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目指すは「サッカー強国」、リーグ戦 特設班導入で新たな才能を

 【平壌発=鄭茂憲】今年行われる二つのカテゴリー別ワールドカップ(W杯)に朝鮮代表が出場する。17歳以下と20歳以下の朝鮮代表は昨年のアジア大会で優勝し、アジア王者として世界に挑む。昨年開催されたドイツW杯にA代表が44年ぶりに出場したことは記憶に新しいが、国内では早くも2014年大会出場に向けて、どのようにアジア予選を勝ち抜くのかに関心が集まっている。

「W杯戦士」に注目

国家的措置によって有望なサッカー選手が育っている(写真は大同江区域青少年体育学校での練習風景 [朝鮮中央通信=朝鮮通信]

 2010年から朝鮮サッカー界に、年間を通じたリーグ戦が導入された。代表チームに多くの選手を輩出している4.25体育団をはじめ、平壌市体育団、鯉明水体育団、小白水体育団など国内名門チームがしのぎを削る「最上級リーグ」を頂点にして、その下に1部から4部までの、計5つのリーグが同時開催されている。年間成績によってリーグの昇降格があるため、どのチームも「最上級リーグ」への昇格を目指し、これまで以上に激しい試合を展開している。

 リーグ戦は、新たな才能の発掘の場にもなっている。出場チーム数、試合数が飛躍的に伸びたため、それまで目立たなかったチームや選手が開花する機会が増え、国家代表選手を選出するためのスカウティングが活発化した。

 激しい応酬が続くリーグ戦導入以降、サッカー人気上昇にも拍車がかかっている。国内のサッカー事情に詳しいスポーツ記者によると、その大きな要因の一つとなっているのが、2010年のW杯に出場した代表選手らが国内リーグに戻ったことだ。

 朝鮮では他国と違い、国家代表に選出されると、所属チームを離れて代表チームとしてのプレーだけに専念することになる。選手たちは代表チームで共に汗を流す時間が長いため、チームバランスや団結力が高いとも言われている。

 一旦代表チームに選出されると、国内リーグなどの公式戦には出場しなくなる。そのため、今まで代表戦には注目が集まるが、国内リーグは関心度が低いという構図が少なからずあった。

 現在は「W杯戦士たち」が出場する試合というプレミアがつくようになった。

 代表チームの中盤の要だったムン・イングク選手(4.25)、W杯のブラジル戦でゴールを決めたチ・ユンナム選手(4.25)らが所属チームに戻りプレーしている。今年3月末から4月にかけて行われた今期2クルー目の「最上級リーグ」で最優秀選手に輝いたのも、「W杯戦士」の一人、キム・ヨンジュン選手(平壌市)だった。

 「W杯を経験した彼らのプレーはレベルが高く、それが他の選手たちにもいい刺激を与えており、試合のレベルを格段に高めている」(前述のスポーツ記者)。

「サッカー強国」は国策

昨年から活発に行われている国内リーグ戦(写真は今年3月)

 毎年元日に発表される3紙共同社説。今年は例年にはないフレーズが注目を集めた。朝鮮を「サッカー強国、スポーツ強国」にするというものだ。

 一年の政策方針を反映する共同社説に、それもスポーツの一競技であるサッカーだけに言及したことは異例だといえる。それほどサッカーを、国家レベルで重視しているということだ。

 共同社説で示された課題を遂行するためのプログラムの一つが、サッカー特設班だ。今年から導入されたこの特設班は、全国の小・中学校にサッカーの専門クラスを設け、選手育成のすそ野を飛躍的に広げる試みだ。

 関係者の話によると、2012年に「強盛大国の大門を開く」とした国家政策において、スポーツも例外ではなく、特に人気の高いサッカーを、いち早く世界で戦える分野に育て上げることが求められている、とその背景を話す。

 一方、3月27日付の労働新聞には「最近の世界サッカー技術発展のすう勢」と題した記事が掲載され、市民たちの注目を集めた。

 筆者は、国内最高のサッカー解説者で、体育科学院教授、博士のリ・ドンギュ氏。記事では、2010年W杯出場チームのデータを示しながら、若手選手育成の重要性や中盤での数的優位を確保しながら攻守の切り替えの速度をいかに上げるか、など具体的な記述がなされている。

 44年ぶりのW杯に出場した朝鮮代表チームがポルトガルに0−7で大敗したことは、サッカーファンのみならず、それまでサッカーに関心が薄かった女性たちにも「悔しい記憶」として刻まれている。それだけに2014年にもう一度、世界の舞台に立ち、あの借りを返してほしいという願いが、サッカー熱に拍車をかけているもう一つの要因とも言える。

 朝鮮サッカーの実力を世界でどのように発揮するか−この答えの一端が垣間見られるのが、7月末からコロンビアで開催されるU−20W杯だ。今回、アジア王者として臨む20歳以下代表チームに、熱い視線が注がれている。

[朝鮮新報 2011.5.18]