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2年目迎えた同胞法律・生活センター


 在日同胞が抱える多種多様な悩みに対応する同胞法律・生活センターが昨年、東京・上野に開設されてから、今月1日で1年が過ぎた。この間に寄せられた相談は970件。外国人登録上の国籍記載が朝鮮、「韓国」の同胞はもちろん、日本国籍を持つ同胞や南朝鮮からの短期滞在者までが、切実かつ様々な問題を持ち込んだ。センターの活動を振り返り、同胞社会の現状の一端を見る。(賢)

 

「切実」なニーズに対応/相続、国籍など相談970件

 「兄弟のうち1人が共和国に帰国しているのだが、6年前に亡くなった父の遺産相続がうまくいかない。なんとかならないか」

 今年の初夏、ある男性からセンターにこんな長距離電話がかかってきた。

 聞けば相続人は母と兄弟4人で、帰国した兄弟の居住証明や印鑑証明書などを取り寄せねばならない。ところが日本人の専門家では共和国に印鑑登録制度があるかどうかも分からず、その1人は除く以外にないのでは、と言われたという。

 しかし「相続は兄弟仲良く平等にというのが父の遺志であり、皆も同じ気持ち」(男性)だ。5年以上も悩み続け、口コミで聞いた同センターにすがる思いで電話してきたのだ。

 センター職員が、共和国からも必要書類を取り寄せることができる旨を伝えると、男性は翌日の午後一番に早速、関連書類を携えて遠路はるばるやって来た。

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 こうしたケースでは総聯を通して必要書類を取り寄せる。朝・日間に国交がないため通常は数ヵ月かかるが、この男性の場合は1ヵ月半で届いた。数年来の悩みを解消できた男性は「こちらが恐縮するほど謝意を表して帰った」と、センターの殷宗基所長は話す。

 同センターは、世代交代と定住化などにより複雑・多様さを増してきた同胞の生活・法律問題に対応するため、弁護士、司法書士、税理士ら同胞有資格者を相談員とする初の常設無料相談所として開設された。

 利用者は外登上の国籍欄記載が朝鮮もしくは「韓国」の在日同胞が8割以上で、南朝鮮からの短期滞在者と日本国籍の同胞もいる。また日本人が、同胞がらみの相談を持ち掛けることもあるという。

 最も多かった相談は上記のような相続で、次に国籍、結婚・離婚(国籍変更や在留資格の問題を伴うもの)の順に多い。これら民族固有の問題が7割以上を占めるが、その多くが日本人の専門家に相談したが要領を得なかった、というものだった。センターはまさに「同胞の駆け込み寺」(殷所長)と言える。

 同胞固有の問題を日本人の専門家や役所に相談した場合、要領を得ないだけでなく、誤った情報を与えられて問題がより複雑になることが少なくない。加えて、関連する法律が在日同胞にとって不利な内容に改められるなど、予断を許さない現実もある。

 センターでは今後、こうした問題に対応するためにも、一般の同胞を対象にして資格取得や生活・法律問題への対処の仕方に関する連続講座などを開くことも検討中だ。

 殷所長は「何かあれば1人で悩まず、気軽に相談して欲しい」と話している。