「査察」要求は自主権侵害/共和国の地下施設問題
「核関連」証拠なく、合意違反でもない
米国のチャールズ・カートマン朝鮮半島平和会談担当大使一行が16〜18日の3日間にわたって訪朝し、「外務省の金桂寛副相と朝米間で提起される懸案問題について討議」(18日発朝鮮中央通信)した。協議では共和国の地下施設問題などが話し合われた。共和国は地下施設について、米国の言う「核施設」ではなく徹頭徹尾、「民需用地下構造物」であると主張し、査察を求める米国の主張は「自主権侵害」と非難してきた。また米国がどうしても地下施設を見たければ見せるが、「核施設」でないことが確認されれば、補償すべきだとも主張している。(基)
米情報当局から議会に
米政府が共和国の「地下核施設」説を主張し始めたのは、米紙ニューヨーク・タイムズ8月17日付が米情報当局から説明を受けた複数の米政府関係者の話として、「北朝鮮が新たな核兵器開発計画の中心と見られる巨大な地下施設を、寧辺の東北約40キロの地点に建設している可能性がある」と報じたことがきっかけだ。同紙によると、「情報当局は、そのほかの情報とも総合し、北朝鮮が地下に原子炉と再処理施設を建設するつもりだと米議会や韓国政府関係者に伝えた」という。「建設している可能性」などの憶測が、米情報当局によって米議会内などの強硬保守勢力らに伝えられ、まるで「地下核施設」が既成事実であるかのように拡散されているのである。
「法的権限もない」
共和国の「地下核施設」説は事実無根のまったくの言い掛かりにすぎない。
共和国は朝鮮戦争の教訓から、「国の津々浦々に民需用の地下構造物を数多く建設」(10月19日発朝鮮中央通信)しており、そのことは隠してはいない。
93年から94年まで朝米交渉に参加し、これまで10数回にわたって訪朝している前米国務省朝鮮分析官のキノネス・アジア財団代表も、共和国に地下施設があるのは「極めて正常な状況」で、「工場も山の麓の地下に建設しているため、工場からの煙は煙突からではなく山の麓から出ている。また米国が連絡事務所として使用する予定の建物の下にも、地下待避所がある」(南朝鮮の雑誌「マル」11月号)と語っている。
さらに米国が疑惑を提起している地下施設については、「寧辺に大規模地下施設工事が推進されているという証拠があるだけで、それが新たな核施設といういかなる証拠もない」とし、「地下核施設説は(米国の)悲観論者が南朝鮮と米国の人々に恐怖感を醸成し協議を複雑にするための努力の一環」(同)と述べ、「地下核施設」説を否定した。
朝日新聞10月17日付も、「『地下施設』はまだ建設段階で、米国にも核関連という確証はないという。米国に『査察』を求める法的権限もなく、交渉が難航するのは必至だ」と指摘している。
武装解除を狙う
共和国はそれでも米国がどうしても見たいというのならば見せるとしながらも、「『核施設』でないことが確認されれば、われわれを中傷・冒とくし、権威を傷つけたことに対し、補償すべきだ」(外務省スポークスマンの9日付談話)としている。
今日は1ヵ所の地下施設を「査察」し、明日はそれを前例にして10、20ヵ所の施設を「査察」しようとするのが米国の本心だ。
つまり米国の「査察」要求は、共和国の武装解除を狙ったものにほかならない。
こうした方法で「共和国をまる裸にしようとするのは、自主権に対する公然たる侵害、乱暴な内政干渉行為」(労働新聞13日付)である。
にもかかわらず米国務省高官は10日、「北朝鮮がわれわれの憂慮を解消できない場合、米国はジュネーブ合意の義務を履行しない権利を持っている」(東京新聞17日付)と、朝米基本合意文の破棄を示唆した。だが別の米政府高官は地下施設自体、「原子炉や再処理施設の建設が始まった証拠はなく、(ジュネーブ)合意の違反にはならない」(読売新聞8月18日付)と語っている。
朝米基本合意文について共和国は、「今までわれわれは合意文を誠実に履行してきたが、米国側の不誠実な姿勢と態度によって履行問題で大きな不均衡が生じ、合意文によってわれわれが大きな恩恵を受けたものもない」とし、「米国側が合意文を破棄する意向ならば、破棄しても構わない」(外務省スポークスマンの9日付談話)との立場を取っている。
合意文の命運は全面的に、米国の態度如何にかかっている。