時事・解説/朝米関係の現状
朝米基本合意文が調印されてから21日で4年が経つ。この間、共和国は黒鉛減速炉の凍結、経済制裁の全面緩和など合意内容を誠実に履行してきた。だが、米国側は重油提供を遅らせ経済制裁の全面緩和措置をいっこうに講じないなど、不誠実に対応している。そうした中、8月21日から9月5日までニューヨークで朝米高位級会談が行われた。米国は合意文を履行することを公約し、共和国に対する人道的協力措置を引き続き講じることも保証した。会談で双方は、4者会談とミサイル協議の再開などの懸案問題について、一括妥結方式で合意した。8月31日の共和国の人工衛星打ち上げと関連し日本は対北敵視政策の強硬姿勢を貫いたが、朝米は逆に会談を通じて関係改善を加速させ、合意文履行と懸案問題解決の道筋を作り上げた。
基本合意文
KEDO枠組み、経済制裁緩和も公約/理事国が重要性確認
米国の基本合意文不履行問題を解決するために開催された今回の朝米高位級会談で、米国は合意文履行を公約した。具体的には、昨年8月に基礎工事が始まった軽水炉建設の本格工事に11月から着手する。黒鉛減速炉などの凍結に伴い、2003年までに100万キロワットの軽水炉2基を共和国に提供することは合意文にはっきりと記されている。軽水炉が完成されるまでの代用エネルギーとして共和国に年間50万トン提供するとした、97年分の重油(同年11月〜98年10月)を今年末までに納入するとした。
軽水炉建設、重油納入を担当する朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)理事国である米国、日本、南朝鮮も、9月24日のニューヨークでの3国外相会談で、KEDOの枠組みについて「維持する重要性を確認」(日本経済新聞9月25日付)した。ちなみに共和国が4月以降、一時中断していた使用済み燃料棒の密封作業について、米政府は「9月22日から作業を再開していることを確認」(ワシントン発9月23日時事)している。
また今回の朝米会談で米国は、基本合意文に明記された対北経済制裁緩和についても、共和国を「テロ支援国リスト」から削除する協議を開き制裁撤回につなげるとした。共和国との協議は9月28日、ワシントンで始まった。「テロ支援国リスト」から共和国が削除されると、米国の対北禁輸の法的根拠となっている対敵性国貿易法と輸出管理法による制裁措置が緩和され、輸出が拡大される。
つまり米国は、軽水炉建設と重油納入について責任を持って実施し、さらに制裁措置を緩和するなど、朝米基本合意文を維持していくことを再確認した。
双方懸案問題
4者会談、ミサイル協議再開/一括妥結で解決目指す
朝米会談で双方は、懸案問題についても討議し、4者会談、ミサイル協議の再開について一括妥結形式で解決していくことで合意した。米国が共和国に対する人道的協力として30万トンの食糧提供を決定(9月21日)した直後の25日、4者会談のための実務レベル会合が中国国連代表部で開かれた。会合では、第3回本会談の具体的な日取りや進行方法などが話し合われた。関係筋によると「本会談は10月20日になる可能性が高い」(読売新聞9月25日付)。
4者会談は、昨年12月の第1回会談に続いて3月に第2回会談がジュネーブで開催されたが、米国が米軍撤退など共和国の代案を話し合うことすら拒否したため、次回の日程も決められず決裂した。ミサイル協議は1、2日、ニューヨークで行われる。同協議は96年4月にベルリンで、97年6月にニューヨークで計2回行われたが、具体的な成果はなかった。
共和国のミサイル開発は、朝鮮人民の「自主権、生存権に関する問題」(6月16日発朝鮮中央通信)だ。同通信は、ミサイルの開発中止問題について、朝米間に平和協定が締結され、共和国に対する米国の軍事的脅威が完全に除去された後にこそ上程、討議される問題であると強調し、米国がまず平和協定締結に応じるよう主張した。さらに米国が本当にミサイル輸出を阻止したければ、1日も早く経済制裁を解除し、ミサイル輸出中止に伴う経済的補償を行うべきだと主張した。
一方、共和国は朝米会談で、米国側が「疑惑」を提起して「秘密地下核施設」と言っている対象が民需対象であることが判明した場合、共和国を中傷、冒とくし、名誉を傷つけたことに対する補償があるという前提のもとで、この問題を今後の協議で解決するとした。米国は寧辺周辺に「秘密地下核施設」があると言っているが、それは「民需用地下構造物」(労働新聞9月19日付)だ。共和国は、8月末までの朝米会談で、「地下施設の査察受け入れの用意があることを表明」(朝日新聞9月1日付)している。この問題に関する協議は10月下旬から11月上旬に行われる予定で、「疑惑」の対象が軍需用ではなく民需用であることが証明されれば、米国は共和国の名誉を傷つけたことに対して補償を行うことになる。