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朝鮮半島の平和構築 北南対話の提案と国際情勢の転換

「民族団結でイニシアチブを」

 朝鮮西海・延坪島での砲撃事件から約2カ月、一触即発の情況が急変し、朝鮮半島をめぐる新たな対話外交の機運が生まれている。朝鮮は年始から「平和」と「統一」に政策の照準を合わせ、北南関係改善に乗り出した。平壌発の対話攻勢が、情勢の転換局面をリードしている。

砲撃戦の波紋

外交通商部前で6者会談と北南対話の再開を求める南の市民団体メンバー(5日) [写真=統一ニュース]

 新年共同社説(1日)で北南関係の改善を呼びかけた朝鮮は、政府、政党、団体による連合声明(5日)を通じて南側に「幅広い対話と協議」を提案した。そして間髪を入れずに、当局会談のための実務接触、赤十字会談など対話のレベルと形式、開催日を明記した通知文を南側に送った。

 朝鮮の対話提案は、昨年11月の延坪島砲撃事件以降の情況変化を踏まえたものだ。南朝鮮軍の砲撃挑発に対して、人民軍は断固とした対応措置をとった。しかし紛争の拡大はなかった。むしろ悪化の一途を辿っていた朝鮮半島情勢が好転するという逆説的な事態が引き起こされた。

 米国のオバマ政権は、ひとたび紛争が起きれば全面戦争に突入しかねない朝鮮半島の不安定な停戦体制の現実を目の当たりにした。砲撃事件の後、「個人資格」で平壌を訪問した米国のリチャードソン州知事は朝鮮の外交・軍当局者と会談し、朝鮮半島の緊張緩和のための「包括的な措置」を論議した。

 一方、中国は砲撃事件の直後から、対話外交の再開を主張した。停戦協定を締結した当事国である中国と米国の間で、朝鮮半島問題が「共同の関心事」として浮上した。21世紀の新たな10年が始まる年の1月、ワシントンで行われた胡錦濤―オバマ会談(19日)でも、それが最重要テーマの一つとして設定されることになった。

中米首脳外交

平和と対話の必要性について話し合われた南の民間団体による討論会(12日) [写真=統一ニュース]

 朝鮮が新年早々、連合声明で行った対話提案は、南の政府、政党、団体に向けられたものだが、そこには大国も注目せざるを得ないメッセージが込められている。朝鮮は「対話と協議を通じて戦争の危険性を取り除こう」とアピールすることで、首脳外交を機に緊要な国際問題を議論する大国の動きを先取りし、難局打開の方向性を示した。

 朝鮮半島の安定維持を望む国際世論は、今後も高まるだろう。緊張緩和のための対話外交に関するコンセンサスが広がり、各国が対朝鮮政策のアプローチを変化させることも予想される。

 これまで「戦略的忍耐」の姿勢を貫き、朝鮮との対話を放棄してきたオバマ政権も例外ではない。軍事的圧力に重点を置く、従来の政策を修正するタイミングを図ることになるだろう。

 実際、米政府高官の言動に変化の兆しがあり、関係国の間では外交的駆け引きがすでに始まっている。今年に入り、日本の前原外相が朝・日直接対話に意欲を示し、朝鮮側が外相発言を肯定評価する論評を発表した。これらは、「紛争再発」と「戦争危機」が語られていた地域情勢の局面が変わりつつあることを示す動きだ。

 連合声明による北南対話の提案は、国際政治の舞台で対話外交が本格化する前になされた。それは、朝鮮が国家と民族全体の利益を最優先に考え、行動しているということを物語っている。朝鮮半島問題に関する中国や米国の意向がどのようなものであれ、他国の思惑によって事態が進展するのを朝鮮が傍観することはあり得ない。対話を提案した連合声明でも「(北南が)敵視し、対決すれば、滅びるのは民族であり、漁夫の利を得るのは外国勢力だ」との主張を展開している。

歴史の岐路で

 今後、「戦争と平和」をテーマに、対話外交が本格化すれば、朝鮮半島を取り巻く国際情勢は大きく動くだろう。北と南が民族の英知を結集し、共同で対処すべき重大局面を迎える可能性もある。

 オバマ政権は、6者会談の再開など今後の対応について、「南の立場を支持する」との見解を表明している。李明博政権が北との対話を忌避する姿勢を取り続け、米国がそれを擁護すれば、朝鮮半島の安定化に向けた国際的取り組みの障害になる。しかし、米国の「支持表明」が「同盟国」に対する「配慮」を示したものに過ぎないのであれば、南朝鮮当局は事態の進展から取り残されることになる。

 朝鮮半島の平和と安定に関する協議から南朝鮮当局が排除される状況は、58年前の構図をほうふつさせる。1953年当時、李承晩政権は「北進戦争」の継続を主張し、停戦協定には朝鮮と中国、米国の3者がサインした。

 中米首脳会談の直後、朝鮮は高位級軍事会談の開催を提案し、南側も受け入れた。

 今後の課題は、朝鮮半島の平和保障体制を構築することだ。そのプロセスから南が除外されることを朝鮮は望んでいない。北南当局会談を「無条件」に開催しようという提案も、朝鮮民族が歴史的な岐路に立っているとの観点からなされた。2011年初頭、朝鮮の政府、政党、団体は「平和と統一の新しい局面を切り開くための重大な問題を討議」したという。その結論に基づいて、連合声明は発表された。

 そこには、北と南が「民族大団結」を実現することで、朝鮮半島情勢に関するイニシアチブを握り、繁栄の時代を共につくっていこうという力強いメッセージが込められている。(金志永)

[朝鮮新報 2011.1.21]