時事・解説/朝鮮半島情勢を振り返る(下)
南朝鮮の政治
新「政権」発足も揺らぐ基盤/内閣制問題も議論進まず
南朝鮮では今年、金大中新「政権」が発足したが、かねてから野合との批判が強かった「DJP(金大中・金鍾泌)連合」の基盤は、2月25日の「大統領」就任直後からぐらついた。
「大統領」候補一本化の際の両者の公約は、新「政権」の「総理」に金鍾泌を指名し、金鍾泌が強く主張する内閣責任制への改憲を1999年末までに行うことなどだった。
ところが「総理」指名では、与党への権限集中を恐れる多数野党のハンナラ党が辞退。与党は金鍾泌をとりあえず「総理代理」に置く暫定的な形で内政を進めざるを得なくなった。結局、指名は8月中旬までずれ込んだ。
もう一つの公約である内閣責任制実現についても、金大中と金鍾泌との間で意思の疎通がうまく図られていないのが実情だ。
内閣責任制はドイツ型で、すべての権限が集中する現在の「大統領」を象徴制にし、現行では「大統領」の指示の下での行政運営担当者にすぎない「総理」を内政運営の全権を握る最高責任者に格上げさせるというもの。金鍾泌「総理」が実質的なトップとなる制度だけに、本人もこのところ、改憲問題が棚上げにならないよう頻繁に主張している。
一方の金大中は「経済問題解決が先」と発言するにとどまっている。もともと「大統領」制か内閣制かという根本の部分で主張の違う寄合所帯であり、改憲論議は今後も白熱しそうだ。
6月4日の統一地方選挙では、極端な地域偏重や候補間の誹謗中傷合戦がマイナスに作用し、投票率は過去最低の52.6%を記録。野党からの議員引き抜きで与党はかろうじて過半数に達した。来年中頃に予定される総選挙が、今後の政局を占う重要なポイントとなろう。(柳)
南朝鮮の経済
IMF体制下で状況悪化/構造調整進み失業者急増
政治以上に多難なのが、昨年末からの国際通貨基金(IMF)体制下での経済だ。状況はこの1年で一層悪化したと言える。
IMFが融資条件の一つとして企業のスリム化を求めたことから、金泳三「政権」時に一度凍結された整理解雇制導入が再浮上。1月15日に発足した専門協議機関の労使政委員会で協議を重ねた末、2月末から整理解雇制が導入された。
現代自動車は6月末に約4800人の整理解雇を発表。労組は主力の蔚山工場でゼネストに突入し、解雇撤回までたたかう姿勢を示した。結局、解雇規模を277人に減らすことで8月末に妥結した。
起亜自動車には4月に日本の会社更生法に当たる法定管理が適用され、現代自動車が落札。また、6月末に都市・地方銀行5行の整理、今月7日には5大財閥構造調整法案の一環として三星と大宇の事業交換がそれぞれ発表され、解雇につながるとして労組が抗議の声を上げた。
急ピッチな改革の結果、失業率は7月末に最高7.6%、失業者数も165万人に達した。実質的な失業者数は300万人に達すると言われる。自宅を失った「野宿者」、離婚率や若者の凶悪犯罪率が急増するなど、社会不安も深刻化した。
原因は、経済一体化の名の下、各国特有の事情を考慮せず一律に米国式市場経済の導入を求めるIMFの改革路線と、IMFの無理難題をうのみにし、労働者に犠牲を強いる改革を続けた当局の姿勢にある。市民の間ではIMFの処方箋への不信感が高まっており、南朝鮮を「外資依存の経済植民地」と非難、IMF体制撤回を訴える声が上がっている。(成)
南朝鮮の闘争
高まる保安法撤廃の声/低水準の良心囚釈放に非難
新「政権」発足で市民から期待の掛かった良心囚釈放問題では、3月13日と8月14日の2度の特赦措置がいずれも全員釈放には程遠かった。今月14日には、30余の市民団体と15の市・道の社会団体が「民主改革国民連合」を結成、全員の即時無条件釈放を訴えた。
3月の特赦対象者は全良心囚478人中74人とわずか15%にとどまり、「前『政権』にも劣る低水準」(民主化実践家族運動協議会)と激しい非難を受けた。
8月の「光復節特赦」では、思想転向制度に代わって遵法誓約制度を導入。全良心囚455人中、釈放されたのは誓約書を提出した94人(約20%)のみで、他の良心囚は誓約を拒否したとして対象から外された。
一方、「韓国大学総学生会連合」(「韓総連」)や祖国統一汎民族連合(汎民連)南側本部など統一運動団体への弾圧も激化した。
「韓総連」は5月末に第6期が発足したが、当局が参加者の全員逮捕を公言したため、場所や日時の大幅な変更を余儀なくされた。
汎民連南側本部と「韓総連」を「親北利敵団体」と見なす当局は、8月14、15の両日に板門店で開かれた統一大祭典への参加を妨害したうえ、ソウル大での統一行事に参加した学生ら700人以上を連行。さらに、訪北した黄嬋代表や文奎鉉神父を拘束、今月19日には黄代表を「国家保安法」違反で起訴するに至った。
こうした中、世論調査で市民の78%が撤廃・改正を求めるとの結果が出るなど、保安法撤廃を求める声が高まっている。 (根)