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NHK青春メッセージ98/審査員特別賞受賞作品

アンニョンハシムニカ、話し合いが喜びに 大阪朝高2年金倫朱さん


 15日の「NHK青春メッセージ98」で審査員特別賞を受賞した、大阪朝鮮高級学校2年の金倫朱さんのメッセージ「アンニョンハシムニカ、話し合いが喜びに」の内容を紹介する。

◇◇

 アンニョンハシムニカ。

 私は、大阪朝鮮高級学校の2年生です。

 皆さんは朝鮮学校について、どのくらいご存じでしょうか。

 両親は私が朝鮮人として、民族の誇りをしっかり持てるようにと、母国語による教育を勧めてくれました。小、中、高校と朝鮮学校で学んできたので、日本の学生たちと接する機会がほとんどありませんでした。でも、日本の学生と話してみたいという気持ちをいつも持っていました。

 そういうわけで中学校まで部活では、朝鮮舞踊を習っていたのですが、高校では陸上部に入ることにしました。陸上なら様々な大会で日本の学生と出会う機会が多いと思ったからです。

 初めは、大会で日本の学生と一緒になってもなかなか話しかけられませんでした。でも、スタートラインに立った時の緊張感は朝鮮も日本もありません。自然と「緊張するね」とか「早く終わればいいのに」と声をかけ合うようになってきました。そうした一言がきっかけで仲良くなって、いろんな話をすることができました。

 日本の学生と話していてまず感じたことは、ほとんどの人が在日朝鮮人のことをあまり知っていないということでした。「日本語うまいね」と聞かされたりすると、日本で生まれ育ち、学校の授業以外ではすべて日本語で過ごしているので、妙な感じがします。ほかにも、「どうして日本に来たの?」とか「授業って何語でするの?」とか…

 そんな質問に答えた後、いつも私が決まって話すことがあります。それは、大学受験の時、日本の高校生以上に高いハードルを越えなければならないということです。

 朝鮮高校は各種学校と見なされ、国立大学の受験を文部省が認めていません。だから大学を受験するためには、大学入学資格検定試験に合格しなければなりません。ですが、その大検さえ、朝鮮学校卒業では受けることができないのです。だから、学校に通いながら、もう1つ別の通信制高校に通わなければなりません。そのうえ、予備校に通うことも考えると、部活をやっている時間はほとんどありません。やりたくてもどうしても無理だと泣き泣き諦める友達もたくさんいます。こんなことを日本の友達に話すと、「そんなことがあるの? ひどいよ。同じ高校生なのに…」と言います。そして、自分たちも応援するから一緒にがんばろうと励ましてくれたりします。

 こんな何気ない会話から発展して、話し合うことにより、民族の違いを越えて、同世代の若者として互いに通じ合い、意気投合することもあります。

 私も部活をやりながら、何度かやめようかと悩んだりもしましたが、今では続けてきて良かったと心から思っています。

 私の夢はスチュワーデスになることですが、そのために母国語である朝鮮語はもちろん、日本語も英語もしっかり勉強し、大学では他の外国語も学んで、世界の多くの人たちと話すことができる様になりたいと思っています。

 話し合うことがどんなに楽しく、生きる喜びにつながるかを私は身をもって感じています。

 これからも、いろんな人たちとの出会いを大切にし、もっとたくさんの話し合いをしていきたいと思います。