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東京で在日同胞の民族性を守るための会議


 「在日同胞の民族性を守るための会議」が22日、東京・千代田区のアルカディア市ヶ谷で行われ、各界各層の同胞ら250余人が参加した。同会議は、民族性が次第に薄れて行く在日同胞社会に警鐘を鳴らし、その防止策を話し合おうと、同胞知識人ら10人が発起人となって開かれた。会議では、基調報告と意見提起、質疑応答の後、在日同胞への呼びかけ文と、故国の同胞への呼びかけ文が、それぞれ採択された。発起人は、金桂昊(牧師)、李時求(物理学博士)、李殷直(作家)、文道平(工学博士・大学教授)、朴永守(反戦反核運動家)、朴鐘鳴(関西学院大学講師)、成律子(作家)、崔哲教(人権運動家)、韓桂玉(法学博士・大学教授)、黄甲性(評論家)の各氏。

 

精神、文化伝統の継承を/自らの尊厳に関わる問題

 物理学博士の李時求氏が基調報告をし、今や国際的にも民族性の固守・尊重が時代の潮流となっているが、かつて日帝時代の民族抹殺政策、解放後の同化政策、棄民政策の中でも民族性を守り抜いてきたにもかかわらず、在日同胞社会では日本人に帰化する同胞の数が年間に1万人を越え、同胞同士で結婚する人の数も3割に過ぎないのが現実だと指摘。放置すれば、在日同胞社会そのものが消滅しかねないとの警戒感を表した。

 要因は、世代交代もあるが、日本当局の同化政策と民族内部の棄民政策がより大きいとの認識を示し、@民族教育などを通し民族の精神と文化伝統を伝承すること A民族性の発揚を阻害するあらゆる現象に反対することが重要だと強調した。

 意見提起を行ったのは、朴鐘鳴(関西学院大学講師)、鄭敬模(評論家)、崔哲教(人権運動家)、金昌宣(雑誌編集長)、韓桂玉(法学博士、大学教授)、李殷直(作家)、「鐘石(東北大学助教授)、魯且分(結婚相談所副所長)の各氏。

 それぞれ、「民族性固守と関連したいくつかの問題」、「同胞の民族性固守に関する歴史的考察」、「在日同胞の中で民族を守るために」、「『参政権』運動に対する私見」、「民族性を固守するための運動を全同胞的に」、「在日同胞の民族教育史」、「次世代への民族教育に関する提言」、「在日同胞の民族の代を継ぐために」と題して発言した。(発言要旨は別項)

 

●意見提起から●

 

国際化時代の潮流/朴鐘鳴(関西学院大学講師)

 自分と他者との違いを認め、互いに尊重し合うことが国際化時代の潮流。民族性を失っては、こうした関係は築けない。民族性を持ち、他者との間に平等な関係を結ぶことは人間としての当然の権利であり、これを守ることはすなわち、自らの尊厳を守ることだ。

 

民族捨てる悲劇見た/鄭敬模(評論家)

 日帝の植民地統治時代、多くの民族主義者がその支配の前に屈服し、民族を捨て、親日派に変節する悲劇を多く見てきた。一方、最近の日本社会では、外国での民族紛争などとからめて民族主義を危険視し、脱民族を良いものとする風潮、喜劇を見ることができる。

 

「参政権」は棄民の完結編/崔哲教(人権運動家)

  「参政権」運動は、日本の同化・帰化政策と表裏一体、南側政府の棄民政策の完結編だ。民族性を守ることは、在日同胞全体が価値ある人生を生きられるかどうかに関わる問題だ。民団幹部と民団同胞は、「参政権」運動を即刻やめ、ともに民族文化運動を繰り広げよう。

 

民族権利擁護が原点/金昌宣(雑誌編集長)

 在日朝鮮人の人権問題とは、日本で朝鮮人として生きていく権利の問題だ。なぜなら日本での私たちに対する人権侵害は、朝鮮人として生きることを否定するものに他ならないからだ。「参政権」問題は、そういった原点を見失ったものと言える。

 

環境作る社会的運動を/韓桂玉(法学博士、大学教授)

 人間は社会的な存在だ。朝鮮人が朝鮮人として育つにも、相応の環境が必要で家庭の役割が最も重要だ。民族性を守る運動では、父母に家庭での民族教育の重要性を認識させること、若い同胞同士が出会い、つながりを持てる環境を作って行くことが必要だ。

 

教育守ることが基本/李殷直(作家)

 解放直後、民族教育はまたたく間に日本各地に広がった。そして、あらゆる弾圧を耐え抜いてきた。これは、世界に例を見ない輝かしい成果だと言える。今、民族性を守ることが緊急の課題になる中で、民族教育こそはその基本であり、徹底して守らねばならない。

 

目的意識持ってこそ/「鐘石(東北大学助教授)

 高校まで日本学校で過ごした私は、朝鮮大学校で民族教育を受けて初めて、真の心の自由を得た。それは今の研究生活でも、自由な発想の源になっている。民族性の確立はすなわち自己の確立だ。日本においてそれは、自然に発生するものでなく目的意識が必要だ。

 

同胞結婚への要望高い/魯且分(結婚相談所副所長)

 同化・帰化政策や棄民政策の中で国際結婚が極端に増加してきたことは、帰化の促進のみならず、同胞子女の減少など同胞社会の構造的な問題にまで発展している。しかし実際には、同胞との結婚を願う声は今も多い。それを成就させる環境を作ることが急務だ。