ここが知りたいQ&A/国連規約人権委員会が日本政府に勧告したが
朝鮮学校差別是正を求める/外登法の常時携帯、刑罰制度の不当性強調
Q 国連の委員会が日本政府に対し、朝鮮学校差別是正などを勧告したというが。
A 国連の規約人権委員会が「市民的政治的権利に関する国際規約」(自由権規約、国連人権B規約)の日本での順守状況を審査した結果、5日に発表した最終見解で、朝鮮学校の制度的差別是正や、差別的だとして外国人登録法の撤廃などを勧告した。審査は10月28〜29日、ジュネーブの国連欧州本部で行われた。自由権規約は、1948年の世界人権宣言で定めた一般的な権利原則を具体的に保障するために作られたもので集会、言論など政治・市民的自由権の順守を求めた内容。各締約国の順守状況を監視するため国連に設置された規約人権委員会は5年に1回、締約国政府が提出した報告書をもとに、締約国政府代表と公開の場で議論しながら審査。その結果をまとめた最終見解を発表する。自由権規約を78年に批准した日本の審査は今回で4回目。
Q 最終見解の具体的な内容は。
A 最終見解は、A.はじめに、B.積極的な側面(3項)、C.主要な懸念事項と勧告(30項)からなり、Cのうち3項が在日朝鮮人問題と直接関連。要約すると @朝鮮学校差別を含む在日朝鮮人への差別の事実を懸念する A外国人登録証の常時携帯を義務づけ、これに違反した際は刑罰対象となる差別的な外国人登録法を廃止すべきだと再度勧告するB日本で生まれた朝鮮人などの永住者に関して前もって再入国の許可を取得する必要性を取り除くよう主張する――となる。委員会は、日本政府がこれらに基づいた政策を立て、人権侵害の被害者を救済するよう勧告した。
Q どんな意味があるのか。
A 最終見解は、世界各国から選ばれた専門家18人による委員会全体の意見として正式に採択される。これ自体に法的拘束力はないが、国内で関連する訴訟や政策決定などの際、条文解釈の具体的で説得力ある基準となる。また規約人権委が日本政府に朝鮮学校差別是正を勧告したのは初めてだが、この問題については、子どもの権利条約の順守状況を審査する国連・子どもの権利委員会も6月に勧告している。日本政府の朝鮮学校差別の論理が世界に通じないことが再確認されたと言えよう。一方、日本政府は93年の第3回審査でも在日朝鮮人差別、とくに外登法を改善するよう勧告されていた。今回、この問題に加えて朝鮮学校差別まで指摘されることで、この間、在日朝鮮人の人権状況改善に何の努力もしてこなかった怠慢ぶりが改めて明らかになった。
Q 総聯はどんな活動をしたのか。
A 審査ではNGOの意見も重視されるため、各国のNGOはカウンターレポートを事前に提出したり、ロビーイングを行う。在日本朝鮮人人権協会も九月末、朝鮮人差別を隠ぺいした日本政府報告書の不備を暴くカウンターレポートを提出し、10月21〜29日には代表を現地に送り積極的に活動した。結果、審査では在日朝鮮人差別に関する質問が相次いだが、日本政府代表は報告書同様のあいまいな答弁を繰り返した。委員会は、こうした議論を踏まえて差別解消を勧告したわけで、在日朝鮮人差別と関連する日本政府の主張は完全に否定されたことになる。