老人保健施設ハーモニー共和(大阪・生野区)オープンから1ヵ月
朝鮮語で対応、料理も配慮/家庭・社会復帰目指す
医療法人同友会・共和病院の老人保健施設ハーモニー共和(大阪・生野区)が9月1日にオープンしてから1ヵ月が過ぎた。25日現在、38人が入所しており、すでに約80人の入所が決まっている。利用者や家族からは「言葉が通じ、朝鮮料理も出るので落ち着く」「家庭的な雰囲気が心地良い」「こんなに立派な施設なら安心して任せられる」など、喜びの声が聞かれる。
老人保健施設とは、病気の治療よりむしろ介護や看護、リハビリを必要とする高齢者が、施設での生活を通じて家庭への復帰を目指すための施設。利用者は、入浴や排泄などの生活の手助け、リハビリや診察、投薬などの医療ケアが受けられ、レクリエーションなども楽しむ。性格的には病院と家庭の中間に位置づけられ、老人ホームのような終身型生活施設とも異なる。
在日同胞社会でも高齢化が進む中、高まる同胞らの要望に応え、共和病院ではかねてから設置準備を進めてきた。
ハーモニー共和では、リハビリ、看護、介護を必要とする70歳以上の高齢者、または身障者手帳1、2級を持つ65歳以上の高齢者を対象に @入所サービス(定員95。3〜6ヵ月ほど) Aショートステイ(定員5。2週間以内が目安) Bデイケア(定員36)――の3種類のサービスを提供。ケアワーカー28人と看護婦8人、医師、理学療法士、栄養士各1人、カウンセラー2人などが常時対応する。
敷地面積2528.91平方メートル、延べ建坪4337.6平方メートルの鉄筋コンクリート4階建て。木材を多用した暖かみのある内装と緑溢れる庭が特徴だ。ミニ農園もある。
3ヵ月の入所サービスを受けている金性松さん(83)は、家族はいるが、入所するまで1人暮らしをしていた。体調をくずして7ヵ月ほど入院したこともあり、退院後は1人で食事の準備や入浴ができず、家族の勧めで入所した。
「介護者はみな優しく、家族のようだ。施設内では朝鮮の歌が流れたり、食堂でも朝鮮料理が出るので自然と気持ちが落ち着く。言葉も通じ、何より友達がたくさんできて嬉しい」と金さんは話す。利用者の約8割が同胞で、生まれ育った故郷の思い出話に花を咲かせることもしばしばだ。
副施設長で療養科長の鄭富士枝さんは「病気がメインでない利用者の家庭・社会復帰のために、ここでの生活を楽しむことで精神的・肉体的に新しい力を盛り返せるようサービスの充実を図っている」と語る。
とくに、日本の施設では、言葉がうまく通じなかったり、食事が合わないことも多い同胞高齢者特有の民族的な風習や習慣を考慮し、レクリエーションや食生活の面で民族的なものを多く取り入れている。地域の人を交えたイベントなども企画している。14日には「敬老会」を開き、利用者に大変喜ばれた。
ケアワーカーの朴用浩さん(27、大阪朝高卒)は、常に利用者に生活を楽しんでもらうことを心がけている。「利用者には寝たきりだったり近所付き合いのなかった人が多く、その過程で人と触れ合う楽しさを忘れてしまっている。楽しいと思うからこそ元気が出て、生き甲斐も感じるはずだ。施設での生活が利用者の大きな楽しみになるよう、常に利用者のニーズを把握し、ケアの改善に努めていきたい」と話していた。
問い合わせはハーモニー共和。TEL 06−755−0001。