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生命を染める−人の心をわしづかむ色彩

 現代日本を代表する洋画家で、日本芸術院会員・東京芸術大学教授の絹谷幸二氏(67)が今年3月末で大学を退任する。その退任記念展(1月5日〜19日)が東京芸術大学大学美術館で開かれ、「生命を染める画家〜絹谷幸二の軌跡」(アートヴィレッジ刊)も出版された。

 その作品は純然とした空の青を背景に、限定された形の中に明るく躍動的な色彩で描かれた人物、薔薇、富士などが特徴とされる。アフレスコ古典画(フレスコ画)という壁画技法における日本の第一人者でもある。

 退任記念展には、連日多くのファンが詰めかけた。とりわけ土日には絹谷さんが直接作品を説明するという機会も設けられ、会場は酸素が足りなくなるのではと思うほどの人出となった。

 結婚後すぐイタリアに留学し、色彩のとりこになった体験やフレスコ画との出会いなどユーモアをまじえた話に笑い声が絶えなかった。鮮麗な色彩で人の心をわしづかみするような画風。日本人離れした画家のエネルギーの原点が少し理解できるような気がした。また、戦闘機やミサイルなど不穏なモチーフがちりばめられた何点かの作品も展示され、観る人に今なお続く戦争の悲惨さを強く訴えていた。

 06年3月には、長年の夢だった高句麗古墳壁画を観るために訪朝。絹谷さんによれば、「イタリア半島と朝鮮半島は、石灰岩の大地や海が育んだ大自然という共通のゆりかごの中で、壁画という芸術を育んだ」という。朝鮮半島へのまなざしも温かい。

 人間と風土への飽くなき好奇心に満ちて、この春、新たな人生の旅立ちへ。(粉)

[朝鮮新報 2010.2.5]