時事・解説/朝鮮半島情勢を振り返る(上)
今年、朝鮮半島ではいつにも増して劇的な動きが相次いだ。何よりも建国50周年(9月9日)を迎える共和国で、最高人民会議第10期第1回会議(同5日)が開かれ、金正日総書記が「国家の最高職責」である国防委員会委員長に推戴され、社会主義憲法が改正されたことがあげられる。共和国の政治と経済、朝米、朝・日、南北関係、南朝鮮の動きなど、今年の朝鮮半島情勢を振り返る。
共和国の政治
建国50周年機に新時代/21世紀の強盛大国へ
共和国では今年、「共和国創建50周年を社会主義勝利者の大祝典として輝かせよう」(元旦の労働新聞、朝鮮人民軍紙の共同社説)というスローガンを掲げて、9月9日の建国記念日を輝かせるために社会主義建設を推し進めてきた。
最大の出来事は、9月5日の最高人民会議第10期第1回会議で、金正日総書記が「国家の最高職責」である国防委員会委員長に推戴され、名実共に金正日時代がスタートしたことだ。
会議では社会主義憲法が修正・補充され、人民政権の機能と役割を強化するために国家機構が発展的に整備改善された。
憲法には序文が新たに設けられ、「金日成同志を共和国の永遠の主席」に戴くことが明記された。
また主席制がなくなり、従来の主席の権能であった法公布権、特使権、条約公布権、外交代表任命・発表権などの権限は最高人民会議常任委に譲渡された。
さらに国防委員会の地位と権能が拡大強化された。ほかにも中央人民委員会と最高人民会議常設会議を統合し、最高人民会議常任委員会が新たに設けられ、政務院を内閣に改め、内閣の地位と権能を高めて国の行政・経済事業を強化するようにした。内閣人事では新任が再任の2倍になるなど、大幅に刷新された。
一方、共和国は8月31日、多段式ロケットで初の人工衛星「光明星1号」打ち上げに成功した。これは建国以来の50年間、蓄積された共和国の政治、軍事、経済の威力を世界に誇示するとともに、「ここ数年繰り広げてきた『苦難の行軍』の勝利を知らせ、強盛大国への進軍を促進」(労働新聞9月8日付)させるものであった。強盛大国とは、政治、軍事、経済、文化などすべての分野を世界的水準に高め、人々の自主的で創造的な生活を保証することである。
また共和国は、米国を中心とする帝国主義者による孤立・圧殺策動を粉砕すると同時に、社会主義体制を固守発展させてきた。最高人民会議で金日成主席が第9期第1回会議(90年5月)で行った施設演説「わが国の社会主義の優位性をさらに高く発揮させよう」を録音で聴取したのも、社会主義体制を引き続き堅持し発展させていく決意を改めて示したものだ。こうして見ると今年は21世紀の共和国を一層輝かせる礎を築いた年だったと言えよう。(基)
共和国の経済
自力更生で生活向上を/エネルギー解決に尽力
昨年までのたたかいを通じて政治、軍事面において社会主義体制を堅持できる基盤を整えた共和国では、今年を「苦難の行軍」の最終勝利のための強行軍の年と位置付け、経済問題の解決を中心課題に据えた。強行軍を行う目的は、経済問題を決定的に解決し人民生活を向上させることにある。元旦の共同社説はその方法として、重工業の優先的発展を保障しながら軽工業と農業を同時に発展させる党の経済建設の基本路線を堅持することを強調しながら、@農業=食糧問題 A石炭、電力=エネルギー問題 B鉄道輸送=流通の正常化C金属工業=機械、工場の整備、部品調達問題――の解決を呼びかけた。
中でも大きな力を注いだのが電力問題だ。エネルギー問題を解決してこそ、機械や工場を正常に稼働させ生産を一定水準に持っていけるからだ。だが共和国で今のところ大規模な発電所建設は不可能だ。そこで考えられたのが中小型発電所。地方が独自で多くの電力を生産するには、各地の状況に応じた中小型発電所を大量に建設するのが手っ取り早い。その点でモデルになったのが慈江道だ。金正日総書記が年初から4回にわたって同道を訪れたのも、慈江道の人々が発揮した自力更生の精神を全国に広めるためだった。今年に入って全国各地に完成した中小型発電所は3270ヵ所(8月現在)。
食糧問題解決も引き続き重要視された。95年以降の2年続きの水害に加え昨年は干ばつと高温現象、今年は一部地域での高潮と浸水に見舞われ、2重3重の負担を強いられた。
4月20日に発表された朝鮮労働党中央委スローガンは、農業問題と関連してチュチェ農法の推進、貯水池の新設、複合微生物肥料の増産などを呼びかけた。
チュチェ農法とは、農民が主人になって自然気候条件と土壌条件に合わせて農業を科学技術的に営む方法。西海岸平野地帯の各農村では、暖かい春の日がいち早く訪れた気象状況に伴い、例年に比べて早く田植えを行った。咸鏡南道咸興市リョンフン協同農場では近くに貯水池を新設して干ばつ対策を講じた。各地の主要農場では複合微生物肥料の増産に力を注いだ。
こうした自助努力の結果徐々にではあるが生産量は増加傾向にある。96年の穀物収穫高は約250万トン、97年は約268万トン(共和国水害対策委)。今年は約283万トンだった(ピョンヤンタイムズ11月7日付)。建国50周年に際しては軍人建設者たちによって海州―甕津、新康○(○は令に羽)―釜浦間での鉄道広軌化工事が完了、平壌郊外には2000世帯の住宅街が建設された。 (安)