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春・夏・秋・冬

 「愛国歌」を聴きながら泣いた。W杯でも国歌斉唱の時、自分の気持ちが読み取られないように無表情を装う選手がいる。目をつむり声を出さない。鄭大世選手は、祖国を称える歌をうたい感情のおもむくままに涙を流した

▼その時、鄭選手は代表になるまでの道のりを思い起こしていたのだという。朝鮮学校でサッカーを始めていなければ、そのユニフォームを着ることはなかった。「愛国歌」の旋律に心を揺さぶられることもなかったろう

▼世界最強といわれるブラジルとの対戦、選手たちのプレーは感動を与えてくれた。彼らの姿に祖国の歴史と在日社会の歩みを重ねた同胞も多いだろう。朝鮮半島にルーツを置き、日本に住まれ育った若者たち。朝鮮学校で学び、成長しながら朝鮮人としての誇りを身につけた。在日同胞だけに通じる物語が確かにある

▼ところが広い世界を見渡せば、それは決して「閉じられた社会」ではなかった。エースストライカーの国歌斉唱に感銘を受けたのは在日同胞だけではない。世界中のサッカーファンの心を熱くした。彼は幼い頃から「祖国とともに」という言葉の意味を抽象論ではなく、ボールを追いかけながら、実践の中で学んだ。だからこそ夢が叶い、W杯出場の喜びをかみしめた瞬間、自然と涙があふれたのだろう

▼世界中からやってきた記者たちによって「涙」のわけを知った人々にいま熱い共感が広がっているという。心からサッカーを愛する選手のひたむきな姿は、万国共通のメッセージだ。ウリハッキョの卒業生たちが「愛国歌」を歌いながらそれを伝えていた。(永)

[朝鮮新報 2010.6.18]