sinboj_hedline.gif (1986 バイト)

特集//’98展望――どうなる朝鮮半島


 今年、朝鮮半島情勢は大きく変化することが予想される。共和国では昨年10月、金正日党総書記の推戴があったが、今年は国家主席への推戴もありうるだろう。また、南朝鮮では2月25日に金大中新「大統領」の就任がある。南当局者が共和国への対決姿勢を変えれば南北対話の再開も期待される。朝・日国交正常化交渉は早い時期に再開され、日本が過去を心から反省し共和国に対する敵視政策を止めれば非正常な朝・日関係も改善に向かうだろう。朝米関係は朝米基本合意文に沿って順調に発展するだろう。そのためにも米国が対朝鮮政策を基本的に転換する必要がある。今年の朝鮮半島情勢を展望する。

 

■金正日時代の共和国■

局面打開へ積極政策

 昨年10月8日、金正日書記が朝鮮労働党総書記に公式に推戴され、文字どおり金正日時代がスタートした。今年は国家主席への推戴が予想され、そうなれば総書記が名実ともに党、国家、軍のトップにつく。
 また、4月15日には昨年7月8日に制定された太陽節(金日成主席の誕生日)を初めて迎え、9月9日には共和国創建50周年を迎える。

 共和国では3年連続の自然災害や社会主義体制瓦解を狙う国際的な圧力が強まる中、ここ数年かつてない困難な状況下で社会主義建設を行っているが、労働新聞、朝鮮人民軍両紙の共同社説は、「苦難の行軍」の困難な峠を成果裏に克服したと指摘した。

 金正日時代が文字どおりスタートを切ったことで、局面打開へ向け、今までにも増して積極的な政策がとられよう。

 まず、社会主義を固守しながら、食糧問題やエネルギー問題を解決し、人民生活を向上させるための具体的対策が今後も講じられるだろう。

 また、総書記が7月13日付で在米僑胞記者に送った書簡、8月4日に発表した労作「偉大な領袖金日成同志の祖国統一遺訓を徹底的に貫徹しよう」で示したとおり、朝米関係は基本合意文に基づき良い方向に進むだろう。国交正常化交渉も再開され、朝・日関係の改善では大きな転換の年になるかもしれない。南北関係も対話再開に向けて何らかの進展が望まれる。

 こうした動きは朝鮮半島の緊張緩和、平和軍縮へとつながり、経済面の難局打開にも好作用を及ぼそう。祖国をより富強にしようとの朝鮮人民の熱意は高く、「必ず驚異的な現実をもたらす」(金正日総書記)ために、今年も全力が注がれよう。

 

■朝米関係■

必要な経済制裁緩和

 朝米は現在、94年10月21日にジュネーブで調印された基本合意文に沿って、関係改善に向けて進んでいる。この合意は大きく分けて、米国が共和国に提供する軽水炉建設と、両国の政治・経済関係の正常化という2つの分野から構成されている。

 核心部分の軽水炉は昨年8月、2003年の完成に向け咸鏡南道琴湖地区で着工し、夏の本格的工事開始に向け進んでいる。

 そのため関係改善を図る鍵としてクローズアップされるのが、対北経済規制の緩和だ。共和国は95年1月、基本合意の公約どおり米国に対する一切の経済障壁を撤廃。米国も同月、マグネサイト輸入許可など4項目の規制措置を緩和し、96年4月に人道的物資援助の制限を解除したが、これらは一部にすぎない。

 昨年12月、米財務省外国資産監理局は、共和国の在米資産を管理する法人や機関に対し、今年3月9日までに管理資産内容を米政府に報告するよう通達。今後、対共和国債権及び凍結共和国財産規模把握⇒共和国側との清算交渉進行⇒資産凍結問題の完全な解決という手順が予想される。

 ちなみに米国とベトナム間の場合、米国によるベトナムへの凍結資産解除が、国交正常化への一つのシグナルとして示された。米国は94年2月、ベトナムへの経済制裁完全解除を発表、95年1月には凍結資産解除のための清算協定を締結し、その6ヵ月後の7月に国交を正常化した。

 また、米議員や元政府高官などの往来は昨年以上に活発になり、とくにカーター元米大統領の訪朝がいつになるかが注目される。こうした信頼の積み重ねによって、合意書に明記された相互首都への連絡事務所設置も日程に上ってこよう。

 一方、双方の信頼醸成の場となっている米兵遺骨発掘共同作業は、昨年には計3回、平安北道で行われたが、今年は平安北道と平安南道の2ヵ所で計5回行うことで合意している。

 

■4者会談と新平和保障体制■

米国の対朝鮮政策如何に

 朝鮮半島の「恒久的平和協定を実現する過程を始めるためのもの」としてクリントン・金泳三会談を通じて96年4月に提案された、共和国と米国、南朝鮮、中国による4者会談が昨年12月9、10の両日、ジュネーブで開催された。

