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ライブでしか聴けない名曲 年に一度の「鴨緑江」


第31回朝大定期演奏会で演奏されたカンタータ−「鴨緑江」(写真は朝大提供)

 1977年12月、朝鮮大学校管弦楽団による管弦楽の演奏会が開かれた。在日同胞社会初のオーケストラコンサートで、とりわけ目玉のカンタータ「鴨緑江」は、今日まで多くの同胞に愛され歌われ続けてきた。

 「鴨緑江」は、長編叙事詩「白頭山」(趙基天作)の第6章から一部を抜粋して曲をつけたもの。しかし、朝鮮国内はもとより、日本でも「鴨緑江」を収録したCDなどはあまり知られていない。年に1度、唯一聴ける場が朝鮮大学校定期演奏会なのだ。

 昨年12月、東京・新宿で31回目の朝大定期演奏会が盛大に行われた。演奏会には、毎年多くの同胞が各地から訪れる。出演者は朝大在校生のほかに同楽団の卒業生たちもいる。

 第1楽章から4楽章にかけて奏でられる美しく迫力あるメロディーは、観客の琴線に触れる。悲痛とロマン、繊細と激動が一つに混ざり合った楽曲を聴くと「ドキドキして初恋をしたときのような気持ちになる」と感嘆の声を漏らす人も少なくない。

 朝大・文学歴史学部の金玄徳さん(3年生)は1年生の頃から合唱団の一員として毎年参加しており、今年は第3楽章はじめのソロを務めた。

 「(ソロ部分の)歌詞自体は民族の悲しみを歌っているが、2度と同じ歴史を繰り返さないという、朝大生としての決意を表現したかった。はじめは興味本位で参加したが、来年も必ず参加し、『鴨緑江』の魅力を披露したい」と話した。

 この日出演した金剛山歌劇団のトロンボーン奏者である権容志さん(21)も同楽団の卒業生だ。

 「この曲を演奏すると心の底から熱くなり、民族を感じられる。この伝統をこれからも守っていけるよう自分も力になっていきたい」

 「鴨緑江」について朝大・音楽科の崔振郁教授は、「曲中に描かれる、祖国解放に向けて戦う朝鮮人民革命軍の姿は、現在『高校無償化』問題など、自らの権利を得るために立ち向かう同胞たちの姿と重なる」と話す。「その精神が世代を超えて同胞たちに伝わっている。だから今も『鴨緑江』は多くの同胞の共感を呼ぶのだろう」。

 近年、演奏会の出演者は同楽団卒業生が主だが、応募すれば誰でも参加が可能だという。2011年演奏会の参加者たちは毎年秋ごろから練習に熱を込める。(尹梨奈)

[朝鮮新報 2011.2.23]