自主路線を歩む―共和国の経済戦略/(上)主席の施政演説
9月5日の最高人民会議第10期第1回会議で金正日総書記が「国家の最高職責」である共和国国防委員会委員長に推戴され、憲法が修正・補充されるなど新時代がスタートした共和国。同時に新内閣が構成されたことで、どのような経済戦略をとるかが注目されてきた。最近、内閣の決定が下され、労働新聞・「勤労者」の共同社説で自立的民族経済路線の堅持が表明されるなどのいくつかの動きが出ている。それらをもとに共和国の経済戦略について見た。(聖)
自立的民族経済堅持を宣明
共和国政府機関紙、民主朝鮮10月17日付によると、最近内閣では、金日成主席が最高人民会議第9期第1回会議(1990年5月24日)で行った施政演説「わが国の社会主義の優位性をさらに高く発揮させよう」で示した経済課題を貫徹するための決定を採択した。最高人民会議第10期第1回会議の参加者は、主席の施政演説を録音で聴取しており、「共和国政府が引き続き確固と堅持していかなければならない国家政策」(民主朝鮮10月17日付)と位置づけられている。
強盛大国の土台構築
今回の内閣決定で注目されるのはまず、社会主義強盛大国建設の物質的土台を築くことについて指摘した中で、金正日総書記の誕生60周年(2002年2月16日)を民族最大の慶事として迎えるために、朝鮮式経済構造の威力を強化することを強調した点だ。
強盛大国について労働新聞8月22日付は、勤労人民大衆が主体となり、自主、自立、自衛が実現した支配と隷属を許さない大国、政治、経済など全ての分野で世界のトップレベルに達した国、などと解説している。人工衛星打ち上げは「強盛大国への進軍を促す雷鳴」(労働新聞9月8日付)と言われる。
つまり、総書記誕生60周年までにそうした国造りをするのが目標であり、そのために朝鮮式経済構造の威力を強化することが重要になってくるわけだ。
朝鮮式経済構造とは強力な重工業を中心にした自立的経済構造を指す。共和国は「対外依存、輸出主導型の経済構造とは比べようもなく優れている」(労働新聞と「勤労者」の共同論説、9月17日)と自負する。
自衛的国防力を保証するための重工業を発展させることだと指摘する専門家もいる。実際、労働新聞3月26日付は、朝鮮式経済構造は防衛力を鉄壁に整えるのにも貢献するとしながら、「(わが国は)経済建設と国防建設を同時に進めていける独特の経済構造を備えている」と主張する。
年始の労働新聞、朝鮮人民軍紙の共同社説では、党の社会主義経済建設の基本路線を堅持することが強調された。重工業を優先的に発展させながら、同時に軽工業と農業を発展させるのが基本路線だ。
重要さ増す重工業
こうした論調を見ると、共和国で重工業の重要性が増していることがよくわかる。具体的には先行部門の石炭工業、電力工業、金属工業、鉄道運輸問題の解決に優先的に力を入れることが課題となっている。
共和国はここ数年、相次ぐ自然災害や貿易対象国の喪失などで経済的に苦しい状況にある。とくにエネルギー不足で工場の稼働率が落ち、水害で炭鉱が浸水するなどの要因が重なり、先行部門に一時的障害が生じている。工場や機械が稼働しなければ人々に供給する消費財、農業用の肥料や農薬も生産できない。だからこそ、重工業を立て直すことが先決問題となる。
同時に、内閣決定は食料問題の解決、消費財生産における転換も重要課題として提起し、人民生活を徐々に向上させていく決意を明らかにしている。
社会主義を固守
共和国が主席の最高人民会議第9期第1回会議での施政演説を今後も堅持していく意図は何か。それを知るには施政演説の内容を知る必要があろう。
演説の主題は題目にもあるとおり、共和国の社会主義制度をいかに堅持していくか。@共和国の社会主義制度の優位性について A社会主義の優位性を発揮するための課題 B祖国統一問題 C国際関係――の4章からなる。
演説が発表される前年の89年、東欧社会主義が相次いで崩壊、その動きはソ連崩壊(91年12月)にまでつながった。そうした中で、社会主義を堅持する方針を改めて明らかにしたのが主席の施政演説だった。
それを国家の政策としていくということは、共和国が社会主義路線を最後まで堅持していく決意を内外に知らせたもので、経済的には自立的民族経済建設路線を堅持することを示すものだ。