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インタビュー/オーストラリア在住の地質学者、崔東龍博士に聞く


西海だけでも数十億バーレル/21世紀には生産可能

 金正日総書記は10月30日に南朝鮮・現代グループの鄭周永名誉会長と会見した際、米国などの外国企業が石油埋蔵量を調査した膨大な資料を示しながら、平壌は油の上に乗っていると述べた。そして原油が開発されればパイプラインで南にも供給できるようにしてほしいとの鄭名誉会長の要請にも応じた。今、共和国の原油開発に対する関心はいっそう高まっている。

 1990年初から何回も訪朝し、原油探査に関わってきた地質学者の崔東龍博士(オーストラリア在住)から11月末、日本を訪問した機会に共和国の原油開発の現況について聞いた。(文責編集部)

 

―原油探査に関わるようになったきっかけは。

 80年代末、ノルウェーの地質探査会社であるGECOが共和国で探査した地質資料の分析を要請された。朝鮮西海の地質に関する資料だが、それを基に分析すると、西海のある地域に原油が埋蔵されていることが輪郭上分かった。それを直接みようと90年代初に平壌を訪れた。

 10月9日原油探査研究所を訪ね科学者たちと会って調べる過程で、原油が西海に確実にあるという確信を得た。東海の深海盆地には大量の天然ガスも埋蔵されており、ここも有望だ。

 科学者たちは旧ソ連の古い設備と資料を使っていた。私は資金はないが、地質学の知識で共和国を助けようと思った。それ以後、原油に関する専門書だけでも430冊は送った。

 

―原油の埋蔵状況については。

 私は東京にあるペトレックス社の技術顧問の資格で共和国の堆積盆地を研究し、この地域の炭化水素と関連する資料やデータを分析して原油工業部と今後の展望を立てる作業に関わってきた。

 朝鮮半島北部の陸地と海は、以前から多くの堆積盆地があると伝えられていた。西朝鮮湾盆地、安州盆地、平壌盆地、温泉盆地、鏡城湾盆地、吉州盆地などだ。同地域の堆積盆地は炭化水素を生成させた可能性がとても高い場所であることが立証されている。そのうち西朝鮮湾盆地と安州盆地が非常に有望で、積極的にボーリング作業を推進している。その結果、両地域では少量だが、原油が出た。

 原油探査の対象となっている西朝鮮湾での堆積盆地の面積は1万8000平方キロメートルに達し、ここには原油を生成させる根源岩という岩石がある。とくに中生代層にある良質で厚い黒色泥岩層(5キロ)には有機物質が多く含まれており、相当量の原油が生成されていると見られる。

 

―埋蔵量はどれほどか。

 50億バーレル以上という学者もいるが、確定はできない。私は西海だけでも数十億バーレルはあると見ている。

 一般的に有望な原油鉱床になるには @原油が生成されるのに十分な根源岩 A原油が集積される集油構造 B原油が貯蔵される貯留層 C高い所への移動を防ぐ帽岩――がなければならない。西朝鮮湾盆地はこうした条件をすべて満たしている。

 

―近く共和国で原油が生産されるという話があるが。

 5月に訪朝した際、関係者たちは共和国創建50周年まで採掘すると言い、安州盆地でのボーリング作業に大きな力を注いでいると言っていた。しかし個人的な考えとしてはもう少し時間がかかると思う。

 

―どれくらいかかりそうか。

 明確に指摘するのは難しい。南浦沖(西海岸)に対する地質学的分析やボーリング作業を行った結果、油の徴候があることは確実だ。しかし技術と設備が不足している。原油開発には莫大なお金がかかる。

 当面、至急求められるのは、物理探査船による細部探査だ。これまで西海で3000メートル間隔の調査を行ったが、ボーリングの場所を選定するには500メートル間隔の細部探査をし、正確性を高めなければならない。

 それは、西海や安州盆地は地質的に見ると内圧が弱いので、正確な地点を掘ってこそ原油をより多く採掘することができるからだ。そして商業油田として開発できるかどうかを見極めなければならない。

 しかし現在、該当機関ではこれをしないで、ボーリング作業を優先させることにのみ気を配っている。

 細部探査に1年、その後の分析とボーリング場所の確定、本格的なボーリング作業に1〜2年はかかるだろう。当面、細部探査には数百万ドルかかる。しかし私の知る限りでは、資金調達がうまく進んでいないようだ。

 

―現代グループと協力すれば、原油開発が本格化するのでは。

 そうだ。同族同士で力を合わせて開発することがどれだけ素晴らしいことか。祖国が分断されて半世紀が過ぎたが、このような民族の悲劇に1日も早く終止符を打たなければならない。統一のためにも南北の合作と交流が必要だ。現代グループと原油開発をすれば南との合作の道も開かれるだろう。

 共和国の科学者たちの技術水準はここ数年で飛躍した。昨年、独自に物理探査船を造った。資金さえあれば、原油生産は21世紀初には必ず実現すると確信している。

 原油を1日も早く生産して経済が発展されれば、人民生活も解決されるだろう。

 

崔東龍博士

 1945年東京生れ。北海道大で地質学を専攻、72年に地質学博士号を取得。77年から米国マイアミ大副教授、84年からはオーストラリアの公的機関で地質学を研究。88年に地質資源インターナショナルコンサルタント会社を設立。