は当然だが、何よりも見習うべきだと思ったのは、「頭の柔らかさ」と「人の話を聞く耳」である。確固とした「筋」は持ちつつも、自分がいいと思ったことはどんなことでも吸収した。部下たちが話す、仕事とは関係のない他愛もない話にも耳を傾けた

▼仕事などで壁にぶつかり、相談したことは一度や二度ではなかった。そのたびに的確なアドバイスをくれながらも、「最後に決めるのは自分だ」と若輩者の意見を尊重してくれた。機会があるごとに食事に誘ってくれては、人生の指針になる大切な話をたくさん聞かせてくれた

▼こうしたすべてのことが二度とできなくなり、あらためて失った人の大きさに気づく。彼が受け持っていた仕事をすることになり、その時々の対応で悩むこともあるが、教わったことをフル活用して何とかこなしている

▼この先仕事を続けても彼に追いつくことはできないかもしれない。しかし、彼を目標にして前に進むことはできる。質の高い仕事をこなすと共に若い力がさらに育つような環境を作れるよう、日々精進していきたい。そしていつの日か、「遺志を継ぐことができた」と胸を張って墓前に報告できるよう、全力を尽くしていく。(国)

[朝鮮新報 2010.3.24]