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〈教室で〉 西東京第2初級 体育担当 金将志先生

レベルに合わせた細やかな指導

 近年、日本の子どもの体力は、1985年頃から長期的に低下傾向にあるとともに、体力が高い子どもと低い子どもの格差が広がっているという(文部科学省「体力・運動能力調査」より)。そんな中、西東京朝鮮第2初級学校(東京都町田市)では、初6男児(2007年度)の体力測定の結果が「全員A」の好成績をおさめ、朝鮮学校教員らを対象に開催された東日本教育研究集会で注目を浴びた。児童らを指導したのは同校体育教員の金将志先生(28)。 「やればできる、あきらめずに取り組む」をモットーに体育の授業を進めている。

あきらめないことが大事

子どもたちにわかりやすく動作のコツを教える

 取材日に行われた初4体育の授業では、この日の課題に先立ち縄跳びの小テストが行われた。子どもたちは全員「体育ノート」を持っている。そこには体力測定の結果の他に「縄跳びチェック表」が貼り付けられ、両足跳び、その場かけ足跳び、あや跳び、交差跳び、2重跳び、あや2重跳び(はやぶさ)が、前後別に跳べた回数順に10〜1級に区分けされスタンプが押されている。

 順々に先生の前に立ち、課題をクリアしていく子どもたち。縄跳びは、2〜6年生の全児童に与えられた課題という。

 その後のストレッチでは、全身の筋肉を丹念にほぐし、腹筋運動をした後、カエルのように両手をついてしゃがんだ姿勢から両足を宙に浮かせ、両手のみで体を支える姿勢をとる、両手をついたカエル姿勢のまま「足裏拍手」をするなど、ユニークな運動も取り入れられた。

 いよいよマット運動がはじまり、この日の課題となる動作を一通り頭と体に馴らしたところでいざ跳び箱へ。課題は5年生になったら挑戦する「抱え込み跳び」の予行練習だ。マットの上で練習した動作を跳び箱でやってみる。

 マットの上ではほぼ全員ができていた動作が、跳び箱(6段)の上ではなかなかできない。金先生は、跳び箱2台を縦につなげて、「抱え込み跳び」を練習させた。できる子の数が少し増えたが全員とまではいかない。できた子の動作を観察し、コツを復唱させた後、着地場所に置かれたエバーマットを半分にたたんで、跳び箱とほぼ同じ高さになるよう調節した。子どもたちの顔に安心感が浮かぶ。数回練習を繰り返した後、マットの高さを元に戻す。できる子、できない子がいるが、どの子の表情も明るい。うまく跳べた子には全員が温かい拍手を送っていた。

 「すぐにできなくてもいい。できるようあきらめずに努力することが肝心だから。今日の授業では、みんながやり方のコツをつかんだので課題はクリアできたと思う」

 金先生の清々しい声が体育館に響いた。

「体育が苦手」な体育教員

 体育教員になって7年目。子どもにとって体力を身につけることは、何事にも積極的に取り組む基礎となると考えている。意外にも幼少の頃は体育が苦手な子どもだった。初、中級部を通して、駆けっこはビリ。逆上がりや跳び箱には成功したことがないと打ち明ける。初めて逆上がりができたのは中3のとき。「あきらめず努力すれは必ずできる」との確信が喜びと共に沸き上がってきた。高3の担任が体育教員だったこともあり、「努力してもできない悔しさ、自分だけができない恥ずかしさ」をバネに、子どもたちと向き合いたいと、体育教員になる決意を固めた。

 現在、金先生が受け持つ児童の中に「体育が嫌い」な児童はいない。運動が苦手な子どもはいるが、その子なりのペースで成長できるよう、細やかな指導をしているからだ。

 5年前から担当するようになったバスケットボール部は、ヘバラギカップで2連勝、冬の関東選手権大会でも3連覇の好成績を収めている。登校日には毎朝練習して、休み時間も体を動かせるよう、体育館を開放している。一昨年からは全校児童の基礎体力づくりに着目し、縄跳びや氷鬼、しっぽ取りといった遊びを通した補強訓練を意識的に取り入れている。

 「初級部ではスポーツの専門家を育てるというより、子どもたちが日々の暮らしを生き生きと楽しみ、勉強や芸術、スポーツ分野でやりたいことに積極的に取り組めるよう体力をつけることを目的としている。子どもの心と体は密接に関連している。心身ともに健やかな子どもを育てていきたい」

 現在、同校では、3〜6年生の全児童がそれぞれの発達段階にあった段数の跳び箱が跳べ、逆上がりや縄跳びにも挑戦し続けているという。「1〜4年生までできなくても、5年生でできるようになる子もいる。その間、あきらめずに努力し続けられるよう、励まし、コツを教え続けるのが大人の役目だ」。(金潤順)

[朝鮮新報 2011.1.14]