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東京朝高第61回卒業式 「無償化」諦めない∞先輩たちの意を継ぐ

新たな希望と決意抱き

 全国の朝鮮高級学校卒業式が5〜6日、各地で行われた。「高校無償化」制度が適用されないまま、この日を迎えることになった。卒業生たちは、差別に対し、民族教育の正当性をアピールしてきたこれまでの経緯をあらためて胸に刻んだ。そして、学父母、教職員、在学生たちの祝福を受けながら、新しい希望と抱負を胸にそれぞれの道へと旅立った。各卒業式では朝鮮からの祝電の紹介、学事報告があり、卒業生たちに卒業証書および各賞状が手渡された。

首相あての要請文

笑顔で記念撮影に興じる卒業生たち

 6日、東京朝鮮文化会館で行われた東京朝鮮中高級学校高級部第61回卒業式では、菅直人首相にあてた要請文が読み上げられた。要請文は、朝鮮学校への「高校無償化」制度の即時適用を求める内容だった。高3の生徒たちは、この1年間たたかいを繰り広げてきたが、在学中に問題の解決を見ることができなかった。

 卒業生一同の思いを込めた要請文を朗読した朴寿姫さんは、高校生活最後の1年間を、学校で過ごす大切な時間を削って街頭に立ち、署名やビラ配りなどをしてきたと振り返り、運動が長期化するにつれあきらめかけたことが何度もあったが、「そのたびに来校されたり集会に参加された日本の方々に励まされた」と述べた。

 そして、「(朝鮮学校の生徒たちは)他の高校生と同じスタートラインに立ち、学びたい。同じ権利を持った人間として学びたい。そんな普通のことが、いつか朝鮮学校に通う生徒たちにとっても当たり前のことになるように、今回の『高校無償化』問題を解決する日まで、私たちは決してあきらめません」と力強く語った。要請文は、後日、菅直人首相に送付された。

 学事報告や卒業生の決意表明にも、「無償化」問題は言及された。卒業生を代表して決意表明をした朴志亨さんは、3年間の思い出を振り返りながら、とりわけ高3の1年間に繰り広げてきた「無償化」運動の過程を通じ、これは4.24教育闘争以来の在日同胞の民主主義的民族権利を擁護するたたかいの伝統であるということを思い知り、愛国と民族の代を継いでいくという、真の意味を胸に刻んだと述べた。そして、自分たちが追求してきた団結の力を自信に変え、力強く進んでいくと誓った。

母校での最後の公演

 一方、卒業式に参加した在学生たちは、今後も「無償化」の「当事者」として声を挙げていく決意を新たにした。彼らは、活動の先頭に立ってきた卒業生たちの姿を間近で見てきた。高2の姜光さんと林蓮華さんは、最も運動に尽力してきた卒業生たちが、「無償化」問題未解決のままで卒業していくことは、胸が痛いと口をそろえる。「これからは、先輩たちのように、先頭に立って運動を推し進めていく。同級生たちも同じ思いだ」(姜さん)。

 林さんは、「これは、私たちにとっても、次の世代にとってもとても重要な問題。卒業生たちの意志を継いで、後輩たちが堂々と学べるよう、権利獲得のために最後までたたかっていく」と決意を述べた。

 また、式には朝鮮の各学校、朝大をはじめとする各朝鮮学校のほか、朝鮮学校を支えてきた国会議員や日朝学術教育交流協会、「高校無償化」からの朝鮮学校排除に反対する連絡会をはじめ、日本の市民団体からの祝電が寄せられた。

父母たちの思い

 卒業式の後、中庭では卒業生たちが友人や家族、後輩たちと記念撮影に興じる中、例年とは異なった風景が見られた。数台のテレビカメラとインタビュアー、各新聞社の記者らが会場に駆けつけていた。マイクを向けられた卒業生たちは、「3月内に必ず適用してほしい」「後輩たちには、笑顔だけの卒業式を」と訴えていた。

 一方、「無償化」問題に取り組んできた「差別・排外主義に反対する連絡会」メンバーの三木譲さん(44)は、「『無償化』制度が今日まで適用されていないことが悔しい。日本に暮らすすべての子どもたちが安心して学べる環境を作れるよう、しっかりと応援していきたい」と話した。

 卒業生の学父母たちは、1年間、子どもたちがたたかい続けてきた姿を見てきた。「花仙さん(48、埼玉)は、息子の姿を見つめ、感慨無量だと笑顔を見せながら、「日本政府が言う『無償化』除外論は異常。息子をはじめ生徒たちが一生懸命署名活動などを行ってきた話も聞いている。子どもたちに関わることなのに、最後まで政治的な口実をつけて、適用しようとしないのは腹立たしい」と語った。(姜裕香)

[朝鮮新報 2011.3.9]