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「面倒くさい」

 最近、私は「面倒くさい」という言葉を封印した。きっかけは古くからの友人の「『面倒くさい』は美しくない」という言葉。たしかに、どんなに見た目がキレイな人でも「面倒くさい」とひとこと言うだけで、その人の魅力は半減してしまう。私も内面の美しさに磨きをかけるため美しくない言葉を排除しよう、と思ったのだ。

 「面倒くさい」を言わなくなると、今まで見えなかったものが見えてきた。この世の中は面倒くさいことがどんどん淘汰され、大変便利になってきた。コンビニは24時間営業しているし、携帯電話があれば遠く離れた人といつでもつながることができる。自宅にいながら指先ひとつ動かせば買い物ができるなんて、ひと昔前は誰も想像できなかっただろう。しかし、世の中が便利になればなるほど失うものも多いのではないだろうか。

 メールではなく手紙を書くのは、面倒くさいけれど楽しい。手間ひまかけて丁寧にダシをとったお味噌汁は、インスタントでは味わえないおいしさがある。近所のスーパーまで車を使わずに自分の足で歩いていくと、暖かくなってきた風を感じたり、花の香りに心を奪われたり、今まで気づくことのできなかった季節の移り変わりを楽しむことができる。世の中が効率や便利さを追求するほど、こういった楽しみがこぼれていくような気がしてならない。

 手間を省き利便性だけを重宝したことも大きく起因していると思われる現代のストレス社会。こんな時代だからこそ、「面倒くさい」ことをして心にひとつ余裕を持ちたいものだ。(李順華、主婦)

[朝鮮新報 2010.4.2]