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西東京第1初中・保護者の会、都内27市にアンケート調査/民族教育への理解不足


 「西東京朝鮮第1初中級学校を後援する保護者の会」(代表=安徳栄・同校教育会副会長)は、総聯西東京本部管下の都内27市の市長あてに、民族教育に対する認識、朝鮮学校および生徒、保護者への補助の有無などを問うアンケートを実施。このほど全市の回答が揃った(市長の回答は16市)。3月に発足した「保護者の会」では、同校生徒、保護者に一切の補助をしていない八王子市、小平市を中心に、各市が補助を実施、増額するよう求める運動を続けている。

 

各市間で大きな格差

 今回の調査で改めて浮き彫りになったのが、都内23区に比べた27市の補助の水準の低さだ。

 朝鮮学校は「各種学校」のため、国の私学助成を受けられない。そこで多くの自治体は、高額な学費支出を強いられている保護者を救済する目的の保護者補助制度をはじめ、各種名目の補助を実施している。

 保護者補助は都内23区全区が制度化し、その最高額も学生1人当たり年額18万円(江戸川区)となっている。しかし、西東京では17市しか実施しておらず、金額もおおよそ年額1万200円〜2万4000円程度の水準。23区との格差はもちろん、27市内間の格差も大きい。

 

「区別ない同等の教育」

 民族教育に対する意識の低さも明らかになった。

 市政における外国人児童・生徒の教育の位置付けを問う質問に、ほとんどの市が「外国人も市立小・中学校に受け入れており、日本人と区別することなく同等の教育を行っている」などと答えた。しかし、日本の公立学校では日本人と「区別のない」「同等の教育」しか受けられないからこそ、民族教育を行う朝鮮学校が必要なのだ。同胞たちは現在、著しい不利益を甘受して朝鮮学校を選ぶか、条件のよい日本の学校で同化を強いられるかの二者択一を迫られていると言えるが、こうした現状がまったく理解されていない。

 子どもの権利条約の、マイノリティに属する子どもが自己の文化を享有する権利を否定されないという条文について、おおかたの市は「当然のこと」などと回答。民族教育についても「尊重されるべき」などと答えた。しかしこうした回答は、先にあげた補助の実情や外国人児童・生徒政策には反映されておらず、矛盾している。

 

偏った「国際化」感覚

 回答を見ると、各市が国際化を進めるために行っている事業は @留学生支援 A出版物や掲示、標識などに外国語表示を導入 B料理や祭り、会話教室などの文化交流 Cホームステイ派遣や受け入れ D小中学校での国際理解教育――などに大別できるが、在日外国人の約半数が在日朝鮮人だという現実からかけ離れてたものばかり。こうした感覚が、民族教育への無理解を生んでいると言える。

 民族教育への意識の低さと偏った「国際化」の感覚は、日本の行政全般に共通するものだ。国連などあらゆる場で、行政側のこうした認識は露になっている。

 日本政府をはじめ各自治体は、在日同胞の存在、その歴史的経緯まできちんと見据え、地に足のついた真の国際化へ努力すべきであり、その最優先課題として政府は朝鮮学校への制度的差別の是正、地方自治体は独自の救済措置を取ることが望まれる。

 「保護者の会」ではこの調査結果をもとに、各市と意見を交わしながら理解を求めていくとしている。