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同胞大学生らが同時行動 各地で「民族教育権」テーマに

「4.24」精神、受け継ぐ

 「高校無償化」からの朝鮮高級学校除外、地方行政による補助金凍結・削減など、日本当局による朝鮮学校への弾圧が強まる中、日本の大学で学ぶ同胞青年たちが在日朝鮮人の「学ぶ権利の保障」を幅広く呼びかける催しを関東、東海、近畿で行った。民族教育を取り巻く現在の状況は、朝鮮学校閉鎖を強行した1948年当時をほうふつさせるものであり、若い世代である在日朝鮮人3世、4世がかつて民族教育の権利を守り抜いた1世、2世の「4.24教育闘争」の精神を継承し行動すべきとの観点から、各地で行われた一連の催しは「4.24在日朝鮮学生全国同時行動」と名づけられた。

闘争の歴史を検証

大阪で行われたデモ行進

 「4.24近畿学生アクション〜63年後の教育闘争〜」が4月29日、大阪市中央区の大阪歴史博物館講堂で行われ、近畿地方の同胞学生ら約100人が参加した。

 東京朝鮮第2初級学校を描いたドキュメンタリー映画「朝鮮の子」(1954年制作)が上映されたあと、パネラーに龍谷大学法科大学院の金尚均教授と大阪大学大学院で在日朝鮮人史を研究している鄭祐宗さんを迎え、「教育闘争の歴史と現状」と題してパネルディスカッションが行われた。

 金尚均教授は、「高校無償化」からの除外や在特会からの攻撃に見られるような朝鮮学校への排除・攻撃の背景となっている日本社会の排外主義について分析し、「朝鮮学校を敵とみなし、敵だから平等に扱わなくてもいいという考えがある。人々は敵を作ることで安心感を得ている」と指摘、「戦前の歴史を正当化することで、排除を合理化している」と日本社会の歴史認識の問題に言及した。

 鄭祐宗さんは、在日朝鮮人の教育闘争の歴史を検証し民族教育を行う権利は民族自決権・民族自主権であると説明しながら、「私たちの教育闘争は、日本の『通達』『措置』『条件』に従ってその下で闘ってきたのではなく、それらをはねかえして民族教育を作り出してきたという自決権を守る闘いであった」と語った。

 集会の最後に甲南大学の高龍秀教授が登壇し、橋下大阪府知事が3月に朝鮮高級学校への補助金不支給を決めたことについて、具体的な金額を示しながら説明し、速やかな支給を求めるために、引き続き要請活動などを行うよう呼びかけた。

 集会後、参加者たちによるデモ行進が行われた。デモ隊は民族衣装をまとい民族楽器を奏でるプンムル隊を先頭に、大阪城公園から府庁周辺を行進し、「高校無償化」の朝鮮高校への適用、補助金の支給などを求めた。

もう一つの「故郷」

名古屋シンポジウムでのサムルノリ

 4.24民族教育シンポジウム「朝鮮学校から『日本』を問う」が4月24日、名古屋大学野依記念学術交流館で行われ、約80人が参加した。シンポジウムを主催したのは、今年3月、愛知の日本人・在日朝鮮人青年有志が新たに立ち上げたUSM(ウスム=ウリハッキョサポートネットメンバーズ)。

 まず、弁護士の李春熙さんが「無償化」除外問題をはじめとした朝鮮学校をめぐる状況について講演し、その不当性・不法性を訴えた。

 また、獨協大学非常勤講師の金泰植さんの司会によるパネルディスカッションでは、李春熙さんのほか愛知朝鮮高級学校教員の李佳也さん、USM共同代表の高原さつきさんが出演し、活発な意見交換と議論を展開した。李佳也さんは朝鮮学校の歴史について報告し、ウリハッキョという存在が在日朝鮮人にとって、単なる「学び舎」ではなく、人間としての尊厳を回復するもう一つの「故郷」であると訴えた。高原さつきさんは、USM発足の契機について報告するとともに、留学同東海が愛知県下の大学で実施した朝鮮学校の「無償化」除外問題に関する大学生アンケート調査の結果をうけ、「(朝鮮学校に対する)無関心、無知は、日本の排外主義を容認する空気をまん延させている大きな要因の一つ。朝鮮学校は、日本のあり方を映す鏡だと思う」と訴えた。

東京でのシンポジウム

 シンポジウムでは朝鮮学校生徒によるサムルノリ演奏が行われ、オモニ会会長の辛和美さんが「無償化」の即時適用をアピールした。また、1948年の朝鮮学校閉鎖令に端を発した教育闘争時、愛知の守山朝聨初級学校での弾圧と闘った「英愛ハルモニが、学校弾圧当時の自身が映った有名な写真をモチーフにした版画を背景に、ウリハッキョの大切さを強く訴え、参加者の感動を呼んだ。また、会場では南朝鮮出身の写真家、安世鴻さんによる「ウリハッキョ写真展」が行われた。

 4月22日には東京の中央大学駿河台記念館で「いま、民族教育を考える」と題されたシンポジウムが行われた。

 獨協大学非常勤講師の金泰植さんが、「在日朝鮮人にとって民族教育とは何か」のタイトルで基調報告を行った。一橋大学の大学院生、李杏理さんの司会によるパネルディスカッションには、金泰植さんのほかに一橋大学の鵜飼哲教授、神奈川オモニ会連絡会会長の孔連順さんが出演した。

[朝鮮新報 2011.5.9]