 実質的な合意はなかったが、3月16日からジュネーブで第2回会談を、それに先立つ2月中旬に北京で実務協議を開くことで合意した。

 会談終了後の12月12日、共和国外交部スポークスマンは「朝鮮半島で対決状態を根源から清算するための基本的なカギは、米国の軍事的干渉を終わらせることであり、その方途は朝米間で平和協定を結び、南朝鮮から米軍を撤収させること」だとして、これが4者会談を通じて解決しようとする基本問題の1つであると言明した。

 共和国側首席代表を務めた金桂寛外交部副部長も会談で、平和保障体制の樹立には朝米間の平和協定の締結が必要だと主張している。つまり、共和国の主張する平和保障システム樹立の問題が解決すれば、他のすべての問題もスムーズに解決されていこう。

 また、長きにわたる交戦双方と関係側が1つのテーブルに着いた4者会談の成功如何は、各側の地位の平等性と信頼の雰囲気がどれだけ保障されるかにかかっている。

 米国が、共和国との敵対関係を規定した冷戦時代の遺物である経済制裁を緩和することは、4者会談で信頼と政治的雰囲気を醸成するうえで必ず必要である。

 今後開かれる4者会談が成功するか否かは、全的に米国の対朝鮮政策がどうなるかと、朝米平和協定と米軍撤収問題が議題にのぼるかにかかっていると言える。

 

■朝・日国交正常化交渉■

原点に戻ってこそ進展

 昨年11月、日本の連立3与党代表団が訪朝し、朝鮮労働党との会談で朝・日国交正常化交渉の早期再開を強く促すことで合意した。

 そして小渕外相は昨年12月16日の閣議後の会見で「年内は難しくて、来年早々の極めて早い時期に両国の協議を持ちたい」と述べており、春までには第9回会談が開かれよう。共和国は12月の再開を求めていた。

 朝・日交渉は91年1月に第1回が開かれ、92年11月の第8回以来中断していたが、再開されれば約5年ぶりとなる。

 第9回と10回は平壌か東京のどちらかで開かれ、11回からは第3国が予想される。(3回から8回までは北京)

 交渉は、8回までの積み重ねがあるので、一度始まると具体的かつ集中的な協議が行われるだろう。

 だが、あれこれの前提条件を出して第8回で決裂した教訓を生かせなければ進展はむずかしい。それは、日本が自主的で独自の立場をとれるかどうかにかかっている。

 朝・日交渉は、1990年9月の3党共同宣言を機に開かれたが、交渉の核となるのは日本が過去、朝鮮半島に及ぼした人的、物的被害に対し、謝罪と補償をすることである。金正日総書記は「日本と善隣友好を樹立しようとの立場は変わらない」(97年7月13日)と明言している。

 20世紀初に日本が朝鮮を植民地にしたことで始まった朝・日の不正常な関係を日本が本気で今世紀中に解決しようとするならば何よりも過去の謝罪、補償という交渉の原点に戻ることが必要だ。

 また、在朝日本人配偶者故郷訪問団の第2陣も1月中旬には実施される予定だ。こうした動きは、関係正常化への機運を高めるのに良い作用となろう。

 

■南北対話■

南の対北政策転換がカギ

 南朝鮮では昨年12月18日、第15代「大統領」選挙が行われ、野党・国民会議の金大中が次期「大統領」に選出された。2月25日に新「政権」が発足する。共和国では昨年10月、金正日総書記が推戴されており、南で新「政権」が発足する今年、南北関係改善の問題は大きな焦点となってくる。南北関係を不信と対決から信頼と和解へと転換させることで、祖国統一の新たな突破口が開かれる。

 金正日総書記は昨年8月4日に発表した著作「偉大な領袖金日成同志の祖国統一遺訓を徹底的に貫徹しよう」で、南北間に和解ではなく対決を激化させ、平和ではなく戦争の危険を色濃くさせた現「政権」に対し、南北関係を近年にない最悪の状態に追いやったのは、現当局が犯した絶対に許せない反統一的、売国・反民族的犯罪行為だと非難した。

 その一方、南当局者が反民族・反統一政策を捨て、実際の行動で肯定的な変化を見せるならば、彼らといつでも会って民族の運命問題を協議し、統一のためにともに努力するだろうと述べた。新「政権」の行動如何によっては対話の用意があることを示唆するものだ。

 北がすでに投げた対話のボールを、南が外勢依存・同族対決というボールで返すのか、あるいは反北対決政策から民族自主の立場に立った連北和解政策への転換というボールを返すのか。南北関係は南の新「政権」がどう動くかにかかっている。そのためには、外国との合同軍事演習の中止など軍事的対決状態の解消や、社会・政治生活の民主化、とくに南の統一愛国勢力を弾圧する反統一悪法である「国家保安法」の撤廃など、自主的平和統一を阻害する諸問題の解決が必要だ。

 カーター元米大統領の訪朝などがあれば、南北対話再開に向けた新たな動きも期待できよう。