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〈投稿〉 「無償化」訴える声

 「朝鮮学校無償化除外反対アンソロジー」に書かせていただいた詩と同じく、また自ら在住するドイツ事情を挙げさせていただくが、ドイツ政府および国民が第二次世界大戦におけるナチスの政府に対して猛烈な反省をし、戦争責任の追及や賠償を目に見える形で行ってきたという史観を私は持つ。そして国民自身が自立心や批判精神を培って行動に移し連帯してきたということを、特に若い世代の人たちの、デモや政治的行動だけではなく、普段のゼミや授業などを見ていても肌で感じることが多々ある。

 河津さんが「うたの訴え」というモットーのもと、朝鮮学校無償除外反対と差別に基づく言葉の暴力への抗議を詩人たちに呼びかけ、日朝両国の79人の詩人と数多くの朝鮮学校生徒が詩という形でそれに応えた。彼女が詩人でありドイツ文学研究者であると同時に、アクティヴィストであるということを痛感させられた瞬間である。その俊敏で的確な言葉と行動には、しばしばドイツ人も見せる毅然さを見て敬服するとしか言いようがない。

 その根底には自国の歴史と向き合うという良心が、報道機関などの既成の情報や偏見に惑わされず自分の足を運んで知ろうとする正義がしなやかに横溢している。また、そのような場で他者とのつながりを求めようとするのは、このアンソロジー参加者すべてがそうであると思う。

 恥ずかしながら私は、愛沢革さんの詩で朝鮮の人々が自分の郷里にあった鉱山で強制労働させられていたのも初めて知ったし、ましてやここでドイツを手本にせよと美化するつもりはまったくない。自ら無知も認めるし、この国にも東西ドイツ再統一20周年を迎える直前の夏の終わりごろから、外国人嫌悪といった感情が顕著に現れてきているからである。

 連邦銀行の理事であったティロ・ザラツィンの「イスラム移民がドイツを貧困化する」という発言や、バイエルン州首相ホルスト・ゼーホーファーの移民統合に関しての「多元的文化Multikulturに代わって主導的文化Leitkulturを」が飛び出している。ただザランツィンは解任され、また統合についての議論は多方面で目下激しく再燃している。

 権力への意志が人間の本質と考えるならば、マイノリティーはどの時代にもどこにも存在する。「マイノリティーのエネルギーで他者とつながろうとする」行動を「うたの訴えで」構築しようとする挑戦は、人の心に潜む暴力に対する議論のための土壌を生み出すだろう。

 「アンソロジー」の再々版と広島、東京で開催される朗読会のご成功を心よりお祈りするとともに、朝鮮学校無償化のためにこの地でもつながりを求めていきたいと思う。

(岩脇リーベル豊美、哲学者・詩人、ドイツ在住)

※昨年12月に行われた「朝鮮学校無償化除外反対アンソロジー」朗読会に寄せられた連帯メッセージより

[朝鮮新報 2011.2.4]