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民族性を思い切り表現/第31回在日朝鮮学生中央芸術競演大会(大阪)


 共和国創建50周年記念第31回在日朝鮮学生中央芸術競演大会(1〜2日、大阪)は、朝鮮学校での文化芸術教育の成果が発揮される場であるのはもちろん、各地の中・高級学校で芸術系クラブに参加する生徒たちにとっては1年間のクラブ活動の集大成で、青春の1ページに刻まれる一大イベントでもある。また、参加する生徒はほとんどが3、4世。彼、彼女らが踊りや歌、チャンダンのリズムなどを通して民族性を思い切り表現する真剣かつ自然な表情は、民族教育のあり方そのものを表していると言える。審査結果に関する講評内容と、参加した学生らの横顔を紹介する。(賢)

 

下関初中 吹奏楽部

「ピカイチ」の演奏、団結力で支える

 初日、洋楽器合奏の審査。課題曲「万年豊作の祖国を世界に誇る」では、弾むように軽やかな演奏で秋の実りへの喜びを表現し、自由曲「吹奏楽のための舟唄」では、波間のうねりをイメージさせる。そんな下関初中吹奏楽部の演奏には、会場から「ピカイチだ」とする声があちこちで聞かれた。

 結果は金賞。部員らにとって最大の目標だと言う優秀作品発表公演でも、「舟唄」は大喝采を浴びた。

 昨年は銀賞(金賞は該当校なし)だったが、ここ数年はつねに最も高い評価を受けてきただけに、学校での期待も大きい。ただ「それはそれで誇らしいが、その時々の演奏を大事にする気持ちの方が強い」と、主将の陳世宗さん(中3)は話す。そして良い演奏の条件は団結だという。

 同部の呉栄哲指導教員(34)は、「成績が良いことがサークルの魅力なのではなく、魅力あるサークルから良い結果が生まれるのだと思う。練習を通し、部員らが互いを思いやる気持ちなどを学んでくれれば、演奏にも生きてくるはず」と語る。

 大会で喝采を浴びた好演奏も、「これまで皆で団結してきたことの証し」(陳さん)と言えるだろう。

 

北陸初中中級部

朝鮮繰り返し楽しさ覚える

 北陸初中は今回、女子のカヤグム併唱で金賞、男子の民族打楽器重奏で銅賞を受賞した。学校あげての努力が実ったのだ。というのも、この2種目に中級部の全生徒が参加したからだ。

 女子は、3年前からカヤグム併唱で中央大会に連続出場。これまで銅、銀、銀だったが、ついに念願の金賞を獲得。優秀作品発表公演にも出演した。

 一方、全員がサッカー部とかけ持ちという男子は、芸術競演大会には一昨年から挑戦。今年初めて地方予選を通過した。ちなみに同校では、体育・芸術部門を通じ、男子だけのサークルが中央大会に出場するのは今回が初めてという。

 今年の活躍について、生徒らは揃って2つの理由を上げる。1つは演奏が以前より楽しくなったこと。

 「覚えたことを繰り返すだけでなく、演奏に気持ちが乗るようになった」(金妙姫さん・中3)。そして「夏に祖国から来た先生の講習を受けたこと。適格なアドバイスに自信も増した」(金在徹さん・同)。

 姜公佑教員(27)は生徒らのこうした言葉に、「挑戦を繰り返す中で、生徒らに舞台度胸がつき生活にも張りが出た。それがあってこその楽しさや自信だと思う」と付け加えた。

 

神戸朝高舞踊部

「魂をどう表現」に皆の気持ちを集中

 金賞に輝いた群舞の作品の題は「ノッ」(魂)。今、在日同胞の新しい世代に民族の魂、心を伝えている民族教育が、いかにして守られ、受け継がれてきたかを見せる内容だ。

 主将の李美恵さん(高3)は独舞でも金賞をとったが、群舞では「皆で事前に歴史を勉強して、民族教育を守ってきた同胞らの気持ちや、私たちが今、こうして民族の心を持って生きられることの意味を知ろうと努めた。そこで感じたことを、舞台で思い切り表現できたことがとくに嬉しい」と話す。

 今年は群舞の練習に入るのが遅れ、焦りに負けずに皆が一つにまとまれるかどうかが勝負だった。その難しい状況を、「民族の魂」をどう表現するかの1点に皆の気持ちが集まったことで乗り切れたという。

 「金賞をとったことも嬉しいけれど、この過程に経験したことを大事にしたい」と話すのは2年生の金智華さんだ。

 「先輩と後輩、友だち同士、そして先生と私たちが、一緒に色々な経験をして、難しいことは乗り越え、民族の魂を表現していく。いつまでも、そんな舞踊部であれば素晴らしいと思う」

 

審査の講評から

声楽/感情表現が向上

 合唱部門の水準が高かった。また合唱部門に限らず、できの良かった学校は、曲に対する正確な把握に基づき、安定した呼吸と声質、豊富な響き、高いアンサンブル技量で曲の思想感情を表現する、洗練された歌唱を聞かせてくれた。

 また多くの学校で柔らかく澄んだ声を出す力が向上し、生徒たちの感情表現力も高まった。

 今後の課題は、まず正確な呼吸処理を行うこと。中音での呼吸処理が適格でないために、高音と低音に支障をきたす現象が見られる。

 カヤグム併唱では曲をうまく選び、不自然な動作をなくすこと、弄弦(ビブラートの一種)を正確に行うことが課題だ。

 

洋楽/重・合奏で著しい進歩

 全般的に水準が高まった。とくに重奏と合奏の部門でその傾向が顕著だった。

 中でも、下関初中、川崎初中、神戸朝高、広島初中高、尼崎初中、京都中高の水準が高く、福岡初中、九州朝高も小人数ながら日頃の地道な練習の成果を存分に見せてくれた。

 今後は、曲を分析する段階、曲の演奏に慣れる段階を順に踏んで行き、耳に心地良くかつ感情の伝わる演奏を目指すことが必要だ。演奏者が、曲に込められた思想感情を理解し、情熱的な演奏を心掛けることも大切だ。

 吹奏学部の活性化のために各校が積極的に取り組んで欲しい。

 

民族器楽/力強く洗練された演奏

 高級部独奏部門の水準が高かった。

 また中級部合奏部門に多くの学校が参加したのが目を引いた。東京第5初中と神奈川中高の自由曲のアンサンブルの水準が高かった。

 高級部合奏部門では、東京中高が高い水準で課題曲をこなしていた。高級部打楽器合奏に初めて参加した愛知中高も力強く洗練された演奏を聞かせてくれた。 すべての楽器で基本演奏法と弄弦・弄音奏法を正確に身に付けたうえで、演奏に生かすべきだ。弄弦・弄音を無意味に使うことは控えたい。

 最後に、アンサンブル構成で主旋律を生かしながら、副旋律とうまく交じるようにしなければならないことを強調しておきたい。

 

舞踊/基礎徹底、構成研究で成果

 基本動作部門では、基礎を徹底するための努力が実を結び、水準も均質化している。

 過去3年間の祖国の講師による講習の成果といえる。

 作品では、共和国創建50周年を迎える喜びの気持ちが良く表現され、芸術性も高いものが見られた。民族的な作品も構成と動作の研究が深められ、学生の技量も十分に発揮されていた。

 課題としてはまず、朝鮮舞踊の特徴と民族的感情を深く研究・体得し、柔順で柔らかく、繊細でありながら気迫、躍動感もある踊りを心掛けてほしい。

 またアンサンブルの水準を高めようとするあまり、踊りが機械的にならないよう気を付けねばならない。